笑顔の裏に刃を隠し
「熱っつぅいっ!!………………………………ふふっ、こうしていると童心に返ったようですわね。ワタクシの考え通り随分身体を温たためることも出来ましたし、一回スープを下げますわね。あと急な来客があったとのことですので、数分だけ中座させて頂きますわ」
シャルロッテが満面の笑みを浮かべながらフローネを伴い部屋を出る。
「………………」
「シャルロッテ様、何か仰ってください…………お気持ちは分かりますから…………………無言でジッと見つめてくるの止めて貰えますか?」
ガラス玉のような生気のない瞳から注がれる重苦しい視線に耐えかねるように、フローネは一歩後ろに下がる。
「フローネ、ワタクシ説明しましたわね、あれはスープだと。それだけだと趣旨が分かりにくいかと思い、本来のコース料理の順番も含め説明しましたわね」
「私が聞く限りは…………申し訳ありません、圧が凄いので無言で見てくるの本当に止めてください」
「もしかして何処かの国の正しいテーブルマナーなのでしょうか………言われてみれば帝国の方々は皆様あのような奇行をされていたような気がしてきましたわ!!」
「サラッと帝国を奇人側に認定するのは良くないかと。思うのですが、あれは意趣返しでは?」
「意趣返し?ワタクシが何かミナト様達にご迷惑をおかけしたことが!?」
「いや、その反応はおかしいですね。かけましたからね、さっき。少なくとも大鍋一つ分は、それはもう豪快にかけてましたから、迷惑。不可抗力とはいえ家も焼いていますし、シャルロッテ様に思うところがあっても不思議ではありません」
「つまり、ワタクシは遊ばれていると?」
「端的に言えば」
「アルシェ様の迷いのない澄んだ瞳、あれが演技だとは到底………真偽のほどは不明ですが、これがワタクシの罪に対する罰であるならば、甘んじて受け止めるしかありませんわ」
「ご立派な姿勢かと。ではシャルロッテ様、そろそろ戦場へと戻りましょう」
再び扉が開け放たれ、シャルロッテは重い足取りで部屋へと戻っていった。
シャルロッテが来客のため席を外し、ミナト達は会食という戦場においてしばしの休息を取っていた。まだ料理が一品提供されただけではあるが、一同の顔には既に疲労が見え隠れし、指先は茹でたばかりのロブスターのような赤みを帯びている。
「シャルロッテ様が席を外されたということは………初戦は我々の勝利とみて間違いなさそうですね」
アルシェは口角を微かに上げ、やや浮ついた声色で勝利を宣言する。
「そうなの!?シャルロッテが料理について説明してくれてたよね、ボクの聞き間違いでなければさっきのもスープだって言ってたような」
「罠ですね」
「んっ、見え見え」
「ふんっ、私達があんな見え透いたミスリードに引っかかると思ってるのかしら」
ミナトの発言を掻き消すように次々と否定の言葉が重ねられていく。
「罠要素あった!?」
「ミナト様、シャルロッテ様を信じたい気持ちは理解できます。しかし、昨日の友は今日の敵。既に敵対関係となった今、彼女の発する言葉は全て詐略だと仮定すべきです」
「いや、前提がおかしいからね!?同盟国のお姫様と友好を深めるための楽しい会食だから!!なんでそんな殺伐としてるの、世紀末だよ価値観が!!」
「ミナトは篭絡済み………敵も中々やる」
「私達で倒すしかないようね。敵は一国の王女、相手にとって不足はないわ」
「うぅっ、本当に頼りにしていいのかな。とにかく、シャルロッテはボクにとってもシンギフ王国にとっても皆にとっても大切な友人だからね!!敵意を見せるようなは絶対禁止だから、これは国王令だよ!!!」
「かしこまりました、笑顔の裏に刃を隠しそれぞれの国益のためにマナーと言う剣戟を交わし合う、これはそういう戦いだという意味ですね。お任せください、完全なる勝利をミナト様に捧げましょう」
「………ボクも頑張るよ」
ミナトの振り絞るような声に反応するように扉が開かれる。
部屋に戻ってきたシャルロッテは、ミナトと同じ表情をしていた。
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