二者択一
「オーホッホッホッ!!『身体で払うか、食料で払うか選べ』と言われた時はどうなる事かと思いましたが、こんな事もあろうかと大量の穀物を買い付けておいたワタクシの先見の明が光りますわ!!」
「最初から謝罪するような事をしないという先見の明があれば済んだことでは?」
天高く高笑いを響かせるシャルロッテの隣で、フローネが呆れ顔で呟く。
騒動が落ち着き、ミナト達は中庭から場所を移し、城門近くの広場に移動していた。
そこには先日の数十倍はあろうかという大量の物資が広場を埋め尽くさんばかりに並べられ、さながら大市のような様相を呈している。
「んっ、大漁大漁。ミナトの巧みなゆすりの成果。身体か食料か、世紀末式交渉法」
「いや、言ってないからね、そんな事!!でも、この前に支援物資を貰ったばっかなのに、またこんなに………受け取る側のボクがこんな事を言うのも失礼だと思うけど、所領の運営に悪影響があったりしない?」
「ふふっ、ミナト様、ご心配には及びませんわ。不肖シャルロッテ、自らの過ちによる詫び食料を領民の負担とするような事は致しません。これらは全て幼き頃よりワタクシがこっそり貯めたヘソクリをドドーンと大放出してお送りする進物。遠慮なく受け取ってください」
「そうです、シャルロッテ様がアホを晒すたびに謝意の証として方々にお配りしておりますので、遠慮は無用でございます。アホの代償としてお納めください」
「アホの代償!?辛辣!!今日は一段とフローネの口が悪いですわ!!今度からはちゃんと事前に相談致しますので、許してくださいまし~~~」
アルシェはフローネに縋りつくシャルロッテを丁重に無視し、積み上げられ物資の量を大雑把に数え上げ、目を瞑り脳内で算盤を弾く。
「ミナト様、こちらは有り難く頂戴するとしましょう。これだけあれば今いる臣民の数であれば問題なく冬を越せるでしょう」
アルシェは今という言葉を強調する。
確かに視界を覆わんばかりに用意された糧食は、100や200の腹を満たす程度であれば全く問題ないだろう。
しかし、国境沿いの村々がシンギフ王国の噂を聞きつけ、臣民となることを申し出たらどうなるか。
養うべき民が千になったら、万になったら…………王国はそれに耐えられるのか。
アルシェの今という言葉には、そういった言外の意が込められていた。
「ふふっ、ミナト様、色々とお悩みのようですね。ワタクシも皆様方とお話ししたいですし、ともに食卓を囲みながら未来を語り合いませんか?」
「えっ、それって、シャルロッテと一緒に食べるってこと!?」
「はい、その通りでございます。皆様のご都合が宜しければですが、いかがでしょう」
(どうしよう、宮廷料理どころか普通のレストランレベルのマナーも全然知らないし、とんでもないことをして皆に恥をかかせちゃうんじゃ………でも、シャルロッテは一国の王女。これだけの広大な領地を経営してきた実績もある。教えを乞うまたとないチャンスを、ボクの都合でふいにするわけには………)
ミナトがチラリと仲間に視線を送ると、アルシェはミナトの窮状を察したのかコクリと小さく頷き、一歩前に歩み出て口を開く。
「大変ありがたい申し出、感謝いたします。私達としましてもシャルロッテ様にお伺いしたい儀があるので会食は願ったり叶ったりなのですが、その内容をまとめるため少々話し合う時間を頂戴してもよいでしょうか」
「かしこまりました。ワタクシ達もおもてなしの用意がございますので、一度中座させていただきますわ。用意が整いましたら人を遣わしますので、それまで東屋でお休みください」
シャルロッテは先ほどまで悪ふざけをしていた人間と同一人物とは思えない優雅さでミナトに向け屈膝礼を行うと、フローネ含めお付きの者を従えしずしずと城内に戻っていく。
ミナトは胸につかえていた緊張を吐き出すように大きくひとつ息をすると、数十分後に始まるだろう困難な戦いを想像し再び息を詰まらせた。
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