王都ディ◯ニーランド
「あのさあのさあのさ、この国のこと全然知らないんだけど、ここはシンギフ王国って言うのか?」
「うん、そうだよ。ここは王都なんだ。まだ作り始めたばかりだけどね」
ミナトは気恥ずかしさを誤魔化すように指先で髪を触る。
「それでそれでそれで、王都の名前は?」
クーのごく当たり前な問いかけに、エルムを除く一同はハッとした面持ちで互いに顔を見合わせる。
「盲点」
「言われてみりゃ、王都としか呼んでねえな。なんて名前なんだ?」
「ミナト様、お教えください」
「えっ、あー………実を言うとまだ決めてないんだ。国名もジェベル国王に聞かれて咄嗟に考えついたものだし、その後もずっと仕事に追われてて忘れてたっていうか………」
「呆れた。王都の名称すら定められてない国なんて、まともに外交で相手されないでしょ。至急命名するべきよ」
「んっ、大喜利大会の予感」
リオは既視感のある流れに何か思いついたのか、ポシェットをまさぐり某大国の国旗をモチーフにした柄のシルクハットと謎のボタンを取り出す。
「トンチキアイテム準備してるとこ悪いけど、いつものアレはやらないわよ、ワタシが大変だから。だいたい王都の命名なんてのは遊び半分で選ぶものじゃなくて、この国をどう導いていくか示すためのものでしょ?他でもないミナトが決めるべきよ」
「そうだなぁ。まぁ、一般的にゃ地名から取るのが穏当だが、そうすっとここら辺は全部カラムーンになっちまうからな。ただでさえ建国の経緯を考えっと、どうしてもジェベルの属国に見られちまうんだ。国名と同じく、ミナトの個性バリバリのインパクト抜群のやつ頼むぜ」
「期待しています、ミナト様」
「わくわく〜」
「下手な名前つけたら容赦しないからね」
一言積み重なることに、どんどん上がっていくハードルにミナトは思わず頭を抱える。
(どうしよう、何も思いつかない………。だいたいそんな大事なことなら、1週間くらいかけて慎重に検討するべきだよね!?って言いたいけど、皆ノリノリだし、なにより最近かっこ悪いところばっか見られてるから、王としての決断力的なものアピールしたいし………でも、カッコよくてスタイリッシュでファンキーでアバンギャルドな名前なんて、そう簡単に思いつくものじゃ………)
ミナトの脳内CPUは過度の負荷により焼き切れ、周囲の視線が一点に集中していることも相まって、虫眼鏡で黒い紙が焼け焦げるように脳からぷすぷすと黒煙があがる。
「ミナト、難しく考えなくていい。シンギフ王国はダサい、それはもうとてつもなくダサい。でもミナトの想いが詰まった名前。だからカッコい………ダサいけどダメじゃない」
「嘘!?シンギフ王国それなりにカッコよくない!!??」
「それは置いておいて………だからミナトの夢、ミナトの理想、ミナトの願いの詰まった名前ならどんなダサい名前でも全員納得………我慢する。我慢しきれない場合は略称とか愛称で乗り切る」
「いや、そこはちゃんと受け止めてよ!!………だけど、ありがとうリオ。迷いが晴れたよ」
(ボクの夢、ボクの理想、ボクの願い。誰もが楽しく暮らせる、みんなの居場所になれるような夢の国。それならボクがつけるべき名前は一つだ)
「リオ、みんな、決めたよ。ボクの、ボクたちの王都の名前は、夢の都市ディ◯ニーラン………」
「ダメ、それはダメ、絶対ダメ。身体中の細胞がそれだけはダメだって言ってる」
ミナトが口にした言葉をリオが食い気味に、激しく、何度も、念入りに否定する。
その額には脂汗が滲み、これまでに見せた事のないような強い動揺が浮かんでいる。
「どうして?ミナトにしては綺麗で良い名前じゃない。そのうち海沿いに港町を作る時には、対になる都市として『ディ◯ニーシー』って付けられるし」
「ダメ、セットでダメ、ダメオブダメ、世界ごと消される」
ブンブンと激しく首を振るリオの瞳は、バタフライをしているようにバッサバッサと泳ぎまくっており、目に見えない何かに怯えるようにキョロキョロと辺りを警戒する。
「ははっ、リオが心配する気持ちも分かるけどさ、異世界ならそう言う権利的なのも大丈夫だよ」
「ダメ、むしろダメ、舐めちゃダメ、奴らは時空くらい簡単に超えてくる。むしろ異世界とか奴らの庭まである。異世界ごと永久に消滅させられたくなかったら、その名前だけは触れちゃダメ。良い子のお約束」
「う、うん、そこまで言うなら、別の名前にしようかな………」
言い知れぬ巨大な闇の力に怯えるリオに、ミナトは新たな名前を考えるしかなかった。
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作品ごとやられちゃうからね、仕方ないね




