秘密兵器エクスカリバーナー
「うわ〜、すっごくピッタリ包まれてるね〜、ミナトっち息できてなさそ〜」
陸に引き上げられたミナトを見て、ルーナが感心したように言う。
その言葉通りミナトの肉体は薄緑色の透明な粘体にすっぽりと覆われており、およそ呼吸が出来る隙間を探し当てることは不可能であった。
「んっ、表面がキラキラしてて、ちょっと芸術っぽい」
「たしかに〜、つやつやで宝石みたいだね~、綺麗かも〜」
リオとルーナは交互にスライムの表皮を指で突き、その弾力のある独特な触感を楽しんでいる。
「お二人とも、遊ぶのは後にして下さい!!早く捕食されているミナト様を助け出さないと………とりあえず片っ端から刃物で切ってみましょう、殺せば拘束も解けるはずです!!」
「ンーッ!!」
アルシェが料理用の小型の包丁をスライムに突き立てようとした刹那、くぐもった悲鳴のような奇怪な音が鳴り響く。
「いま何か聞こえたような………まさかミナト様の心の声でしょうか?」
「多分そう。刃物はNGっぽい。ここはコレで」
リオはポシェットから異世界に相応しくないフォルムをした一台の機械を取り出す。
「リオ様、それは?」
「エクスカリバーナー。この先っちょから、全てを焼き尽くす地獄の業火が出る便利アイテム。エクスカリバーナーでスライムの身体を満遍なく焼き上げる。こんがりとした焼き色と、サクッとした食感が通にたまらない逸品に仕上がるはず」
「ンンッーー!!」
再び悲鳴が響く。
それは先ほどより大きく、より悲壮感が籠っていた。
「火もダメみたいだね〜、ミナトっち意外とこだわり派〜?じゃあ、これの出番だね〜」
「ルーナ様、これは?」
「湖にお魚が来てたら使おうと思ってた岩塩〜。スライムにコレをたっぷり塗りこんで、身体中の水分抜いてカラッカラにするの〜。乾いて皮だけになったスライムを天日干しして、薄く切ってから茹でてハチミツをかけて食べると美味しいんだよ〜」
「ンンンンンンッーー!!!!!」
「ミナト様、どうなされたのですか!?………えっ?」
アルシェが苦しむミナトに手を出して差し伸べようとした瞬間、肌に張り付いていたスライムがプクリと大きく膨らみ、空気が抜けたボールが天高く舞うようにフワリと宙に浮いた。
バルルンッ
そのスライムは地面に接触すると表現しがたい不思議な音を出し、皿の上に落とされたゼリーのように激しく身を震わせると、徐々にその形を球体から人型へと変えていった。
「ちょっとちょっとちょっと!!さっきから寄ってたかって切るとか焼くとか塗り込むとか、何なの!?」
「スライムが言葉を!?まさか、モンスター!!」
アルシェは横たわるミナトを庇うように前に立ち、両手を広げる。
「んっ、スラホリボルグの出番。派手に内臓をぶち撒ける」
「だからだからだから、なんでそうなるの!!私なにも悪いことしてないよ!?」
数分前までただのスライムでしかなかったそれは、いつの間にか少女の姿へと変貌し、両手を真上にあげ必死に無抵抗をアピールする。
「人型のスライム………始めて見ます。モンスター………なのでしょうか?」
「アルシェっちが分からないなら、誰も知らないと思う~」
ルーナの言葉通り、冒険者ギルドで魔物討伐や捕獲依頼の書類に幾度となく目を通し、日々荒くれ者どもの武勇伝を聞かされてきたアルシェですら知らない目の前の人型のスライムは、少なくとも一般的な存在であるとは言えず、ゆえにアルシェは目の前のモンスターとも少女とも呼ぶことの出来る謎の生命体に対し、どう対応してよいか測りかねていた。
「激レア?」
戸惑うアルシェを横目に、リオはスライムの少女を指差し首をかしげる。
「そだね~、ナーガの私が言うのもなんだけど、喋るスライムとか超珍種だよ~」
「リオ様、いったい何をお考えで………」
「激レア、超珍種、女………やることはただ一つ」
リオは再びエクスカリバーナーは片手に持ち、トリガーに指をかける。
カチリと音が鳴る位置まで指を押し込むと、先端から青い炎が放出され、スライムの少女の表情が恐怖に歪む。
「あのあのあの、それで何をする気なのかな?」
「大丈夫、すぐ終わる」
「うそうそうそ、やめてやめてやめて………キャアアアアアアアアア!!!!!!!」
湖畔にひとつ特大の悲鳴が響き、リオは満足げな笑みを浮かべた。
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基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。
エクスカリバーナーは多分2周目特典とかで貰えるクソ強ウェポンです




