ミナトの願い
すいません、前振り長くなりましたが、こんな感じのストーリーとノリで進んでいきます!!
腹部を貫いたかに見えた深紅の閃光が、一呼吸ほどの間を置いてから、潰れたザクロのように弾け飛ぶ。
少女の肉体には傷一つ見られず、激しく血液が飛散したにも関わらず衣服には僅かな染みすら存在しない。
「投擲無効化?それとも物理攻撃に対する神の加護ってやつかしら………どちらにせよ、嬲りがいがありそうな獲物ね」
「んっ、もう終わり?なら、ミナトと話したいから、さっさと終わりにしたい」
「ふふっ、随分自分の強さに自信があるのね。いいわ、私も同じだもの。ただ違うのは貴方の強さは所詮人間止まりってこと。幾億の魔族の頂点に立つ六大魔公、鮮血公『金色のアルベラ』の恐ろしさ、その身に刻んであげる」
アルベラが人差し指を唇に当て、シルクのように滑らかな肌を噛むと、薄く張った皮膚がプツリと音をあげ、真っ赤な血液が指先へと伝っていく。
指先から滴る血が大地を潤す寸前、次元の切れ目から現れ漆黒の闇がその血を貪るように形を為し、やがて一つの武器を象った。
「冥王の大鎌………」
「知ってるの、ミナト」
「城塞都市カロを古の大結界ごと両断したアルベラの切り札………刃からとめどなく溢れるどす黒い血液………伝承通りだ。もちろん本物を見るのは初めてだけど、ボクにだってわかる、アレは脅しのための小道具なんかじゃない」
死をそのまま具現化したかのような『冥王の大鎌』を目の当たりにし、ミナトの瞳に絶望が滲む。
「もうボクが止められる状況じゃないのは、分かってる。自分が何の役にも立たない事も、キミの方が遥かに強いことだって、分かってる。でも、いくらキミでも本気になったアルベラには勝てない………」
噛み締められた奥歯が乾いた音をあげる。
「逃げて。キミの強さなら多くの人を助けられる。王都の軍勢と力を合わせれば、アルベラに勝つ手段だってあるかもしれない」
「ミナトはどうするの?」
「ボクは戦うよ、最後まで。足止めにすらならないだろうけど、立ち向かえば何か変わるかもしれないから」
「なら私も戦う」
「ダメだ、キミは………」
「リオ」
少女がポツリと呟く。
「えっ?」
「私の名前」
「リオ………」
半ば独り言のように発せられたミナトの言葉に、リオは気恥ずかしそうに頷く。
「ミナトの願いは私が叶える、絶対に」
リオは何かを決意するように一つ息を吐くと、鞘から剣を抜く。
「ミナトの願いが叶うまで、どこにも行かない、誰にも負けない、約束する。それが私の願いだから」
「ボクの願い?リオはボクのことを………」
(彼女は、リオはボクのことを知ってる?)
ミナトの視線に、リオがほのかに頬を紅潮させる。
「それ以上言わなくても大丈夫。私が叶えてみせる、ミナトの願い、『目指せ酒池肉林!!やるぜボク絶倫!!全世界全種族全制覇、どすけべハーレム王国の建国だウェイ!!』を、絶対に」
(リオが叶えてくれる?)
(ボクの願い『目指せ酒池肉林!!やるぜボク絶倫!!全世界全種族全制覇、どすけべハーレム王国の建国だウェイ!!』を……………………ん?…………んんっ!!!???)
「いや、願ってないけど、それ!!!!!!!!!!えっ、ちょっと待って………酒池肉林!!??ボク絶倫!!??どすけべハーレム王国!!!???」
「そう、世界中のありとあらゆる種族から選りすぐりの美女を集めて巨大な浴場に並べ、溢れるエロスのなかでお触りあり煩悩バタフライをするような、完璧で究極な『どすけべハーレム建国』。………ミナトらしい壮大な夢、漢のロマン」
「いやいやいやいやいやいやいやいや、ちょっと待とう!?それ別の人の願いじゃない!!??神様の発注ミス的な!!!」
「ミナトの願い。間違いない。心の奥底から漏れでる熱いパトスは、止められない止まらない。んっ、恥ずかしがらなくても大丈夫。私は理解ある妻くん。夫のためにせっせとハーレムを作りながら、裏では私の魅力でそれ以上にミナトを魅了していくスタイル。良妻淫魔の鑑」
「いや、そんな気持ち悪い四字熟語知らないけど!?ゴメン、絶対間違ってるよ!!違うから、ボクが願ったの、世界平和とかそんなんだから!!」
「ミナト………可愛い顔して、アッチは凄いことになってるのね」
アルベラの顔にはじめて困惑の色が浮かぶ。
「えっ、なに、仲間が皆殺しにされてくなかで『そうだ、どすけべハーレム作りたいな』とか思いながら戦ってたの?怖いわ、思春期の性欲が怖い」
「英雄、エロを好む。ミナトくらいになると、夜の方も凄くて当然。夜の帝王と昼の国王を兼任するまである。ミナトの夢は絶対に邪魔はさせない」
「うーん、正直その夢ならワタシも協力したいくらいなんだけど………まぁ、おふざけもあまり長いと蛇足だものね。貴方、意外に面白かったから殺すのは惜しいけど、この話と貴方の命もココで終わり。夢と共に消えなさい」
弛緩した空気を断ち切るように、冥王の大鎌が振るわれる。
それは始まったばかりの物語の終焉を意味しているようだった。
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基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。




