精霊魔法VS古代魔法
「いきなり酷え言い様だな」
原始的で稚拙で野蛮という偏見の煮凝りのような評価に、デボラが呆れたような声をあげる。
「事実だもの。精霊魔法は万物に存在する精霊に『お願い』して異世界の力を行使するのが特徴よ。精霊にお願いするっていう関係上、人間みたいに精霊を認知できない劣等種には扱いにくい魔法体系ね」
「んっ、流れるような種族ディス。ポリコレお気持ち罪で炎上不可避」
「なによ、それ。とにかく、精霊魔法はエルフを始めとして精霊に日常的に感じている種族にとっては、比較的簡単に習得することが出来るわ。だから原始的で稚拙って言ったのよ、種族によっては子どもでも使えたりするわけだしね」
「なるほど、だからナーガのルーナも特別修練を積んでないって言ってたのに使えるんだね」
「ナーガがいるの!?村みたいな規模でなんでそんなのいるのよ!!」
「ははっ、ちょっと色々あってね………」
全容を話すと話が横道に逸れ永遠に本題に戻ってこれないと本能的に悟ったミナトは、色々と言う単語に様々な想いを込めつつ言葉を濁した。
「ミナトは何でも拾ってくる系男子。綺麗な石からナーガにエルフ、何でも集めるタイプ。収集癖がエグイ」
「石と女性を同列に扱ってるの!?そんな可愛い顔をしてる癖に『お前は石みたいに何も考えず、ただオレの言う通り身体を動かせば良いんだよ』って思いながら日夜高速舌なめずりしてるわけね、この鬼畜!!」
「………あっ、うん、それで良いから、続けてくれるかな」
死んだ魚のような目をしたミナトを見て、エルムは軽く咳払いをし、話を続ける。
「精霊魔法メリットは、精霊の機嫌が良ければ少しの魔力で強力な魔法を使えること。デメリットは精霊の扱いに失敗すると、どれだけ魔力を消費しても全然威力が出ないこと。この辺りは完璧に魔法詠唱者の能力に依存してるわね。あくまで『お願い』だから、上手く精霊と良い関係を築ければ費用対効果が最高の魔法とも言えるわ」
「Z世代も満足のコスパ。でも、結局魔法もコミュ力重視なのにはガッカリ。淫キャにとっては世知辛い世の中」
「なんかインの発音に不穏な雰囲気を感じるんだけど………。でも、凄く分かりやすかったよ」
「当たり前でしょ、帝国魔法学院きっての天才にこんな基礎的な講義をして貰えることを感謝するのね。次に古代魔法を説明するわよ。魔法と聞いて、貴方達みたいな魔法が使えない一般人が一番初めにイメージするのがこれでしょ」
「まっ、確かに白髭生やした爺さんが古めかしい本片手に、曲がりくねった杖でよく分からねえ呪文を唱えてるイメージはあるな。あれが古代魔法で合ってんのか?」
「お粗末な想像図ではあるけど、間違ってはないわ。古代魔法は異世界の力と『契約』を結んで力を行使するのが特徴ね。『契約』には知識や技術、更にはそれらに基づいた儀式が付き物だから、老人が扱ってるイメージになりやすいのよ」
「んっ、いきなり契約の話とか悪徳商法の香り」
「悪徳商法って何よ。今から千年近く前にエクリプスって魔法詠唱者が、それまで主流だった精霊魔法や神聖魔法を、よりシステマティックに改良しようって考えたの。それまで個人個人が自己流でやっていた魔法の詠唱から儀式の作法まで、様々な文献を紐解いて徹底的な効率的な手法を模索して、まったく新しい魔法体系を作り上げた形ね。劣等種である人間だからこそ精霊魔法の非合理性に気づけたと考えると、人間だって捨てたものじゃないんだから、恥じる必要はないわよ」
エルムはミナト達を慰めるように、普段より少しだけ柔らかい物言いをする。
「いちいちディスる必要性」
「今の古代魔法は基本エクリプスが構築した詠唱法や術式をそのまま使ってるの。千年前に完成した魔法体系だから人間的には『古代』の魔法ってことね。まっ、私みたいな神代のエルフにとっては、昨日起きた出来事と何も違わないけど。とにかく古代魔法は感覚や天性の才能に依存した『芸術』に近かった魔法を、知識や修練によって誰でも習得できる『技能』にした、画期的な魔法と言えるわね」
「神秘のベールが剥がされると、科学の顔が現れるって奴だね」
ミナトはそれだけを言うと、フッと嘆息し、アンニュイな表情を浮かべる。
「そ、そうね。古代魔法のメリットは常に似たような結果を出せること。もちろん使用者の潜在的な魔力量や詠唱の得手不得手によって威力は変わるけど、それも込みで100入力すれば100出力される安定感がウリね。逆に使用者の実力以上の物は出力されない、シビアな魔法だと言うこともできるわ」
「安定性が売りってことか。冒険者仲間としちゃ、実力が把握しやすいのは助かるな。とんでもねぇ力を持ってようが、肝心な時に不発じゃ命を預けられねえからよ」
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魔法談義、もうちょっとだけ続きます………本当は2話で終わらせる予定だったんです、信じてください(´;ω;`)




