第6章: 追い求めるもの
天気輪の扉がゆっくりと開かれ、眩い光がレイナとエリカを包み込んだ。光が収まると、二人は広大な草原に立っていた。草原は一面に広がり、遠くにはうっすらと霞がかかっている。その景色はどこか夢幻的で、現実と非現実の境界が曖昧だった。
「ここは…?」レイナが不安げに呟いた。
セレスティアが静かに答える。「これが天気輪が示す試練の場です。私たちはここで、求めているものを見つけなければなりません。」
「求めているもの…」エリカも周囲を見渡しながら呟いた。「でも、具体的には何を求めているのか、まだ分からないわ。」
二人は少しの間、静かな草原に立ち尽くし、風の音と心臓の鼓動を感じながら、次に何をすべきかを考えていた。その時、遠くで小さな影が動いた。それは鳥のような生き物で、羽ばたきながら時折地面に降りては、再び空に舞い上がるのが見えた。
「もしかして、あの鳥を…?」レイナが目を凝らして言った。
鳥はその時、鋭い鳴き声を上げ、急に空高く飛び上がったかと思うと、次の瞬間には草原の向こうへと消えていった。
「追いかけなきゃ!」エリカが叫び、レイナと共に鳥の飛んでいった方向へ走り出した。
二人は夢中で鳥を追いかけたが、その姿は一向に近づかない。まるで彼女たちを試すかのように、鳥は一定の距離を保ちながら空中を漂い続けていた。
「待って!逃げないで!」レイナは息を切らしながら叫んだが、鳥は応えることなく、ただ彼女たちを引きつけるように飛び続けた。二人のビスクドールも共に走りながら、彼女たちを見守っていたが、その表情には一抹の不安が浮かんでいた。
レイナの心は焦りで満たされていった。鳥を捕まえなければ、試練を乗り越えることができないという思いが頭の中で渦巻き、その思いが彼女をさらに駆り立てた。しかし、その焦りが逆に視野を狭め、鳥の動きを見失いそうになる。
エリカもまた同じように焦りを感じ始め、心の中で自問していた。「どうしてこんなに難しいの?この鳥を捕まえなければ、私たちはここから抜け出せないの?」彼女の頭の中に浮かぶ疑念が、次第に自信を削り取っていった。
「落ち着いて、レイナ、エリカ。この試練は、ただ追いかけるだけでは乗り越えられないかもしれませんわ。」アストリアの冷静な声が二人の思考に割り込んだ。
アストリアの言葉に、二人は立ち止まり、息を整えながら考えた。草原の風が彼女たちの髪を揺らし、静かな時間が流れた。レイナは再び鳥を見つめ、その動きを注意深く観察した。鳥はまるで何かを導くかのように飛んでいたが、その飛び方には規則性があった。
「捕まえなければならないものは、鳥そのものじゃない…その背後にある意味を理解することが必要なんだわ。」レイナは心の中で気づきを得た。
鳥はただ逃げているわけではなく、二人に何かを伝えようとしている。レイナはそのことに気づき、再び心を落ち着かせた。そして、鳥が飛び回る場所に注意を払いながら、その意味を探ろうとした。
エリカもまた冷静さを取り戻し、鳥の動きを再度観察した。鳥が飛び回る範囲には、何か特別なものが隠されているに違いないと感じた。その直感に従い、二人は鳥の飛んでいる場所を中心に調べ始めた。
「ここだ…何かがある。」エリカが声を上げた。
草むらの中に、かすかな光が見えた。エリカが手を伸ばしてそれを掴むと、小さな結晶が手のひらに収まった。
「これが…天気輪の答え?」レイナは息を呑みながら結晶を見つめた。
その瞬間、鳥が再び鋭い鳴き声を上げ、空高く舞い上がった。光に包まれながら、その姿がゆっくりと消えていく。
「そう、これは天気輪が示した真実の一部。この結晶を手に入れることが、私たちの試練を乗り越える鍵なのね。」エリカが頷きながら言った。
レイナは結晶をしっかりと握りしめた。その手の中に感じる冷たさが、試練を乗り越えた証であり、これから進むべき道を照らす光だと感じた。
「やっぱり、鳥そのものが目的じゃなかったんだ…鳥が私たちを導いてくれたんだね。」レイナが微笑みながら言った。
二人は結晶を手に、再び天気輪の扉に向かって歩みを進めた。試練を乗り越えたことで、彼女たちは一歩先に進むことができた。これから待ち受けるであろうさらなる困難にも、彼女たちはこの経験を糧にして立ち向かう覚悟を固めていた。