第4章: 二人の過去、絆の修復
レイナが夢の世界に再び引き込まれる夜が訪れた。彼女はエリカと共に、星空の下で天気輪の手がかりを探していたが、その過程で、アストリアとセレスティアの間にある微妙な関係に気づかざるを得なかった。
二人のビスクドールは、表面上はお互いに敬意を持って接しているように見えるが、そのやり取りにはどこか冷たさが含まれていた。アストリアの間接的でまわりくどい言葉に、セレスティアは微妙に反応を示しつつも、言葉を飲み込むようにしていた。レイナはその状況に心を痛めていたが、どうするべきか分からずにいた。
その夜、レイナはふとした瞬間にエリカの表情が曇るのを目にした。「エリカ、何か気になることがあるの?」
エリカは少し躊躇した後、静かに口を開いた。「実は、アストリアとセレスティアには、少し前に起こったある出来事が関係しているの。」
「出来事?」
「そう、二人がまだ私たちと出会う前のこと。彼女たちはとある任務で協力していたんだけど、その途中で重大なミスが起きたの。」
エリカは遠くを見つめながら、その出来事を語り始めた。セレスティアとアストリアは、かつて別の夢の世界で悪夢の化身と戦っていた。しかし、セレスティアの不注意が原因で、重要な機会を逃してしまい、悪夢の化身を逃がしてしまった。その結果、無実の少女が命を落とすことになった。
「アストリアは、そのことを今でも責めているの。彼女はセレスティアがもっと慎重であれば、あの悲劇は防げたと思っているから。」
エリカの言葉に、レイナは心が締め付けられるような思いを感じた。セレスティアも、そのことを心のどこかで悔いているはずだ。しかし、彼女はそれを表に出さず、ただ片目を隠して生き続けている。
その時、アストリアが静かにセレスティアの方を見て言った。「セレスティア、あの時のことを忘れることはできませんわ。あなたが注意を怠らなければ…私たちはもう少し違う結果を迎えていたかもしれないのですもの。」
その言葉には、今まで抱えていた苛立ちと悲しみが込められていた。しかし、アストリアはあくまで上品に、まわりくどく伝えたため、レイナはその真意を理解するのに時間がかかった。
セレスティアはしばらく黙っていたが、やがて深い溜息をつき、静かに口を開いた。「アストリア、あなたがそう感じるのも無理はないわ。私のせいで大切なものを失ってしまった。あの時の私は…愚かだった。」
その言葉に、アストリアの表情が微かに揺れた。彼女もまた、セレスティアが自分の過ちを深く悔いていることを知りつつ、それを受け入れることができなかったのだ。
レイナは二人の間に流れる複雑な感情を感じ取り、思わず口を開いた。「セレスティア、アストリア…私には、二人が過去に囚われているように見える。でも、私たちがこれから進むべき道には、過去に縛られずに進んでほしい。セレスティアの片目を取り戻すことができれば、きっと二人もまた新しい関係を築けるはず。」
レイナの言葉に、二人は静かに耳を傾けた。アストリアはしばらくの間、何かを考えているようだったが、やがてふっと表情を緩めた。
「レイナさん、あなたは…とても強い心を持っていらっしゃるのですね。セレスティアの片目を取り戻すことができたなら、私ももう一度、彼女と共に進むことができるかもしれませんわ。」
セレスティアも、レイナの言葉に感謝の意を込めて微笑んだ。「アストリア、私たちが過去を乗り越え、新しい未来を築くことができるなら、それはきっと素晴らしいことだわ。」
二人のビスクドールは、微かに微笑みを交わし、わだかまりを少しずつ解き放っていくようだった。レイナとエリカは、その光景を見守りながら、これからの旅に希望を抱いた。
その夜、彼女たちは過去の痛みを少しずつ癒やしながら、再び進むべき道を見つめ直していた。未来への一歩を踏み出すために、彼女たちは過去の重荷を解き放つことを決意した。