第3章: 静かな力、エリカとの出会い
再び夢の世界に引き込まれる夜が訪れた。天音レイナは、広大な星空の下、銀河の川が流れる静かな場所に立っていた。ここに来るたび、彼女は不安と期待が入り混じった感覚を抱いていた。今夜はカンナの姿がなく、彼女は一人で歩みを進めていた。
ふと、遠くから柔らかな光が見えた。レイナはその光に引き寄せられるように歩き続けた。光の先には、静かに佇む少女がいた。彼女は長い髪を三つ編みにし、柔らかな笑みを浮かべている。手には一体のビスクドールが抱かれていた。その姿は穏やかで、レイナが今まで出会ったことのない静かな力を感じさせた。
「こんばんは。」
レイナがそっと声をかけると、少女は優しく微笑み返した。「こんばんは。あなたもこの場所に導かれたのね。」
「ええ。私は天音レイナ。あなたは?」
「エリカよ。あなたもビスクドールを持っているの?」
エリカが尋ねると、レイナは頷いてセレスティアを見せた。セレスティアは片目を隠したまま静かに立っていたが、その姿を見たエリカは驚いたような表情を見せた。そして、エリカが抱いていたビスクドール、アストリアがゆっくりと顔を上げ、レイナに対して優雅に挨拶をした。
「初めまして、レイナさん。私はアストリア。エリカと共に、この世界を見守る者です。」
アストリアの声は穏やかで、高貴な雰囲気が漂っていた。しかし、彼女がセレスティアに視線を移した瞬間、その表情が少しだけ硬くなったように見えた。
「まあ、セレスティア。相変わらず、そのリボン、とてもお似合いですわね。片目を隠すためには、それしかないのかしら…」
その言葉には、褒めているように聞こえながらも、リボンが付いている原因である片目の欠損を暗に示唆するものが含まれていた。レイナはその皮肉に気付かず、ただアストリアとセレスティアの間にある微妙な緊張感を感じ取るだけだった。
「レイナ、あなたのビスクドールが片目を失っていること、それが原因で彼女の存在が感知できなかったのかもしれないわ。」
エリカが柔らかい声で言ったが、その目はアストリアとセレスティアの間にある緊張感を察しているようだった。
「そうかもしれないけど、セレスティアは私にとって大切な存在だから、何とかしてあげたいの。」
レイナがそう言うと、エリカは微笑んで頷いた。「もちろんよ。私たちが力を合わせれば、きっとセレスティアの片目を取り戻せるわ。」
アストリアはその言葉に反応せず、ただ軽く首を傾げてから、レイナに向き直った。「レイナさん、あなたがセレスティアを信じている限り、私はエリカと共にあなたを支えるつもりですわ。けれど…これ以上、セレスティアがあの素敵なリボンを隠さなければならないようなことがないと良いのですけれど。」
その言葉の奥には、過去に何かがあったことを示唆するものがあった。レイナはその意味を探ろうとしたが、今は深く問いただす時ではないと感じた。
「天気輪という言葉、あなたも聞いたことがある?」
突然のエリカの質問に、レイナは驚きつつも頷いた。「ええ、セレスティアが教えてくれたの。まだ何のことか分からないけれど…」
「私も、アストリアから同じ言葉を聞いたの。でも、まだ手がかりは掴めていないの。」
エリカの顔に一瞬の不安がよぎったが、すぐにその表情を引き締めた。「でも、きっと私たちが力を合わせれば、その謎を解くことができるわ。」
レイナとエリカは、共に天気輪の謎を解き明かす決意を固めた。アストリアとセレスティアの間にはまだ不協和音が残っていたが、レイナはエリカと協力して、その絆を築くことを誓った。
夜が更け、二人は再び日常へと戻っていったが、その心には新たな仲間との絆がしっかりと根付いていた。これから訪れるであろう困難の中で、彼女たちは互いに支え合いながら進んでいくことになるだろう。