第2章: 敵か味方か
夜の静けさが広がる中、天音レイナは再び夢の世界に引き込まれていた。広大な星空が頭上に広がり、彼女はその中心に立っていた。足元には銀河の川が流れ、遠くから誰かの気配を感じ取る。しかし、その気配には不穏なものが含まれていた。
「誰かいるの?」
レイナは周囲を見回したが、銀河の光以外には何も見えなかった。セレスティアも姿を現さず、ただ心臓が高鳴るのを感じるだけだった。
突然、彼女の背後から鋭い光が飛び込んできた。とっさに身をかわすと、その光は彼女のすぐ隣に突き刺さり、星のように輝きを放った。
「なに!?」
驚きと共に振り返ると、そこには一人の少女が立っていた。短い髪を青いリボンで束ね、明るい笑みを浮かべているが、その笑みには挑戦的な色が混じっていた。彼女の手には、光を放つ不思議な武器が握られていた。
「おっ、見つけた!あんた、ここで何やってんの?」
少女は攻撃の手を止めず、元気いっぱいにレイナに問いかけた。その姿勢と口調に戸惑いを覚えたレイナは、必死に相手の意図を探ろうとした。
「私は…天音レイナ。あなたと同じく、この場所に導かれたの。あなたは?」
その言葉に少女は一瞬驚いたようだが、すぐに楽しそうに笑った。「私はカンナ!でも、あんたの言うこと、ちょっと怪しいね。ビスクドール持ってる奴しか、ここに来られないはずなんだけど?」
レイナがセレスティアのことを話そうとしたその瞬間、カンナの表情が急に真剣になった。「ちょっと待って、あんたのドールが見えないぞ…まさか敵か!?」
カンナは再び武器を構え、レイナに向けて突き出した。レイナはとっさに後退りし、必死に弁明しようとした。
「違う!私にはセレスティアがいる。でも、彼女は…」
その瞬間、セレスティアが現れた。しかし、片目がリボンで隠されている姿を見たカンナは、不信感をさらに強めた。
「なにそれ!ビスクドールが片目って、おかしくない?」
カンナは好戦的な笑みを浮かべ、再び攻撃を仕掛けた。レイナは必死に防御を試みたが、カンナの力に圧倒され、追い詰められてしまう。
「お願い、話を聞いて!」
レイナは必死に叫んだが、カンナの攻撃は止まらない。やがて、セレスティアがその身体を輝かせ、カンナの攻撃を防いだ。光の中で、セレスティアの片目の隙間から微かな光が漏れ出し、それがカンナのビスクドールに触れた。
「…セレスティア?」
その光に触れた瞬間、カンナのビスクドール、ルチアがゆっくりと目を開け、穏やかな声でカンナに語りかけた。
「カンナ、少し落ち着きなさい。この方は、敵ではありませんよ。」
ルチアの声には、大人の女性のような落ち着きがあり、その上品な佇まいは、まるで姉のようにカンナを諭していた。カンナはルチアを見つめ、次にレイナに視線を戻した。
「ごめんごめん!どうやら、私の勘違いだったみたいだね!」
カンナは武器を収め、明るく笑った。その表情にレイナは驚きつつも、緊張が解けたことに安堵した。
「大丈夫。私も説明不足だったし…でも、あなたは本当に強いのね。」
レイナがそう言うと、カンナは鼻をこすりながら得意げに笑った。「へへっ、まあね!でも、それにしてもセレスティアが片目を失ってるなんて、ちょっと不思議だね。」
レイナは頷き、セレスティアが片目を失っている理由を語った。「私も、どうして片目がないのか分からないの。でも、セレスティアが言うには、その片目を取り戻さなければならないらしい。」
カンナは少し考え込んだ後、にっこりと笑顔を見せた。「よし、決まり!あんたの片目、私も一緒に探してあげるよ。何か面白そうだしね!」
その言葉に、レイナは初めて心から安心感を得た。カンナとの出会いが、彼女にとって新たな希望となり、二人はこの世界で何かを成し遂げるために一緒に進んでいくことを誓った。
夜明けが近づく頃、レイナとカンナは現実世界に戻り、再び日常生活が始まる。しかし、二人は夢の中で得た絆を信じ、次なる冒険に備えるのだった。