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星霧の蠍  作者: ちゃとぴ
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第13章: 心の扉を開く

 レイナとエリカが学校でのプログラムを開始してから、数ヶ月が経過していた。彼女たちは、生徒たちと日々向き合いながら、彼らの心の扉を少しずつ開く手助けをしていた。プログラムは徐々に成果を上げ始め、生徒たちの中には、自分の夢に向かって歩き始めた者も現れた。


 しかし、すべてが順調というわけではなかった。学校には、心を閉ざし、自分の殻に閉じこもってしまっている生徒たちも多くいた。彼らは、過去のトラウマや不安に苛まれ、他者との関わりを避けるようになっていた。


「どうすれば、もっと多くの生徒たちに心を開いてもらえるんだろう…」レイナは、放課後の空き教室でエリカと話し合っていた。


 エリカも深刻な表情で頷き、「一部の生徒たちは、まだ自分自身と向き合うことに抵抗を感じているみたい。私たちのサポートが必要な子たちが、もっとたくさんいるわ。」


「でも、彼らが心を閉ざしてしまう理由は、それぞれ違うから…どうやってアプローチするのが一番いいのか、難しいわね。」レイナがそう言いながら、窓の外を見つめた。夕焼けが校庭を染め上げ、静かな風が吹き抜けていた。


 その時、セレスティアがそっと口を開いた。「心を閉ざしてしまう理由は、確かに一人ひとり違います。しかし、共通しているのは、彼らが何かしらの痛みを抱えていることです。その痛みを理解し、寄り添うことが、彼らの心を開く第一歩になるでしょう。」


 アストリアも続けて言った。「私たちが夢の世界で学んだことを思い出して。痛みや恐れに寄り添い、それを受け入れることができる存在であることが、彼らにとって大きな安心感をもたらすはずです。」


 レイナはセレスティアとアストリアの言葉に耳を傾け、深く考えた。彼女たちはただ夢を追いかけるだけではなく、夢を現実にするための道筋を示す存在でありたいと考えていた。だからこそ、生徒たちが心を開き、未来に向かって歩み出すためのサポートが必要だと感じていた。


「私たちができることは、まず彼らの話を聞くことかもしれないわ。」レイナが静かに言った。


 エリカもその提案に同意し、「そうね。彼らが感じている痛みや恐れを、私たちが理解することができれば、次に何をすべきかが見えてくるかもしれない。」


 そこで、レイナとエリカは、より深く生徒たちと関わるための方法を考えた。個別に時間を取り、じっくりと話を聞くセッションを設けることにした。生徒たちが安心して自分の気持ちを話せるような環境を作ることが、何よりも重要だと感じていた。


 セッションの初日、レイナは一人の生徒と向き合っていた。彼女は、クラスでも特に目立たない存在で、常に一人でいることが多かった。表情は硬く、話すことをためらっているようだった。


「こんにちは。」レイナが優しく声をかけると、生徒は少し驚いたように顔を上げた。


「私はレイナ。今日は、あなたの話を聞かせてもらいたいと思っているの。無理に話す必要はないけれど、もし何か心に抱えていることがあれば、教えてくれないかしら?」


 生徒はしばらくの間、レイナの目を見つめていたが、やがて小さな声で話し始めた。「私は…他の子たちとは違うって、いつも感じてる。みんなと話すのが怖くて、どうしたらいいのか分からないの。」


 その言葉に、レイナは静かに頷いた。「そう感じるのは、とても辛いことね。誰にも話せないと、余計に孤独を感じてしまうかもしれない。でも、あなたがどう感じているのか、少しずつでも教えてくれることが、私にとってとても大切なことなの。」


 生徒は一瞬戸惑ったが、レイナの優しい声に安心感を覚え、少しずつ自分の気持ちを話し始めた。彼女は、過去に受けた小さな傷が積み重なり、自分に自信を持てなくなってしまったこと、そして他人と関わることが怖くなってしまったことを打ち明けた。


 レイナはその話をじっくりと聞きながら、「その気持ちを抱えてここまで頑張ってきたんだね。それはとても勇気のあることだと思うわ。」と、彼女の努力を認める言葉をかけた。


 その後も、レイナとエリカはセッションを続け、少しずつ生徒たちの心を解きほぐしていった。彼女たちがただの教師やカウンセラーではなく、生徒たちにとって信頼できる存在であることが、次第に広まっていった。


「私たちの役割は、ただ教えるだけではなく、彼らが自分自身を受け入れる手助けをすることなのね。」レイナはセッションを終えた後、エリカにそう語った。


 エリカも深く頷きながら言った。「そうよ。そして、その手助けが、彼らの未来を大きく変えることになるかもしれない。私たちはその橋渡し役でありたいわ。」


 セレスティアとアストリアも、その活動を見守りながら、レイナとエリカの成長を感じていた。彼女たちの旅は、夢の世界での戦いから現実の世界でのサポートへと移り変わり、さらなる広がりを見せていた。

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