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第二話


「なるほど、こういう意味だったわけね」

 カイルの後をついて歩き、太陽が天頂近くに達した頃私は思わず口にした。

 カイルが振り返って私を見て、少し驚いた顔をする。

 その顔には「よくわかったな」と書いてあった。

「だって、空気がピリピリしてるから。3人くらい? だんだん近づいてくるけど、どうするの?」

 カイルが腰の剣の柄に手を置く。

「森で置いてかれても、一緒にいても死ぬかもしれないのは同じってことだったのね」

 私は、自分が落ち着いていることに驚いていた。死ぬかもしれない。その事実を受け止めても、動揺することなく軽口を叩きながら起りうる事象と、その対処法を頭がめまぐるしく計算している。

「カイルは、私にどうして欲しい?」

 一応指示を仰いでみる。

「何ができる?」

「さぁ?」

「……邪魔するな」

「心がけてみる」

 短い会話。

 私がすべき、最優先事項は生き延びること。

 それを心に刻み込む。

 そして、戦闘が始まった。





 先手は向こう。

 ナイフがカイルに向かって飛んでくる。それを、長剣で弾きあるいはかわして対処する。

そして、ナイフが途切れた隙をついて、茂みに向かってカイルが走る。

 その横合いから、カイルの虚をつくべく男が飛び出す。

 しかし、カイルはすぐさま方向転換をして飛び出してきた相手に向かって剣を繰り出す。

 まさかそうくるとは思っていなかった男は、逆に虚をつかれカイルの一太刀のもとに切り伏せられた。

 弓に矢をつがえ、いつでも放てるようにしながら、私は彼の動きを見ていた。

 動きに無駄が少ない。やや力任せに動いている部分はあるが、その分速い。

「上!!」

 気配に気が付いた私が、声を張り上げる。

 カイルがその声に反射的に体を反らせる。

 木の上から放たれた矢が、カイルの頬をかすめて地面に突き刺さる。

 私は、矢の飛んできた方向へ向かって、矢を解き放つ。

 ドサリと重たい音が森に響く。

 次の瞬間、最後の一人が私に向かって突進してくる。

「来たぞ」

 言われるまでもない。

 声に出さずカイルに答え、動きを止めず二の矢を残った一人に向けて放つ。

 男は何とか、かわすものの体勢が崩れる。そこにカイルが上段から男を切りつけた





「大丈夫?」

 戦闘終了後、カイルに声をかける。

 何を問われているのか分からないと言う顔をしていたので、私は自分の頬を指さしてみせる。

 カイルは親指で自分の頬の血をぬぐう。まだ、出血は収まっていないらしく、すぐに傷口から血がにじむ。

「一応、手当てしておいた方が良さそうだね」

「ほっとけば、止まる」

「そ」

 本人がそういうので、私はさして気にもせず着衣の乱れを直し、もったいないので敵の荷物をあさってみる。

「……図太い」

「だって、さすがに武器しか持ち物ないと心許ないでしょ。人が使ってあげてこその価値ってものよ。お、携帯食料発見。それに、こっちはなんだろ? 薬?」

 戦利品は、短剣が数本と携帯食料、小瓶に入った薬らしきモノ、それに金貨数枚。

「それにしても、どうしてこんな人達に狙われてたわけ?」

「オレじゃなくて、お前の敵かもしれんぞ」

「身に覚えない。それに、狙われてるみたいなことを自分で言ってたじゃない」

 カイルがため息をつく。

「行くぞ」

 どうやら、余計なことは聞くなと言うことらしい。

 大人しく、彼の後ろについて行った。







 獣道のような道を進み、ようやく街道に出る。

 下り坂の向こうに、城壁に囲まれた街が見えた。

 カイルは、街道を進み街に向かって歩いていく。その後ろをついて歩く。

 街が近いため、人通りはそれなりにあるが……

「これだけ、人がいるんだ。そう心配することはない」

 私の不安を表情だけで読みとったカイルが、断言する。

「なら、なんで街道を通らず、森の中を突き進んできたの?」

「近道だから」

 自分の身の安全よりも早さを優先した結果、襲われたってことか。ま、そのおかげで拾ってもらえたのだから、これ以上は言うまい。

 カイルは、肩にかけた荷物を抱え直し額の汗をぬぐった。


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