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3 罪の行方と罰

扉を開け、鉄錆のような匂いに溢れた部屋から出た。


悪魔が少女を肩に乗せたまま、牢を通り過ぎ、この店自体から出ようとした時のこと。


「待っておくれ!」「待って!」「待ちなさい!」


最初の一人は老女。


次は少女より少し年上の女の子。


そして最後は顔立ちの整った女性だった。


「なにか?」


「なんでもする!だから儂を…「何を言っているの!それなら私を!」…なんじゃと!」


老女と女性の言い合いがそうして始まった。


聞き苦しいそれを聞いている気はなかった悪魔がそのまま通り過ぎようとしたその時だった。


「「待って!」」


「なにか?」


「どうか出しておくれ!」「出して…ください!」


「いいだろう。」


悪魔は錠前に向かって手をかざすと、それは砂のように崩れ去った。


牢の扉は開き、老女と女性はすぐにその牢から逃げ出した。


店の扉を開き、礼すら言うことなく走り去っていってしまった。


牢の中に残ったのは、女の子ただ一人。


「お前はいいのか?」


「はい、私があなたに声を掛けたのはその子にお別れが言いたかったから。」


「…少し席を外そうか?」


「いいえ、ありがとう。お兄さん。」


悪魔は少女を肩から下ろした。


すると、女の子は牢の奥の方から手すりの方に向かってきた。


女の子の全貌がわかり、悪魔は驚いた。


女の子の目のあたりには包帯が巻かれ、明らかに両目は見えていなかったのだ。


女の子は少女に語り掛ける。


「チビさん、ごめんなさい。あの二人や、アルマタイトたちからあなたのことを助けきれなくて。」


「…。」


「…あなたはここでのことは忘れて幸せになってね。」


「…お姉ちゃん。」


女の子の瞳からは一筋の涙が零れ落ちた。


悪魔は牢越しに女の子の包帯の上に手を当てた。


「合格だ。君も連れて行くことにした。」


「え?」


女の子の目を光が包む。


「…温かい…。」


ゆっくりと包帯を外してやると悪魔は後ろに下がる。


女の子の美しい青い瞳が露わとなり、最初に写ったのは少女の顔だった。


「チビさん、こんなに可愛いかったんだ。」


女の子の瞳から涙が溢れ出し、鼻が鳴り始めると少女はそっと女の子の頭を撫でていた。


「…お姉ちゃん。」



女の子の方が眠ると、悪魔は魔術を使い、2つほど隣の国の森へと転移した。


「さて、これでよかったか?」


「うん♪ありがとう、悪魔さん。」


悪魔へと向ける微笑み。


それはやはり女の子へと向けるそれとはまるで違った。


この少女の頼みを戯れとして聞いてみた。


少女が悪魔に頼んだのは2つ。


一つ目は二人の女を牢の外に出すこと。


「あは♪あははっ♪今頃あいつらどうなったかな?ねぇ、悪魔さん、知ってる?逃亡奴隷って罪がすっごく重くなるみたいだよ♪」


奴隷にはいくつか種類があり、借金奴隷、性奴隷、犯罪奴隷。


大半は一番最初のそれが最も多い。


手に刻まれた魔術紋から、少女と女の子もそれに含まれる。


しっかりとした店ではそれが厳守されるのだが、どうやら二人がいた店はそれが守られていない違反店だったらしい。


まあ、それはともかく、先の奴隷たちよりも厳しい立場とならものが存在する。


それが逃亡奴隷だ。


逃亡奴隷は預かっている奴隷商人から追われることとなる。


逃亡奴隷は逃げ切れればいいが、できなければその扱いは犯罪奴隷をも凌ぐ。


「奴隷商人たちは殺した。殺されたよね♪誰がしたって普通思う?子供には無理♪できっこない♪じゃあ、犯人はだぁれ?」


…犯罪までも加わってしまった。


これであの逃げた女たちはあの国の兵士にまで追われることになるだろう。


これでもう普通の人間には逃げ切ることは不可能だ。


大量殺人の罪はその女たちのものとなる。


一体これほどまで、少女に恨まれるとは何をしていたのだろう?


「…ホントお姉ちゃんは本当に私のことを大切に思ってくれていてよかった。もしそうじゃなかったなら…」



2つ目の頼み事、それは…。



「そうじゃなかったら、殺さなきゃだったから。」


悪魔はまず少女の手の甲にある魔術紋を、そして女の子の魔術紋を術式を解いた。


「ありがとう、悪魔さん。」


少女は女の子の頭を撫でていた。


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