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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

召喚失敗〜どうしてこうなった!〜

作者: まい

注意! 作中にとある虫が出てきます。 名前だけでも見るのがイヤだと言う方は回避をお願いします。

「300の魂よ、呼びかけに応えるのだ! このワシの〜〜っ!!」


 と真っ暗な場所で叫ぶジジイは、全身を覆い隠す暗い色のフード付きローブによって、正体が確認できない。


 そのジジイが奇声と共に両手を挙げると、ジジイの眼の前の床がひとりでに大きく輝く。




 その大きな輝きには規則性があり、目を凝らしてしっかり確認すると、それは魔法陣であった。


 この魔法陣はジジイの叫びと合わせると、何らかのモノを呼び寄せる魔法陣だと分かる。


 しかも魔法陣は巨大であり、立っている人間なら300人は余裕で入るだろう巨大さだ。




 輝く魔法陣によって、周囲の様子がようやく判明する。


 石造りの無骨(ぶこつ)で四角く巨大な空間。


 ……まあ300人は立てる魔法陣が入る空間なのだから、大きくて当たり前なのだが。


 その空間の壁には壁掛け式の松明(たいまつ)台がいくつもあり、魔法陣が輝いたのにあわせて、(よろい)姿の人間が急いで松明に火を付けて回っている。


「我が国はとても良いところだー! 異世界の勇者(どれい)達よ! 早く我が国の手駒になりに来〜いっ!!」


 …………どうやらクズ系異世界召喚を行っている模様。




 〜〜〜〜〜〜




――――ところ変わって、地球の日本のとある学校。


 その学校を全て覆うサイズの魔法陣が、学校が建っているその地面に淡く光り浮かび上がる。


 浮かび上がってから少し()つと、魔法陣が強く輝き出す。






 だが、その学校の内側に魔法陣を驚く者は居ない。


 なぜならば、その学校は学校閉鎖されたばかりである。


 突発的な感染症により、学校の関係者の多くが休みとなったからだ。


 それでも普通なら警備や事務作業等の目的で学校に誰かしらが居るはずなのだが、その学校関係者達は今日は全員で自覚症状の無い感染者を探すために病院へ検診に出てしまっているので、カラなのだ。




 そんな学校になぜロックオンしたのかと()かれても、異世界のどこに召喚魔法陣を設置するか確認出来ない仕様なので、偶然(ぐうぜん)そうなったとしか言えない。




 魔法陣が一際(ひときわ)強く光ると、その魔法陣は姿を消していた。




〜〜〜〜〜〜




――――場面は戻り、謎の石造りの空間。


「成功だーーー!!」


 魔法陣が強く輝きだし、それが成功の反応だったらしく、異世界から勇者(どれい)を呼び寄せられたのが術者のジジイに伝わったらしい。


 この雄たけびに釣られて、鎧姿の者達も歓声(かんせい)をあげる。




 魔法陣からの輝きが次第(しだい)に弱まり、魔法陣の様子が確認出来るようになる。


 魔法陣が輝き出した辺りから目を(つむ)っていたらしいジジイが、その頃になって目を開けると、困惑の表情になる。


「んんん? なぜだ? なぜ召喚できたはずの人間が居ない??」


 困惑の表情になったのは、そういう事らしい。


「ん!?」


 完全に魔法陣の輝きが()せる寸前に、小さな影が見えた。


 それを確認するべく、松明を魔法陣の(あと)に寄せると…………。



「小鳥が2羽?」


 正確にはスズメだが、そんな名前さえ出てこない事を考えると、どうやらこちらの世界にはスズメが居ないらしい。


 そのスズメは、学校の屋上に偶然止まっていただけのスズメだ。



 それ以外は松明の光量では()()()見えない。


「召喚できたのが、小鳥2羽?」



 このジジイが呆然とした。


 まあ異世界召喚なんて世界を渡るチカラが、ホイホイ簡単に行使(こうし)できるモノではない。


 その費用対効果がコレでは、呆然とするだろう。


 もちろん鎧姿の者達も、成功と聞いてからコレではざわつきもする。


 そんな鎧姿達の声が耳に入ったジジイは、ハッと我に返った。


 そして返ったと同時に、顔が真っ赤になって肩が震えだす。



 赤っ恥。



 アレだけ息巻いて異世界召喚を()り行い、成功と叫んでからのこの落差。


 …………こんなん誰だって顔真っ赤になりますわ。


 そんなジジイは、怒りと恥ずかしさを召喚したモノ()()にぶつける。


「ええい貴様ら、どこへなりとも行くがいいっ!!」


 召喚者による、自由行動命令。






――――それがこの国の中枢の終わりの始まりだった。


 スズメ達はどうでも良い。


 スズメ達は転移の際に何か特別なチカラを得て上手く活用できたのか、たくましく生き続けて、異世界にて個体数を増やしただけだから。



 他が問題だった。


 暗くて見えなかったが、300人喚ぶ予定の魔法陣で、残りの298体は何だったか……だ。


 学校と言う建造物のスキマに潜む、日本では不快害虫や衛生害虫や経済害虫と呼ばれる例の害虫達だった。


 この害虫は見ると不快になるだけの不快害虫ではあるが、時には有害な病原菌を運ぶキャリアでもある、危険な衛生害虫。

 それを知っている人間が飲食店でソレを見かけてしまうと、その店に2度と行きたくないと思わせて経済活動を阻害する経済害虫。



 いわゆる、G。


 茶色がかった黒い色で、平べったくて、触角がビヨンビヨンしてて、物陰から物陰へカサカサと移動する、見ただけで気持ち悪くなってくるアレ。


 松明の明かり程度では黒いボディが視認できず、そいつらに自由行動を認めてしまった。



 特に召喚された個体は特別なチカラを得ていて、生命力以外にもその何かヤベーチカラが噛み合い、縦横無尽に動き回る。


 奴らは召喚した施設……王城に巣食い、数が増えれば近くにある王宮にも巣食いはじめる。


 召喚を行ったこの世界には、まだ衛生観念・概念が存在しない程度の文明である。


 そこにGが現れて大繁殖したとなれば、もう結末は見えるだろう。

 まあ、異世界召喚はこうなるリスクもあるって事で。





 なお異世界召喚されたら、なぜ強いチカラを得るのかは謎のまま。 設定で考えてないとも言う。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 異世界もので意図的に目を逸らされる問題のひとつに着目した作品。未知の病原体や害虫が入り込んだ時の危険度を教えてくれる。 [気になる点] Gが元気な世界というとフォー〇アウトが思い浮かびます…
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