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1.「許しません」
「許しません。あなたとの婚約は破棄します」
「ありがと……えっ? ガブリエラ、今なんて言った?」
ガブリエラがいつものように自分を許してくれると確信していたデニスは目を丸くした。
「許さないと申しました。浮気を許すことは出来ません。婚約は破棄します。もちろんあなたの有責になります」
デニスはガブリエラの表情から冗談を言っている訳ではないことを理解して慌てて弁解をした。
「ち、違うんだ。あれは誤解なんだ!」
「誤解? 私には女性と熱く抱き合っているように見えましたが?」
「彼女は足をくじいていたので支えていたんだ」
「まあ、デニス様? 足を怪我している女性の介抱に口づけが必要なのですか?」
「あ、あれは、その、…………」
「話は終わりです」
「そ、そんな。嘘だろう? もう二度としない。誓うから。だから婚約を破棄するなんて言わないでくれ。君が好きなんだ。それにいつもなら……許してくれていたじゃないか」
ガブリエラはデニスのことを呆れた顔で見ながら冷たく言い放つ。
「まさか今回も許します、と私が言うと思っていたのですか?」