恐怖心
正直短いです……
少しストックしていたいので、一気に書きだめておきます。
亡くなった、この言葉は普段の日常でも使われ、悲しみが生まれてくる。しかし、このバイトの中では"亡くなる"の意味が変わってくる。
「……きっといい人達だったのでしょう……ですが、私達は覚えておくことができません。ただ、名簿に知らない名前があるだけになるのです。」
ただ記憶が消えるのならまた、知ることができるかもしれない。
でも、この世界に"は"残るだけで、現実には何一つ残らない。例えば、その人の写真はその人が切り抜かれる。また、書いた日記は文字が消える。
生きていたという事実が幻想に変わってしまう……このバイトでの亡くなることは、そういうことだ。
俺が初めて人が死ぬのを見た時、こよりさんはこういった。
『名前はその人の性格、癖、見た目、それらを持ちます。その名前が失われた……もうすぐ、彼のことは記憶から消えていくでしょう……』
俺はそのことを思い出し、少し怖くなった。
るしあのことを忘れたくない……忘れられたくない……
いつもだと、経験からなる自信でそんなことを思うことはないのだが、まだ未踏破であることが恐怖心を煽った。
チョン、と俺の手のひらをるしあが触れた。
「できるよ、私達なら」
その一言で十分だった。
「ああ、行こうか」
「行くどー!!」
「軽いなぁ」
俺たちのいつもの会話が生まれ、精神的に安心した。
「それでは……行ってらっしゃいませ」
「……あ、お風呂予約してないや」
「今!?」
いつも通りのるしあだった。
俺とるしあが出発してしばらくした後、こよりさんはとある人物に手紙を書いていた。
(まだあの二人には実力が眠っている……それを開放してあげないと……)
そう思い、ペンを持った。
『かえで様とるしあ様。彼ら二人にはまだまだ実力が残されています。』
『彼らに指導してもらえませんか?』
『よろしくお願いします。師匠』
そう綴った。
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