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プロローグ
「君にこの本を授けよう。中を開いてごらん。鍵がいっぱいだろ?きっとこの中に、君のおうちの鍵もあるはずだ。君の時間はとても長いからね。焦らず、ゆっくり探すといいさ。」
親に捨てられ、運にも見放され、齢9つにして人生に失望していた私に生きる意味を与えてくれたこの本。当時住んでいた小さな村に来た旅の一座の人がくれたものだ。
わたしのおうち。わからない。そんなものないし、できる前に飢えて死ぬだろう。でも、この本は……いや、あの人は、私の捨てきれない生への執着を肯定してくれた。もう少しすがってみてもいいんじゃないか?
そう自分に言い聞かせ続けてもう何年経っただろう。私は今日この「扉屋」を開業する。