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彼と家



彼は最後まで彼自身のことを教えてくれなかった。

彼は私と一緒に駅から帰ってくれないまま終わってしまった。

白い布を顔で覆い隠されている姿を見つめながら彼との僅かな思い出を思い浮かぶ。

司君の照れ顔。困った顔。いたずらっ子な顔、無邪気な顔。

涙が止まらなかった。



悔しい。悔しい。悔しくてたまらない。

私は何もしてあげれなかった。

何も気づいてあげれなかった。








数時間後。


ベッドに腰かけたままスマホを見つめた。

明日は仕事に行かなきゃいけないとわかっているのに

何をすればいいのかわからない矛盾な気持ちになっていた。









カーテンから朝日が差してくる。

仕事の時間まであと少し。

精一杯の力を振り絞って仕事先に休む連絡をした。



太陽が真上に昇る頃、私は隣の司君家に向かった。


ピンポーン



特に用もないのに、足がそっちへ動く。

どうにもならない気持ちが残ったまま、家の人が出てくるのを待った。



中から司君のお母さんが出てきた。

彼女も同じように寝れていないのだろう、目の下に大きなクマが出来ていた。


「こんにちは…」

「あなた、いらっしゃい椎名さん」


午前中に葬式が終わったのだろう。

家内は黒と白で溢れている。

奥に行くと司君の写真が真ん中に立て掛けられていた。

彼女は2階から四角い紙を持って降りて来た。


「これ、あの子から椎名さんへ手紙があったの。受け取ってほしいわ。」

「ありがとう、ございます。」


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