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楽しい一息
1年後。
私はうるさいセミが鳴く中、彼のお墓前に立っていた。
「来たよ。」
彼の前には鮮やかな花束が置かれていた。
私はコスモスだけの花束を置いた。
「勝手にさよなら出来ると思うなよ?ずっと想い続けてやるんだから。」
笑うと後ろから急に風が吹いてきた。
まるで、「意地悪だなー」って言われているようだ。
「またね。司君。
来年はチョコレートコスモスを持ってくるから、待っててね。」
来年も再来年も毎年通って『さよなら』なんて言葉打ち消していく。
墓参りの帰り、スポーツセンターに寄る。
中を覗くとお兄さん、お姉さんが嬉しそうに声をかけてくれた。
「椎名ちゃん、待ってたよ。早く対戦するわよ」
「はいはーい」
私は今日も楽しむよ。
司君、キミの分までありったけ楽しむよ。