時空管理レポート#2773 序論
時間の流れは不可逆なものである。過去があり、現在があり、未来がある。それらはかつて一方通行であり、たとえどんなに念じようとも、現在から過去に向かってやり直したり、現在のことを捨てて未来へ行くことは出来なかった。あるとき、数千年の昔より『タイムマシン』と呼ばれ想像されてきた時間に関する理論が、ついにまとまった。
更に時を経て、「タイムマシン」と呼ばれる装置は完成した。人類はついに時間の壁を越えたかのように思われた。だが、その夢は実用開始からわずか数十秒、『キリスト紀元1973年12月24日』に実験隊が時間移動した瞬間に、幻となった。ある時間を越えて過去・未来へと遡ることが非常に難しくなる現象――後に『時間断層』と呼ばれるようになる――が発生した。
時間断層現象のために、人類は掴みかけた夢を再び手放すことになった。そして、時間断層現象は人知れず大きな因果の変遷を発生させた。そう、ほんのわずかなきっかけで、これまで紡がれてきた歴史は大きく変わってしまった。幸せを得た者、不幸を得た者、家族を失った者、失った家族を再び得た者。歴史が変わった事実を知らないままであれば、それは問題となり得ない。だが、そのような事実があったと知ったとき、そして、歴史が変わったことに対抗できる技術があると知ったとき、人はどう動いたのか。
このレポートは、表裏一体の因果にとらわれたふたりの少女を追跡したものである。彼女らはともに幸せを望んだ。その幸せをかなえるための諸条件を明らかにする。
14年前に書き始め、その後完結させないまま長らく眠らせていた小説を、改稿しつつ投稿していきます。
作者は、pixivで二次創作小説を投稿しています。小説家になろうでは、一次創作小説を投稿していきます。