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7、俯瞰者

「俺がこの世界をループさせている。」

「それはどうして?お前が設定を変えられるなら、お前の思う通りに変えて仕舞えば良かったのに・・・。

お前は、俺に何をさせたかったんだよ。お前の事だけは信じていたのに。

俺が選ぶ相手が間違っていたから、ループさせていたのか? 俺がお前を選べばこんな事にはならなかったのか!」


「ごめん、そもそもの設定をルドは間違っている。俺はルドが誰を結婚相手としても構わない。ルドが断罪されて処刑されるのは見たくないけど、俺が気にしていたのはそこじゃ無い。

恋愛感情から行っている事ではない。

実は・・・マンデュルイ山の噴火が起こるのだ。」


「はっ?マンデュルイ山が噴火!?」


「ああ、そうだ。俺達が21歳の時に噴火する。それによってこの国は滅ぶんだ。

 溶岩が国中を埋め尽くし生きている者がいない不毛の土地へと変わる。勿論それだけ大きな噴火はこの国だけに留まらず周辺国も被害を受ける。

マンデュルイ山から半径500kmは死の土地となる。何も無くなり黒光りした大地だけがひろがる。


始まりの生の時、つまり俺がループさせる様になった始めって事だが、あの時もお前は皇女との結婚を選んでいた。

あの時は学園の卒業後に結婚式は執り行われた。両国の関係は良好。後は世継ぎを待つばかり。反王家を掲げるザーラックも潰した後だったし、アイラの特別な力も発現せず問題無くいつもの4人も問題を起こしたりも無かった。全ては順調だった。だが、突然噴火が起き全てが消えてしまった。


何故、俺だけ記憶を持ってループするのかは分からない。

それに、噴火の事だって、他の重要な事だってお前に伝えてやりたいって思っていても、話す事が出来なかったんだ。言葉や紙に書いても消えて伝えられない。

だからせめて、何か変えられないかと奔走もした。

お前が誰を選んでも結局は噴火で終わってします。


それに俺も一緒に記憶を持ちながらループしていても、この世界は完全再現ではないし、変えられない運命もある。


妹のメリッサは皆で遊んでいる時、お前の菓子を食べて死んだ。

だから毒に注意してお前の物に注意して何でも口に入れさせない様に注意した。でも、今回もお前がいる時にメリッサは巻き添えの様な形で、寝たきりになった。メリッサは毒による死だけでは無くこの物語上死ぬ運命にある。その毒でお前が害された事は一度も無い。


そしてお前はそれを重い十字架として背負い俺を気遣う様になる。お前に罪悪感を埋め込む為のリィチュアルの様だ。俺は毎回自分の無力さに苛まれる。


俺だって色々試した。お前みたいにな。

最初は全てをお前に話そうとした、でも言葉が出ないんだ。比喩じゃ無く伝えようとするとどこからかロックが掛かる。手紙を認めた事もある。木に彫って伝えようとした事も、ゲームの中心であるお前に伝えようとすると別の力が働く。


お前が狙われる暗殺者を後に討伐する時のアジトだって知っていた、だから襲われる前に踏み込んだ、でもそこは何も無かった。


俺が知っている知識を利用しようとすると過去の情報が上書きされてしまう。


お前が言っていた通りだと思う。何度目の生だとしても努力をしない者には得られない結果がある。


アイラがお前に裏切られたと感じて復讐を決意する、そしてその時アイラは特別な力が発現してお前を見事討ち取った事もある。」


俺が知りうる事実をなるべくルドに伝えようと思った。今までは伝えられなかったのに、伝えられる今を逃してはならないと思った。


メリッサの死、4人とアイラの登場、俺、お前が皇太子である事、山の噴火、反対勢力、

これはこの世界の決定事項の様でどう足掻いても変えられなかった事。


「おい、落ち着けよ! どうしたんだよ、何に焦っているんだ!」


「ごめん、気が焦って。

 今まではどんなに頑張ってもお前に伝える事は出来なかったんだ。でも今回の生で初めてここまで伝える事が出来たからなるべく沢山の情報を伝えたくて。焦った。

多分だけど、今回お前が自力で俺の存在に気づいたから、情報を共有できる様になったのかも知れない。


このゲーム上のルールとして存在する『努力しない者には何も変える事は出来ない』と言う事なんだと思う。

若しくは、大幅なゲーム設定の変更があるか・・・。俺と言う存在が消えて、リセットなされなくなるか。


まあ、毎回ゲームはお前が前世で知っている情報が殆どだ。

ここで生きている俺達の問題は山の噴火により、物理的に生存者0ゼロと言う現実をどう回避するかと言う事だ。


俺は記憶の継承しか出来なかったから、山の調査に関してお前にこれから寝ずに伝える。

噴火を止められなければ、どの道未来は無い。お前の18歳までの生が21歳になるだけだ。


俺は情報収集でその時は近隣諸国に行っていたんだ。

物凄い轟音と共に世界が熱くなり真っ赤な世界、それから煙とイヤな臭い人々が逃げ惑い地獄絵図と化しても近づく事も出来なかったから。炎が立ち昇り何もかも焼き尽くしてしまった。放心状態だったが憤った、俺の世界を返せ! 元に戻せ! 泣き叫び踠き苦しみ気を失った。


すると俺は4歳の子供に戻っていた。


数度繰り返すうちに予兆がある事が分かった。

俺達が18歳になる頃からいつも始まる・・・予兆が。


何て伝えたら良いのかな?

ある日突然景色が変わるんだ。

上と下でズレているって言うの?

あー、本当何て言えば良いんだか。亀裂が走る、そんな感じだ。


それからここにあったはずの古屋がない、とか森に住んでいる獣が減ったとか、お前が飼っているニャビットがいなくなるとか、お前の伴侶が変わるとか、井戸の水が枯れるとか、大量の鳥の死骸があちこちで見られるようになるとか、街の人間の顔が数日間のっぺらぼうになって目も鼻も口も無くなっている。数日が過ぎると何事もなかった様に顔を持った人間に戻っている。空に見た事ない色が走る、そしてその様子を見ていると、巨大な手が空の先から出てきて、こうグルグルと掻き混ぜる仕草をする、そうして2〜3日すると異変があちこち始まりこの国には終末を迎える。


平穏だった街の様子がどんどん変わっていく、それは徐々に侵食される様に。


何度も繰り返すうちに分かった事は、俺にはリセットする力はあっても何かを変える力は無いって事だ。それでもいつか何かの役に立て場と情報収集はしてきた。


ごめんな。俺に力があったら何とか出来たかもしれないのに。」


「クロード、俺こそごめん、ずっと一人で抱えて辛かっただろう? 疑ったりしてごめん、ごめんな。ずっと一人で戦ってたんだな、ごめん。傍にいたのに気付くのが遅くなって本当にごめん。」

「ううう。ぐぅぅぅぅぅぅ。はっくぅ。」


落ち着くのを待ってヘラルドはクロードに話しかけた。

「俺さ、勘違いしてお前の事抱けば、この状況を打破出来るんじゃねーか、とか思って、半分本気でお前の事抱くつもりだったよ。ははは。」

「ははは。そうだな、さっきはそんな雰囲気だったな。

 まあ、俺だってそれでこの世界が変わるなら、何されたって構わないさ。」


「まずはこの事を日記に残せるかも試さなければ。

 今まで気づかなかったのに今回気付けたのは、デジャヴと言うには色々な事が生々しかったんだ。

ループに気づいたのもそうだったし、この物語上で俺の態度によって相手の態度や関係性が変わるのにお前だけはいるも変わらなかっただろう?

でももし今回もリセットされたとして俺が次回気付けるかは分からないし、お前が俺に話せるレベルが変わるかもしれないだろう?

極力多くの情報を書き残さなければ。」


「そうだな。俺の書き残した物は綺麗に消えちまうからな。

ただ不思議なのは、何度も繰り返される世界の記憶が残っているって事だ。本来なら10回も前の事ならあやふやな事があってもいいと思うのだが、詳細に覚えているんだ。

きっとこれにも意味があるんだろうな。」

「無駄に終わるかもしれないが、書き記そう!お前の記憶を教えてくれ!」


たかだか二人の人間が思案しても大自然の山の噴火なんて制御のしようも無い。


前世の事を考えればクロードが話していた事はバグだろう。

そのバグを直すために噴火を起こしているんだろうか?

システムの何がバグってるんだろう?

だって根本的な問題だろ?


プレイヤーの思い通りに行かないからリセットしてやり直しているのかと思っていたけど、違うんだろうか?


もっと思いもよらない事が何処かで起きているのだろうか?

しかしこのゲームは俺達が自ら考え行動した事には寛容だ。つまりプレイヤーの思い通りに行かないからリセットと言う案は無いだろう。


となると、やはり俺達の21歳以降の世界に進めない何かがあるのだろう。

どう頑張っても進めないから、破壊しているとか?


「クロード、俺 マンデュルイ山に登って来ようと思う。そこに何もないかも知れないが、この現状を打破するには今までして無いことに賭ける、又はそれによって次回の俺達の選択肢を広げたり絞れたりするかも知れない。

兎に角、やれる事をやろうと思う!」


「俺は良いけど、お前 そんなに時間取れるの?」

「まあな、一か八かだけど陛下に相談してみるよ。山が噴火するかもって噂があるから内密に調査したいって、これで皇太子の職務怠慢を取られたら取られたで仕方ない。

その時はお前に本棚に書類だけ隠して貰うほかない。


でも、18歳でリセットって21歳までまだあったよな、少し早くねーか?」

「ああ、勿論 もう少し先までの時もあったけど、お前が廃嫡されると大抵精神のバランス崩しちゃうんだよね。信じていた者に裏切られたり、それで早まったりするだけで順調な時は噴火が起こり始めてからにしてたよ。日記に続きがあるかどうかはお前が書く余裕があるかないかだな。

ここ最近はアイラを選んでないから廃嫡はなかったし、人間関係も悪くなかったよ。だから20歳はいってたな。ただ、反対勢力は動きが掴めなかったりで、その討伐に出ていたりもしてたんだよね。だから誰にも見せられない日記だから残せなかったか、別の場所に隠してあるとかそう言う事じゃねーかな。」


「なるほどね。リセットの仕方は話せるの?」

「パクパクパクパク。分かった?」

「うん、駄目だって分かった。」


「しかしさー、実際問題 マンデュルイ山に行く許可が出たとして、誰を連れて行くんだよ。何かを掴んだとして、お前が行くなら護衛に最低でも10名位はついてくるだろう?

秘密は保持出来るか?」


「分からない。でも何かが掴めるかも分からないしな、少しでも糸口を掴みたいからそれを最優先させる。困った事態になったらその時に考えるさ。

俺達には前に進むしか道は無いのだから。」

「おう、そうだな。 俺はどうする? 一緒に行く? 後からついてく?」

「一緒に行こう。一緒にいるとボロが出そうだけど、お前にそばにいて欲しい。」

「ん。」



陛下に許可を貰い、マンデュルイ山の調査に向かった。

護衛10人とヘラルドとクロードの12人で出発、山の麓に到着 周辺聞き込みと周辺調査に出た。3人1組で4チーム作り 情報収集。


事前にクロードが集めていた情報を纏め、周辺の家屋などのあるなしもチェックさせた。

一番重要な所はヘラルドとクロードのチームで向かう。


木々が生い茂り陰鬱とした雰囲気で足を進めるのに気合を入れないと立ち止まってしまう。

「殿下、嫌な雰囲気ですね。しかしこれが噴火と関係があるかは分からないですね。」

「そうだな。この鬱蒼としたものが元々だったものか区別がつかないからな。」


嫌な汗が流れる、蒸し暑く頭がボーッとしてくる、「はー、はー、はー。」息が上がる。

歩いて行くといきなり視界が開けた。目の前には湖があった。爽やかな美しい水を讃える湖では無く、近づけば足を取られ二度と水面には上がれない、そんな感じの湖だ。


『ボコッ。』


ビクッとして音のある方に頭を向ける、湖面には何も無い。


『ボコボコッ』


「うわぁ。」


護衛のヤンスが声を上げた。

「どうしたのだ?」

「い、今 湖面に髪の毛の様なものが浮いていた気がしたのです。」

「どこら辺だ?」

「あの辺りです。」


「何もないな・・・。」

「わ、私は見たのです!」

「ヤンス、お前を疑ってなどいない。それに我々は手がかり、情報を得るために来ているのだ。些細な事も注意して見ていてくれ、先程の髪の毛も疑ってなどいない。それが何かが知りたいだけだ。分かったな?」

「取り乱して申し訳ありません。」

「気にするな、ちょっとこの場所は精神を狂わす何かがあるのかもしれないな。」


「まずは湖の周りを調査しよう。あちらの方向が山頂に向う道になるだろうから、こちらから少し遠回りしながら見て行くか。」

「殿下、あちらをご覧下さい。歪みが御座います。」

「確かにあるな、これは幻影なのだろうか?我々を阻む仕掛けなのだろうか? 目の前の水は水なのだろうか?」

「掬ってみますか?」

「そうだな、後で成分が調べてみよう。引き込まれるといけないから手を繋いで試そう。」


「ああ、じゃあ俺が取る。ルド手を貸してくれ。」

「クロード様 私がお手伝いします!」

「ヤンスは私の手を持て。」


「ヨイショっと。」

「大丈夫か?」

「こんなものか?」

「ああ。」


言ったそばから水が消えた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」ヤンスが叫んだ。二人は無視した。


「これは、水が消えたのか、消されたのか? 元々この湖はあるのかないのか?

幻 か? だがここに入る勇気はないな。何か投げてみて反応を見るか?」

「ああ、そうだな。」


拾ってきた木の棒を投げてみた。木の棒は音もなく湖面に吸い込まれた。


「これは幻影だな。やはりここは誰かの中なのか?

 ここはもういい、先に進もう。」

「そうだな。」


「目的地に着けるかな?」

「相手がそれを許容すれば、或いは。」

「兎に角進むしかないか。」


歩いて行くと突然道が開けた。その示される道に沿って歩く。


これが誰かの『思い』の中だとするならば、終着点はないのかもしれないな。

しかしその思いとは裏腹に礼拝堂の様な建物があった。

振り返るとヤンスがいなかった。慌てて探そうとすると、声が響いた。


「心配するな、後で合流させてやる。」

「貴方がこのゲームの創造主か?」

「違う。ゲームを作ったのは別の人間だが、今 この世界を動かしているのは私だ。」

「つまりはこの世界は貴方の頭の中という事か?」

「そうだ。」

「何故、この世界は繰り返す? 何故噴火で終末を迎える?」

「・・・。」


「この世界は 貴方がプレイしているのか? 私自身が生きているのか?」

「私がプレイしているとも言えるが、お前が生きているとも言える。」

「私は私の人生を全うしたい、それは可能だろうか?」


「ゴニョゴニョ。」

「すみません、聞こえませんでした。」

「それは無理と言った。」

「何故ですか?私はこれまでの人生も自分に出来る事を精一杯してきました。

私は転生者です。何故このループから抜けられないのですか?」

「お前が転生者? 何処から来たのだ? ゲームについて何か知っている事があるのか?

お前の意識が私・・・いや まさか。

残念だがお前は出来ない。このループからは出られない。何故なら、

私はお前が見たいからだ。懸命に生きるお前が見たくてループさせているのだ。

そしてこのゲームには続きであるその後がないからだ。 故にループする。」


「貴方は誰なのですか? 神ではないのですよね? 神がプレイヤーっておかしいし。

せめて噴火でこの世を壊す事を止められないのでしょうか!

私は天寿を全うしたいのです!」


「この世界を止める手段が二つある。

一つは私がプレイせず、やめる事。

もう一つはこの世界に介入する事をやめる事だ。」


「ループに気付いてから日記を書く様になった事を考えればもっと昔からループしていたのですよね? もう、解放して下さい、お願いします!!!」


「・・・・・・・・・・・・。」


グニャリと視界が変わった。揺れて漂って 陽炎にような。


「「うわっ!」」


確かに山にいたはずなのにそこは平原だった。

地面が波打つ。


「なんだ、これは!」

「どうなってる!?」


今度は海のど真ん中に立っている意識してしまったら、海の底まで落ちてしまいそう。

恐怖を覚えた。


「お、おい、これ。」

「駄目だ! 言うな。言わないでくれ。」


海の中には見た事もない生き物がデカイ口を開けて迫ってくる。

しかし自分達に出来ることはない。


「「くっ!」」


歯を食いしばった。


目を開くと雪山に立っていた、吹雪く中互いを見つめながら疑問をぶつけようとすると雪が積もり互いが凍って行く、手を伸ばしたい! クロード!


ガラッと変わって天空に立っている。ただそこに留まっている。

体に着いていた雪も氷ももうない。では、これは幻影なのか?

眼下に広がる街並み、遠くまで見渡す事ができる。

最早、自分達が何もないところに立っている事すら忘れていた。


ここは何処だろう?我が国だろうか?


またグニャリと視界が揺れて切り替わった。


先程の山に戻って来た。


二人とも汗をびっしょり掻いていた。


「すまない、動揺した。

 あと一度、あと一度 お前の人生を見せてくれ。もう一度ここへ辿り着いたなら全てを話し、お前達を解放しよう。但しクロードは制約させてもらう。」


「待ってくれ、それはどういう・・・」



俺達はまた4歳に戻っていた


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