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4、アイラ フォン ハイエンナ男爵令嬢

私の前世を思い出したのは8歳の時。

貧乏で食べる物は、母さんがどこからともなく貰ってきていた。

私の容姿は一言で言ってすっごく可愛い。

ふふん。


ストロベリーブロンドはホワホワしていて、つぶらな紫の瞳、唇はぷるっぷる。コテっと首を傾げると天使様に可愛い。

(天使に会った事ないけど)

でも手を見ればカサカサ、骨張った指。胸は普通より少し大きいかな? 服はボロボロ。

鏡の中の私は幸せそうなのに現実は貧乏な見窄らしい娘。


お姫様を夢見てるけど、現実に戻ればお腹が『ぐぎゅぅぅぅぅ』となって近所の子達に笑われる。

最初は皆にイジメられていたけど大きくなるに従って周りの男の子達は少し優しくなった。

女の子達はますます意地悪になった。可愛い私に嫉妬しているのね。


男の子達は他の子に見つからない様に、食べる物をくれる様になった。

ある時その内の一人にキスをされた。ビックリして突き飛ばしてしまった。すると怒った男の子は私を力の限り叩いた。吹っ飛ばされた私は家具にぶつかり意識を失った。


頭から血を流し倒れた私を見て男の子は殺したと思って逃げ去った。


目を覚ますと頭に包帯が巻かれ、布団で寝ていた。部屋には誰もいなかった。

見渡せば、8年間生きてきたいつもの風景だ。


「つっ。」

私どうして・・・。

そうだ、アイツにキスされて・・・。私のファーストキス、終わっちゃった、ロマンティックじゃなかったなー。王子様の優しいキスが良かったなぁ〜。 涙が出た。


暫くすると母さんが帰ってきた。手には食べ物を持って。

「大丈夫? 心配したわ、帰って来たら血を流して倒れているんですもの。

 何があったの?」

「近所のロンがパンをくれたの。そしたらキスして来て驚いて突き飛ばしたら、ほっぺた叩かれて家具にぶつかって、目覚めたら布団の上だった。」

「そう、母さんがロンの家には抗議しておくわね。でも、この事は秘密にしなさい、分かったわね。」

「はい、母さん。」


それから夢で見たもののことは母さんには言わなかった。なんだか母さんの様子がおかしかったから。


夢の中で私は見たことも無い服や家具やなんかに囲まれていた。

顔は今の顔とは違うけど 何となく自分だと言う確証があった。


掌に乗る小さな四角い物を嬉しそうに見て、何かを打ち込んだり、その箱と話したりしていて不思議だった。夢の中の私は愛蘭と呼ばれていた。アイラン 今の名と似てる。


愛蘭が夢中になっているのが、大きな画面に綺麗な絵が出て来て手元にある物で操作するとお話が進んでいく。見た事ない物ばかりで理解が追いつかないわ。

しかし彼女の目を通して画面を見ていると驚いた! 画面の中に私がいたのだ! 名前もアイラ。ストロベリーブロンドを艶々に靡かせて素敵な男の子達に囲まれている。

今の私とは全然違うけど、あれは私だった。


混乱しながら見ていると、愛蘭が

「あーあ、私もアイラみたいになりたい! 皆に愛されて幸せよねー。」

と言った。


私が幸せ? ううん、違う。あれは同じアイラでも私じゃない。でも、顔は私だった。

何これ、どういう事? 私はだれ?


カッチカッチカッチカッチ、カチカチカチカチ、カチ。ピースが嵌った。


思い出した!この世界は『真実の愛 負けるなアイラ 悪役令嬢ヴェロニカの魔の手から真実の愛を守れ! 目指せ人生大逆転!』乙女ゲームの中だ!!!


って事は私は主役、主人公アイラなのね!


ここまで思い出すと脳内でスルスルと前世が再生されていく。


私はもうすぐ男爵のお父さんが迎えに来てくれるんだわ。そしたらこんな生活とはおさらば。いつ迎えに来てくれるんだっけ?ゲームを脳内で再生させていく、そうだわ! 学園に入学する3年前、つまり10歳の時だわ。つまり後2年はこの生活をしなければならないのね。


アイラは本物の王子様と結婚するんですもの。その準備をしなければならないわ。

えーと、王妃様になるなら勉強もしなくちゃよね? お父さんって人にだって『3年でここまで出来る様になるとは天才だ』って言われてたし、よし どこで勉強って出来るのかしら? うちは貧乏だからお金がかからないところよね。


「母さん、これから教会に行ってくる。」

部屋を見ると、いつもより豪華な食事があった。不思議に思ったけど出かけている様なので、軽く摘んで家を出た。

「いけない、何か教材を貸して貰うなら袋が必要よね!」


家に戻ろうとすると、ロンがいた。咄嗟に隠れて様子を見ていると母さんにお金を渡して鍵を受け取っていた。そしてロンは私の家に歩いて行った。

呆然として、力が抜けて尻餅をついた。ガクガク震えている。


少しするとロンが家の中から出て来て母さんに文句を言って、お金を取り返し帰って行った。母さんも家に帰って行った。


どう言う事なの。母さん! 私がこの間あんな目にあったのにロンに鍵を渡すだなんて!

そう言えばあの日から少しオカズが増えた。怖くて家には帰れず、教会へ行った。


教会で呆然としていると神父様が話しかけてくれた。

母さんとロンの事を話すと気の毒そうに見た。


でも私にはあの家を完全に出る事は出来ない、だってお父さんが引き取りに来るんだから。

でもこのままでは母さんに売られてしまう。


「あの、神父様。私を2年ここへ置いて貰えませんか?勉強もします、お手伝いもします。

今は怖くて家に帰れないのです。2年だけお願いします!」


懇願した。

「お名前は何と言うのですか?」

「アイラです。」

「アイラ、家の人にここにいると連絡しなくて大丈夫ですか?」

「はい、連れ戻されたくありません。」


「ふー、では部屋へ案内しましょう。この部屋が貴女の部屋になりますよ。」


小さな部屋は私が2年間身を隠すには十分だった。色々説明を受けて暫く部屋でぼーっとしてた。母さんは綺麗な人だ。偶に持って帰ってくる食材はどうやって手に入れているかも薄々気付いてた。あんなに綺麗だと周りの男だって放っては置かない。

私にしてもそうだ。母さんが売ろうと思えばとっくに売られていたのだ。

今まで貧乏でもあの家で生活出来ていたのは母さんが守ってくれていたからなんだよなー。


でも、前世を思い出してしまうと母さんを恨んでしまいそうになる。

「母さん・・・。」涙が出た。


「いつまでもメソメソしていても仕方がない。うちは貧乏でどうしようもなかったんだ。

今まで頑張って育ててくれたし、あの時だってロンに鍵渡したけど、相手は変態オヤジの可能性だってあった。でも、そうはしなかった。

多分、男爵が迎えにくる時、母さんにお金をあげると思うから、それまでの辛抱!

私がいない方がきっと楽になるよね? よし、神父様に勉強を教えて貰おう!」


教会での食事は母さんの作るもの程美味しくはなかったけど、普通に満足できる量だった。


勉強は何と言っても私は転生者。順調に様々な事を覚えて行った。

「これを使う時がくるのだからしっかり覚えなくちゃね。」


そしてあっという間に2年が過ぎた。

私は 時々母さんの様子を見に行っていた。

母さんの事も心配だったが、男爵が来た時気づかなかったら何の意味も無いからだ。

それからコッソリとハイエンナ男爵家も探した。


あちこち聞いて目立つと不味いので髪の色を隠し変装をして聞いたりしていた。


ゲーム設定通り、お父さんこと男爵は本妻との間に子供がいなかった。

聞き込みをすると、昔 『旦那様の子が出来ました。』と言って子供を連れて来た事を思い出し、探させていることが分かった。


特徴はピンク頭の目が紫の女 年は10歳前後。

酷い、言い方。言い方って大事だよ。

それ聞いただけでお父さん子供として私に愛情ないなって気づいちゃう。


いやいやいやいや。

うん、侍従の人が簡略化しただけだよね、そうきっと、そう!

だって私 主人公だし! これから人生大逆転するんだもん。

私は今までの分も幸せになるんだもん。


頃合いだ。

「神父様、長い間お世話になりました。母さんが心配なので家に帰ります。そして私が出来る事を手伝ってあげたいと思います。それに私も大分大きくなり出来る事が増えましたので、母さんが楽できる様に働きたいと思います。」


「今まで、よく頑張りましたね。神はいつも貴女の側にいます。きっとこれからも貴女を見守ってくれるでしょう。母上が変わっているといいですね。でももし辛くて我慢出来なければいつでも戻って来なさい。神はいつでも救いの手を差し伸べてくれています。」


「有難う御座います、神父様。お世話になりました。」


そうして家に戻った。母は最初驚いていたが、「お帰り。」と言ってくれた。


「母さん、よく聞いて私のお父さんはハイエンナ男爵って言う人?」

「何故知っているの?」


「以前ね男爵様の家でメイドをしていたの。それで貴女を身篭ったんだけど、奥様に知られて家から追い出されたのよ。貴女には苦労もかけて、怖い目にも合わせて御免なさい。」


「うん、もう売る様な事しなければいいよ。」

「やっぱり気付いていたのね。」

「うん、偶然見ちゃったの。」

「あの後貴女が消えて後悔したわ。本当に御免なさい。」


「・・・。あのね、街を歩いている時噂を聞いたの。その男爵って人が子供を探しているって。その特徴がピンク頭の紫の目の女だって聞いて、もしかして私の事かなって思ったの。」

「そうだったのね。男爵様が探しに来たらどうするの?」

「お父さんって人の所へ行く。」

「・・・そう、だから戻って来たのね。母さんは貴女を売ろうとしたんだものね。」

「うん。そしたら母さんも男爵からいっぱいお金貰って楽出来る様になるよ。ねっ!」


「うん、そうね。ふっふぅぅ、ううぅぅ、ごめんなさい、ごめんなさいね。」

母さんは泣いた。

それはどう言う意味で泣いているの? 聞きたいけど聞けない。


それから程なくして男爵家の執事が家の扉を叩いた。


母さんと二人で屋敷に向かう為の服を用意された。

これはきっと事前に調べて見窄らしい形で敷居を跨ぐなと言う事だろう。男爵より男爵夫人に上手く取り入れられるかで私の人生が変わるかも知れないから、ちょっとした仕草も見落とさない様にしよう。


ゲームでもここら辺の事でて来てくれてれば手っ取り早く気に入られる様に出来たのに、お話は養子に入ってからだから何が正解か分かんないよ。

でもきっとここが正念場だよね。


屋敷を訪れるとお父さんと言う人 男爵とその夫人がいた。母さんは小さく縮こまっていた。

「その娘があの時連れて来た赤児か?」

「はい、旦那様。」

「名は何と言う?」

「アイラと申します。」

「マルミエ、どうだ? この娘を家に入れても良いかい?」

「・・・。仕方ありません。私が貴方の子を持てなかったのですから。正式に貴方の子として迎えましょう。」

「ホッ。そうか、ではこれでお前はこのうちの娘となる。それで良いな。」

「あのー、男爵様、私この家で精一杯頑張ります。ですから母さんに少し援助をして貰えませんか?正直 食べる事にも困っていて。お願いです、母さんを助けてあげて下さい。」


「厚かましい娘ね。これからお前にだってお金が掛かるっていうのに。お前がこの世に存在している事だって苛立たしいっていうのに。」

「申し訳ありません、そうですよね。私達の存在が疎ましいのですよね。ご迷惑をお掛けしてすみません。私達やっぱり場違いなので帰ります。」


席を立ち頭を下げて玄関へと向かった。

失敗か? でも、多分これで正解だと思う。子供が必要だから態々私を探したんだろうし、ゲームでは私は養子になっているんだから きっと大丈夫!


思った通り後日また執事が家に来た。その時には多少のお金が包まれていた。


「じゃあ、母さん 私行くね。無駄遣いしない様にね。今まで育ててくれて有難う、元気でね。バイバイ。」

「アイラ、奥様は怖い人だから気をつけるのよ。体に気をつけて。元気でね、ゴメンね。」


私は母さんと別れてハイエンナ家へ養子に入った。

ハイエンナ夫人とは今後どの様な距離感でやっていくか見極めが必要だ。もう、家に入ったからにはあまり波風を立てたくない。仲良くなんて勿論無理だろうけど、あまりギスギスはしたくないなー。


「こちらへ来なさい。これからは私をお父様、夫人をお義母様と呼びなさい、分かったね。」

「はい、お父様、お義母様 これから宜しくお願い致します。」

「アイラ、今まで大変だったと思うけど、これからは本当の母と思って甘えて良いのよ。」

「そうだぞ、本当の両親だと思って過ごしなさい。困った事があったら言いなさい。」


面食らった。この間と全然違う。

「あのー、この間の失礼な態度を怒っていないのですか?」

「何を言っている? 失礼な事なんて何も無かったぞ。お前は丁寧な挨拶をして帰り本日正式に迎えたのだ。素晴らしい娘に成長した。」

「ふふ、前回は緊張して忘れてしまったのかも知れませんね。私達夫婦には子供が出来なかったから、こうして旦那様と血の繋がる子を迎える事が出来て嬉しいわ。」

「はぁ、有難う御座います。」


何だこれ? 前回の話が変わってる。えっ?これが貴族って言うものなの? 奥様も前回と雰囲気が全然違う。どうなってるの?


「貴女の荷物を見せて貰ったけど、着る物が足りないわね。後で一緒に買い物に行きましょうね、良いですわよね?」

「ああ、行っておいで。当座は普段着を、マナーが身に付けばお茶会へ行き、年頃になれば夜会もあるしな。それから優人学園に通う事になるからしっかり勉強しなさい。」

「貴方ったら、フフ あまり難しく考えなくてもいいわ。まずはこの環境に慣れなくちゃね。」

「有難う御座います、お義母様。」


何か別人みたい・・・。そう、本当に別人みたい。

!!! ゲーム補正か!


やっぱり私が主人公なんだわ。きっとどこか選択を間違えてもシナリオ通りに進もうと勝手にするのよ。最強じゃない、私は私らしくあればいいのね!

きっと ゲームの通りになる。 私は今まで苦労して来た分幸せになれる!

私は皆に愛される、何もしなくても愛されるけど私にはゲームの知識があるわ。攻略者達がどんな言葉を望んでいるか知ってる。何処でイベントが起こるかも知ってる。


イケメンに囲まれて 皇太子に愛されてこの国の王妃になるの。

それがこのゲームの物語。有難う神様!

神様ってやっぱりいるのね。

私の人生、優人学園生になれば楽勝モード。

きっと勉強もダンスもマナーもやり過ぎなくていいのよね?

だって皇太子は私の平民的感覚を愛する訳だし、きっとゲーム補正で何とかしてくれる。


早く3年経たないかなぁ〜、楽しみだなぁ〜。


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