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3.マルクス君

マルクス君、有難う こんな日が来るなんて。



「ユリアンちゃん、今日もとても綺麗だね。君が微笑むとこの愛らしい花も嫉妬してしまいそうだよ。」

「マルクス様ったら。恥ずかしいですぅ〜。」

「フリーダちゃんも、さくらんぼの様な可愛いホッペだね。」

「マルクス様は いつもとても素敵です。今度のお休み一緒にお買い物に行って頂けませんか?」

「勿論だよ。素敵なレディと一緒出来るなら何処へでも行くよ、ハニー。チュッ」

「「「キャー!!!」」」

「私もご一緒したい!」

「私も!」


どうやらマルクス君は、クロードの書いた小説の王子キャラクターをまんまやっているみたいで、俺は正直アホか!と思っていた 歯の浮く台詞を乱発させていた。

うーん、あれって結構な18禁仕様だった気がするんだけど、大丈夫かー?


と言う事で、俺に迫って来る女性は激減した、が、ゼロでは無い。

何故減ったかと言えば、基本クラスの人間が多かったからだ。高位貴族は皇太子に迫って変な噂が立てば、親の顔に泥を塗る事にもなるし、後々の自分の縁談にも支障をきたす。

だから、あんな無理やり迫るなんて事ははしたないのでしない。

俺は王子だ、俺の隣に立つ者はいずれ王妃になるのだ。そんなスキャンダルはお断りだ。


基本クラスの人間は下級貴族が多いので、新たな話題に飛び付いたのだろう。


サロンでシオンとエスティローズとお茶をしていると庭にマルクス君を見つけた。

お茶を飲みながら何となく見ていると、所謂木に壁ドン? していた。


「アンナちゃん、こんな所に呼び出してどうしたの?」

「マルクス様、私、私 マルクス様の事好きになってしまったのです。私だけの恋人になって頂けませんか?」

「可愛い小鳥ちゃん、有難う。僕も君が好きだけど、君だけのモノにはなれないな。僕は皆を愛しているからね。」


「どうしたのですか、殿下?」

「ああ、あれはマルクス殿ですか。」

「ああ、こんな所で愛を囁き合うとは思わなくてつい目が離せなかったよ。」

「えっ? 愛を囁く? 」


つい3人でその後を凝視してしまった。


「酷い! マルクス様! これでも駄目ですか?」

そう言うと、その女性はマルクスの肩に両手を乗せ自分側に引き寄せキスをした。


「小鳥ちゃん、大胆だね。でも、そこまでさせた僕が悪いのかな? ゴメンね。

 やっぱりまだ僕は一人に絞れないな。アンナちゃんの事も皆と同じ様に愛しているからね。」

と言うと、「うわぁーん!」と両手で顔を覆って泣き出して走り去ってしまった。


「す、凄いものを見ちゃいましたね。」

「ああ、こんな所でやらなくても。彼女も噂が立ったら学園に来にくくなってしまうね。」

「わ、私、口づけなんて初めて見ました。」

そう言うとエスティローズは真っ赤になった。


「ふふ、私もだよ。」

「勿論、私もです! マルクス殿は 周りにいないタイプでもし同じクラスになったらどう付き合っていいか分かりません。」

「マルクス様は今はどちらのクラスなのですか?」

「私達のクラスにはいないな。」

「私のクラスにもいません。」

「では、普通か基本クラスって事だな。合同の授業はあったかな?」

「いえ、今の所は無いと思います。」

「少し、付き合いは遠慮したいね。」

「「はい。」」 ずーん、とした。


でもそれからもちょくちょくマルクス君に遭遇した。

ある時はマルクス君の頬を「パーン!」と打つ音がした事もあった。

あの男は何がしたいんだろう? ただモテたいのか? モテる為に歯の浮く台詞を吐いているのでは無いのだろうか?

王宮で帝王学の授業があったので、王宮の自室にいると呟いた。

「クロード、マルクスは何が目的なんだ?」

何処からともなく現れたクロード。


「んー、何だかあいつお前と同じ転生者っぽいよ。」

「はっ?」

「何か俺の本読んで、理想の王子やってるけど、特定は作らないじゃ無い? あれって、アイラを待っているみたいだったよ。」


そう、クロードには俺が転生者だと教えてある。そしてこの世界も方向性と、色々なエンドを迎えるパターンを。


「だからって何で軟派な王子キャラな訳?」

「あいつの呟き拾うと、アイラの取り巻きの一人にしかなれなかったマルクスは、この世界に転生したからには、モテモテな人生を歩みたい!が一番。そして、アイラが学園に入った際にフリーでないと取り巻きに入れない。

取り巻きに入ったら今度こそ自分だけのモノになって欲しいって。王子に入り込む隙を作りたく無いみたい。」


「なんだ、それ。方向性間違っているだろう。」

「多分だけど、アイラが好きになったのは歯の浮く台詞と王子だったから、だと思っているみたいだな。でも、最終計画が凄いのよ。アイラをメロメロにしてこっ酷く振ってやりたいらしい。」


「全く何を言っているか分からない。」

「まず今は 女性が喜ぶ言葉、態度を実戦で試す、そして来るアイラの為の研究をしている訳だ。アイラをメロメロにさせる為に奮闘中。

 で、自分にメロメロになったところで、今度はこっちが振ってやる!って言う事みたいよ。」

「頭が痛い。メロメロにする前に既にメロメロに見える。アイラの事以外頭にないのかよ。

マルクスとアイラの相手をすると考えるだけでも、ウンザリする。

 ゲーム上で尽くしたのはマルクスであってマルクスでは無いのに、何でアイラに固執するんだ?さっさと他の者と幸せになればいいだろうに・・・。

 それはそうと、そろそろアーロンが生まれるだろう?」


「ああ、そうみたいだ。」

「側妃が愚かな行動を取らなければいいが。」

「そうだな。」


「今日はもういいのか? チェスやるか? 疲れていたら一緒に寝るか?」

「んー、チェス1戦して、一緒に寝るか。」

「了解。何かつまむか?」

「ああ、そうしよう、」


決めた通りにした。俺は良い乳兄弟を得た。同じ布団に入ってぐっすり眠る。小さい頃からの習慣だ。あり得ないけど、こいつになら寝首をかかれても良いとすら思う。

勿論、ゲイじゃないよ。秘密を共有する同志と言った所だ。



いつもの様に3人でお茶をしているとヴェロニカが通りかかった。

「ヴィー、久しぶりだね。」

「ごきげんよう、殿下、シオン、ローズ。」

「何処へ行くんだい?」

「今、ピムスク先生の所から戻ってきたところですの。」

「時間があるなら座らない?」

「はい、お言葉に甘えまして。皆様はこちらで何を?」


「うん、ただお茶をしていただけだよ。教室で愛を囁いているから居た堪れなくなってね。」

「ええ? 愛を囁くとはどう言う事ですの?」


「ヴィーは知らない? マルクスと言う男なのだが、手当たり次第に女性を見ると口説かずにはいられないみたいなんだ。」


「・・・。実は 私 何だかその方に付き纏われて困っております。」

「付き纏われているだって? どう言う事なの?」


「よく分からない事を仰って・・・。

 『貴女はアイラより美しい』 だとか、『私がアイラの陰謀から貴女を救って見せる』 だとか、 その、『殿下を好きになってはいけない』、だとか 正直 何を仰っているかも分からないし、アイラさんておっしゃる方存じ上げないし・・・。

今は、見かけたら隠れる様にしておりますの。」


あいつは馬鹿なのか? いや、馬鹿なんだな。はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、残念。


「ヴィーは、他の方みたいに『僕の小鳥ちゃん』とかは言われていませんの?」

「やだ、気持ち悪い。ゴホン、ありませんわ。口説かれているって言うより、付き纏われているって感じですの。」


「ヴィー、私達は友人だ、困った事があったらいつでも言ってね。学年が違うから時間帯がズレてしまうけど、出来るだけ一緒にいよう。」

「そうだよ、そうしよう。登下校だけじゃなくてこう言った休み時間、昼食も極力一緒に摂ろう。」

「私、朝はヴィーを迎えに行きますわ。」

「皆様 有難う。うぅぅ。 私 少し不安だったのです。公爵家の者としてしっかりしなければって思っても震えてしまって。」

「大丈夫、皆 ついているからね!」

「そうですよ。おかしな男だけど、女性達に自分からは手を出していないみたいですし、いつでも頼ってくださいね!」

「皆・・・あ、ありがとう。」


肩に手を置いてポンポンとした。

ヴィーも手を握り、シオンも背中に手を当てた その温もりに安心感を得た。


俺とヴィーが一緒に帰っていると、植木の影からこちらを睨むマルクスがいた。

親指をギリギリ噛みこっちを見ている。

あっ!!! 

肩に鳥の糞が落ちた。


転生者 マルクス ・・・ ゲームで利用された腹いせに現世では自分に夢中にさせて振ってやるって、そんな事にだけ心血注いで良いのか? 他に現世でやる事は無かったのか?

大体 仮にその復讐が成就したとして、その後お前はどうするのか? それならいっそアイラを忘れて別の娘と幸せになる道で良かったのでは? 不毛だ。不毛すぎる。


それでもあちこちでマルクス君が女性と一緒にいる所をよく見かける。


「マルクス様!  今度のマグリーン様のお茶会には一緒に行って頂けますわね?」

「いいえ、マルクス様、私と一緒に行ってくださいますわね!」

「何を仰っているの? マルクス様は私と行くと決まってますの。おどきになって。」


マルクス君は 女性5人に取り囲まれていた。


「うーん、素敵なお誘いなんだけど、その日は別の用事があって行けないんだ。ゴメンね、サンスク協会の辺の花の様に美しい君達と共にお茶を飲みたかったんだけど。」

「マルクス様は 一体誰が本命ですの?」

「そうです。この際ハッキリして下さい。」


皆に詰め寄られている。


そうだよなー、普通そう言う感情になるよな。

アイラが男を侍らして チームアイラはなぜ上手く行っていたんだ?

好きな女の子の横に恋敵がいて、本命 皇太子とベタベタしているのをすぐ近くで見ているなんて拷問だよな。あの時のシオン達の気持ちはどうだったんだろうなー。


「酷い!」バシッと頬を打たれる音がして現実に戻った。


「ヴィー、マルクス殿は他の女性とヴィーとは明らかに違う態度だとは思うけど、やっぱり心配だから遠慮して言わないなんてしちゃ駄目だよ。もしヴィーが傷つけられたら、私を含め皆 自分の無力さを許せなくなっちゃうからさ。ね。

この後は寮に戻るの?」

「有難う御座います、ヘラルド様。

はい、皆を頼りにしています。 この後は寮に戻ります。」

「そう、じゃあ私は王宮だから、  ピエット 彼女を送ってあげて。 じゃあまたね。」


「殿下、例の者から連絡が来ました。」

「分かった。 これでまた一つ軍の改善が出来るな。」



あれから大分経った。

私達は今でもヴェロニカと時間が空く限りは一緒にいる。

時間とは不思議なもので、王宮でお茶会していた時よりも今の方が親密だ。

一緒にいる時間が増えるほど、重要な内容の会話ではなく他愛も無い会話で時間を潰す。


『昨日、メイドのルルが ブエックションってくしゃみをしましたの。そしたら壁に頭を打ち付けてその反動で後ろに倒れそうになったのです。そこに慌てて支えようとした執事のトーマスが腕を伸ばしたのです。でも間に合わなくて二人の頭がぶつかって結局二人とも倒れてしまって・・・。本当に驚くと声も出せないものなんですねー。』


なんて言っていた。

「あははは。面白いね! 最近聞いた話の中で一番だよ!」

「ヘラルド様?  大丈夫ですか? 何がそんなにおかしいのですか?」

「ヴィーはおかしくない? あんなに可愛い顔をしたルルがブエックションなんてくしゃみをしたのも面白いし、か、壁に頭ぶつけるとか、くっくっくと、あっはっは。だ、ダメだお、おかしくてお腹が痛いよ。一番はこんなにおかしいのに、キョトンとしているヴィーが一番面白いよ。」

「まあ、ヘラルド様ったら、意地悪です。私のどこかおかしいのですか?」

「レイトン、ヴィーは可愛いな。」

「はい、左様でございますね、ぷっ。」

「えっ? えっ? 何がですの? 何かおかしいですか 私?」


ヴィーは案外天然だなー。

今までも仲良く過ごしてきたと思うけど、マルクス君のお陰で親密度が上がった。

有難うマルクス君、君の明後日な方向の努力が僕達の友情を深める結果となったよ。


でも、ヴィーから聞いた限りでは、マルクス君はヴィーに不幸になって欲しくないって思っているって事だよなー。悪役令嬢になって断罪されない様にきっと助言をしているんだ。

でも、まだ登場していない人物の忠告しても気づけないしどうにもならないよねー。

残念


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