食わず嫌いだったおっさん
激動、そんな言葉が頭を過ぎる。僕は逃げた男、世界から逃避したけどカトーの関係者だったから気まぐれで誰かに選ばれただけのチート野郎である。
性癖はロリ大好きで寝取り趣味と、業が深い。
カトーにはせめてロリだけでも改善しろと何度か言われた。カトーはゲスだが法だけは守り、守った上でその隙間を掻い潜って悪さをする男だ。女もとっかえひっかえで倫理観なんて無い癖に、自由恋愛という大義名分で性欲だけは解消していた。
カトーは女性に特別執着することは無く、セックスという性欲解消法を主目的に行動しているとそう言って憚らない。気持ちいいからパコるんですよと臆面も無く言われた。そんな彼が今では一人の女性に御執心だ。何となく気に入ったと。曖昧な感覚っぽいけど、今までの他の女性と扱いがまるで違うと外野の僕から見てもそう思える。
カトーは自分で判断して決めた女性と一緒にいる。幸せそうで妬ましい・・・恨めしい。
今から童貞おっさんが自分の趣味とは外れた女性と子作りを行うという現実。
拒否は不可能・・・いや、カトーなら平気で拒否するだろう。僕には不可能なのだ。
その娘さんの亡くなった親や姉から託されて、しかもノーマに攫われたけど大丈夫だった感染していないという証明のためには、性行為を行い子供を産んで証明するのが一番ときたもんだ。逃れられない・・・境遇的に「他の男と致して証明したら?」とも言い出し難い。
「はぁぁぁ」
「観念しましょう女児愛好家、ナイリは良い娘じゃないか」
レイの言葉は正しい。正しいのが好ましいかと聞かれたら首を横に振りまくるが正しい。良い娘さんなんだよなぁ美人ではあるし、普通の男から見たら体付きも出るところは出ていて文句なんか無いのだろうさ。
・・・普通の男から見ればだけど・・・。
僕が特殊過ぎるという障害が大きな大きな壁となり、彼女を受け入れられないのである。
「まぁ仕方ないわね。私の下僕だけど払い下げる覚悟は出来てるわ」
リア様の認識では僕は既にナイリに払い下げられているようだ。ショックである・・・こんなの夢さ。
「ナイリが寝室で待ってるぞ?セーガに竜族特製の秘薬を与えよう。ほれ、頑張れ」
「そっか、男の人は勃たないと女をガッカリさせるものね。考えたわねレイ」
「昔、ダインの王族?との交渉で進呈したことがあるとさ、子供が出来すぎて内乱になったとか・・・」
後継者問題起きとるやないかい!効果がハンパじゃねぇ。
「何だよその怪しい薬は・・・そんなの必要ないから」
「「本当に?」」
ハモられた。二人とも疑いすぎだよ・・・自家発電できるのだから、相手が誰だろうが妄想力という翼で羽ばたけるさ。きっと、うん、多分。
「やっぱり飲むかどうかは状況を見て判断するよ」
秘薬を手に、いざ戦場へ!
寝床ではナイリがちょこんと座って待っている。様子からして緊張はしていないようで、むしろ早く早くと急かされている気分である。
種族的には純血獣人族の虎と人族の混血子孫らしく、色々ごちゃ混ぜということでもない容姿。ケモナーが見たら涎を垂らすだろうけど、生憎と僕にはその手の趣味がない。毛布が取り払われるとそこには全裸の彼女の姿が・・・純粋に綺麗だ。綺麗ではあるが、それがイコール性的興奮になるかと問われると無理ですとなるわけなんだけど、息子よ・・・マジで反応しないのかい?
「その・・・姉たちから男性の喜ばせ方を色々と教えてもらってますので、お任せ下さい」
17の小娘に丸投げするおっさんがそこにいた。彼女が頑張ったとして僕の息子に反応がなきゃ自分を責めるだろう。どうする?使うか?恥を掻かせないようにするために出来る事、薬に頼る・・・なんと情けない。まぁ、ガッカリさせてしまうよりはマシだろうと僕は薬を飲み込む。
セーガさん?聞こえます?セーガさんに伝達魔法で連絡するの初なので、どうなのかな?
ふぅ、聞こえてるよ。久しぶりだねクロー。ちょっと朝の運動しながらになるけど・・・何か用?
運動ですか、珍しいっすね。用ってのは帝都で獣人の魔法士部隊と接触したんですが、これが使えない奴等だったからセーガさんに色々武器を作ってもらえたらってのが一つ。もう一つがどんな魔物倒させたら魔力を引き上げられるのか、そのへんを調べてほしいなぁって・・・。
おぅふ、了解了解。獣人族はそんなに魔法が得意じゃないのか。
ですね、使えるけど魔力の吸収率が低いみたいで総量が余りないみたいなんです。
なるほ・・・どぉ、うん、了解。僕、獣人族の嫁ができたからその嫁を強化してハァハァ実験後にそっちも強化するってことで、それでいいかな?ハゥ!
ええっと、おめでとうございます・・・それでお願いします。さっきから何すか?運動激しすぎじゃ?
ハハハ、問題ないよ。おっさんになると腹が出てきてね・・・嫁に手伝ってもらって痩せようかと。
しかし、幼女大好きセーガさんが嫁ですか、式はいつ?
まだだよ、結婚は獣人族のしきたりみたいなやつでする予定。
そっすか、そんじゃ帝都で式を挙げません?ついでということで・・・。
そうしようかな。それじゃ今日一日で魔力上げられるだけ上げてみるし、武器も作ってみるから。
張り切ってますねぇ、迎えに誰か送りましょうか?
ああ、転移できるから要らないよ。三日後に宮殿前でどう?
じゃ、それで・・・ああ、カトーから聞いているかもですが、ガンドより強いのが生まれてくる可能性があるそうです。不味いですよねホント。
マジで?なんてこった・・・食わず嫌い克服して嫁まで手に入れた瞬間に最悪の情報だよ。
カトーも備えるために迷宮内でリンネと色々作ってるそうです。
僕も色々と考えてみることにするよ。クロー、手伝ってね。
俺がセーガさんに頼んでいるのですがね・・・まぁいいや、それじゃ三日後に。
「ナイリ、帝都で君と結婚しようと思う。駄目かな?」
「もう妻のつもりでしたけど」
「獣人族のしきたりは知らないから、ほら・・・式とかお披露目とかあるんだろ?」
「そうですね、してもらえるなら嬉しいです」
「じゃ、決まりだ。続きをしよう」
「もう・・・旦那様が元気すぎて、少し困ります」
ナイリに苦笑された。僕は悪くないレイが悪い・・・具体的に言うなら秘薬が悪い。
17歳は良い。今迄僕は何故駄目だと思っていたのか?思い込みってのは駄目だね。
「夜から凄かったけど、まーた朝からおっぱじめてるわよあいつ等」
「ふふ、秘薬の効果さ」
空き家を借りている私たちは、そこでみんなで朝食を・・・と考えていたけどあいつらが二階から降りてこない。理由は上からのギシギシいう音と艶のあるナイリの声で明白。
竜族の秘薬の効果に御満悦のレイはともかく、私としては複雑なのよ。払い下げたとはいえ、セーガの態度に変化が出たら・・・嫌ね、おっさん取られて嫉妬とか。それはそれとしてセーガがリア様と呼ばずにリアって呼び捨てにしたら、槍で突きまくってやる。
「リア、顔が怖いぞ。あんなおっさんでも取られたら惜しいのか?」
「ふふ、竜族が人化してる時は硬いのかどうか試しちゃ駄目かしら?」
「槍を握るなよ・・・食事中だぞごめんなさい」
素直に謝るレイを見て・・・私は思い出した。そういえばカトーから教育を頼まれていたっけ。
「新しい下僕は教育が大変になりそうね。躾って難しいわ」
「そっか新しいのがいるのか・・・ちょっと待て!もしかしなくても僕のこと?」
察しがいいわね。怯えるレイに優しく微笑むと私は告げた。
「カトーから教育を頼まれていたの。だから今は私が御主人様よ」
「ハッ、折角うざい主から逃れられたのにガキに躾けられてたまるか」
瞬間、特製の槍が唸る。竜族の頬を掠めて傷を作り出し、これなら人化中ならやれそうだと確信する。実験は大切よね?
「本当にやりやがった!嘘だろ?傷が・・・その槍おかしい!」
やったことにというより、傷を付けられたのが想定外だったようで驚くレイ。竜族は硬いから自信があったのかも。
「掠めただけじゃ貫けるか不明ね、もう一度試していいかしら?」
「いえ、結構です」
「あら残念」
なんだろう?反発されるのがちょっと良い。楽しい・・・そっか、セーガが幼女大好きな感覚もきっとこんな感じだったのね。