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そんなものは無いっすよ  作者: G・スー
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クローと嬉しくないハーレム

異世界から来た者は何故か盗賊に襲われている馬車を助けるのが定番なのだそうだ。


馬車というものが想像できない。今襲われそうなのは走行箱車で、乗っているのは俺達。クロー12歳、マム15歳、セツ16歳、そしてマム姫の本当の護衛ことラブコさん22歳。黒髪女性三人に金髪の俺という今迄経験していなかった状況、俺は若干困惑していた。困惑していたのだが盗賊に襲撃され、そんな思いは棚上げとなる。このままじゃ追いつかれそうな予感。カトーの夢物語だと誰かが助けに来てくれる展開になるらしいけど、周囲は魔法で探知済み・・・盗賊以外誰もいない。


「豹のハグレが盗賊化したのではないでしょうか?」


「姫様!冷静に分析している場合ではありませんよ!」


ラブコさんのツッコミにも焦ることなくこちらを見る姫様ことマム、もしや期待していらっしゃる?

賊の走行箱車は結構速い。追いつかれるのは時間の問題で、そして姫の期待の眼差しときたもんだ。ここは俺の出番のようですね。

座席から立ち上がると、走っている箱車から上空へ飛び出す。後方から追ってくる賊の箱車の車輪だけを風魔法で切り裂く、賊の箱車は止まったのでこれで終了。

流石に追ってはこられないはず、こんなもんだろうか?


俺達の箱車に逃げられ、盗賊たちは罵詈雑言の大合唱。豹族は足が速いらしいが、走って追いかけてはこないようだ。


ふわりと飛んで箱車に戻ると姫に微妙な顔をされた。何か間違えたか?もっと派手にやる方が良かったか?


「ええっと姫様?不満がありそうだけど・・・俺はダイン出身の人族なんだよ?盗賊でも他国の民を殺害したら面倒になるかと思ってこの対応なんだけど、姫様なら分かるよね?」


「盗賊なら問答無用で命を奪っても構いませんよ。光魔法でド派手に倒さなきゃ駄目じゃないですか」


「殺さずに放置すると他の人を襲う可能性が残るのですよ~、殺せる時に殺しましょ~」


姫もセツさんまでも過激だね。まぁそうか、放置しても害があるなら駆除するべきなのかもね。箱車を止めて魔力銃をホルダーから抜き後ろへ向けると、振り返ることなく撃ち放つ。魔力出力は上げてあるから、盗賊は箱車ごと消滅しただろう。銃という武器らしいが、砲という範囲を拡大した攻撃方法に切り替えられると教わったので試してみた。セーガさん、なんつー物を作ったんだ・・・。


「こんなもんすかね」


「若いのに凄い子ね・・・」


ラブコさんから賞賛されるが、俺が凄いわけでもない。この魔力銃とやらがおかしいのだ。

一定の魔力を変換して自動で収束させ、火力として放つ魔道具のような武器。セーガさんが気軽に作ったこれは、光収束魔法より簡単に発動が可能だ。一々変換や収束をイメージすることなく、自動的に行ってくれる補助装置。

問題は魔力総量がかなり必要であるということだけ。カトー曰く、竜種でも狩ればどうにかなるとのこと。竜種は魔法攻撃効き難い相手だから無理だってーのに、気楽に言ってくれる。


物思いに耽っている間も、箱車は順調に帝都へ進んでいく。ここはまだ田舎なのに、道の整備が出来ているところに帝国の凄さを感じる。

まぁそれでも帝都までは箱車でも二週間はかかるそうなんだが・・・。


つまりは二週間も年上の女性三人と一緒、これがハーレムってやつなのかもしれない。顔が緩みそうになる。


「姫様は繁殖相手に久しぶりに会えますね~」


「そうね・・・あんまり繁殖相手って感じがしないけど、10歳の頃に会ったきりですもの」


「お相手は第四皇子で~あの方ももう19、お年頃ですから~どう成長なされたか楽しみですね~」


「・・・・・・繁殖?」


「ええ、人族の魔法の凄さを帝都へ見せに行くのが本来の用件なんだけど、ついでに子作りもしてもいいかもね」


「早めに子作りして問題ないかと~」


セツさんの言葉に驚くも、会話に首を挟んできたラブコさんの言葉にさらに驚く。


「私も三人産みましたし、セツも一人作ったのでしょう?」


「14歳で発情しましたから~その時に頑張っちゃいました~」


何を言ってるんだ・・・意味が分からん。ええと・・・皇子が姫の繁殖相手、セツはなんか発情して既に子持ち、ラブコさんも既に三人も産んでると・・・なるほど分からん。


「つまり姫様以外は子持ち?」


「ああ、人族は結婚とかしないと子供を作らないと聞いたことがあります。クローはそれで驚いているのですね。獣人族では普通のことですよ・・・身分などが無い場合は結婚せずとも子を作るのです」


ラブコさんは結婚という制度は理解しているみたい。しかし、こっちじゃ気軽に作るというのか・・・。


「ウォーダは混血なのでそこまで発情しないのですが~、個人によっては強烈に発情するのですよ~。種族によって周期が違ったりします~」


「私は抑えられるけどね、そういう教育されてきたもの」


「御立派ですね、流石はナーガの姫」


何もかもが崩れ落ちる感覚、とりあえず知っておかなきゃやばそうだ。詳しい話を聞くと、ウォーダは14歳くらいから発情という繁殖を促す状態になったりならなかったりするらしい。

ウォーダはそんなもんだとか・・・他の種族はその種族により発情期間年齢はバラバラ。発情状態だからといって即子作りするわけじゃなく、相手がいるならその状態で作るのが望ましいそうだ。

両者の発情期間が重なる時に作るのが一般的らしい。


年上の三人のハーレム状態ってなんだっけ?一瞬で消し飛んだわ・・・。子供がいない姫様でも相手はいるらしいし・・・女性が発情すればある程度容易く抱けると、喜ぶべきか悲しむべきか。


「相性も大切なんですよ。好意がある相手なら問題ないですが、そういう人がいない場合は一番合う人を相手にします。勿論、相手が嫌なら子供は作りませんし」


「絶対子作り状態ではないと?」


「我慢はできるはずです。セツみたいな娘もいますけどね・・・」


色々疑問は解消され・・・てないな。産んだ子供はどうした?子供放置して帝都まで旅していいのか?聞くべきなんだろうな流石に。


「で、お二人の子供は?」


「街で成長していってると思いますよ」


「ウォーダの子はウォーダで育てるのです~」


皆でってことなのか?


「分かっていないようですね。私たちは群れで生活しますから、群れで育てるのですよ。結婚もしますが、するまでは産んだ子は群れの子として扱います。結婚相手との子が結婚前から存在するなら、自分たちの子供として結婚後に育てるわけです」


「じゃ、結婚相手じゃないのとの間にできた子はどーすんだよ」


「群れで面倒をみることになってますよ。そういう育児要員がいるので、まとめて世話をしてくれます。でも結婚は男次第ですからね・・・だから私は未だ独身なんですよ」


ラブコさんよぉ遠い目をするな・・・こっちがしたいくらいだわ。


獣人族は産めよ増やせよで、遥か昔には結婚という制度すらなかったらしい。ニヨブがナーガ族の娘と結婚し、その他の種族とも子作りは行った。でも行ったからといってそれが特別ではなく、結婚したナーガ族の娘こそが特別であるということらしい。


ウォーダは子供も二ヶ月で産んでしまうそうで、人と違い出産が早いらしい。ラブコさんも三人産んだが・・・一方的な片思い相手に発情して迫り、子作りだけはしてもらえたというだけの話らしい。結婚相手とは見做されていなかったと・・・何と哀れな。まぁ好きな相手との子は作れたと考えれば幸せなのか?何とも言いがたい視線を彼女に向けてしまう。


「ちょやめて・・・ホントやめてそんな目で見ないで!人族にまでそんな目で見られるなんて屈辱」


「ラブコは何人も相手してるのに誰からも結婚を求められてませんからね。何度か結婚できるから私の護衛任務ができなくなる!って言うのですが・・・結果は御覧の通りです」


美人なのに不思議だ・・・この人も何かしらおかしな所があるのだろうな。


はぁ、何か色々期待していたものとは違うじゃないか。これなら迷宮に引き篭もってサキューとよろしくやってるカトーのが幸せなんじゃねぇか?いや待て・・・帝都で発情した美女から迫られることだってあるかもしれない。


俺はまだ若いし、これからなんだ。女に絶望するのはまだ早い・・・14、15で童貞捨ててからでも遅くはない。そんな感じで先行きに不安を感じながらも、帝都への旅路は続く。


「カトーはあんな穴倉で満足できるのかねぇ」


「異世界人でしたか・・・我々とは違う価値観があるから問題ないのではないでしょうか」


価値観といえば人族と獣人族の違いを今さっき実感させられたばかりなんですがね・・・。カトーならば獣人族の子作りしまくり現象に納得するのだろうか?穴倉に引き篭もっているあいつに聞いてみたいなと思いながら、箱車上から流れていく景色を眺めていた。











「快適すぎて屁が出るわ」


「なんで屁なのよ・・・私は不満よ!色々出されても言語理解できなきゃ楽しめないじゃない!」


生活面はあちらのあらゆるものを召喚したので、快適といえる。しかし、想定外の問題が一つあった。

サキューと召喚した娯楽で楽しもうとしたが、あちらの映像作品は言語が理解できないらしくサキューは御冠である。楽しそうなのに映画さえ言葉が違うと理解できない。こんな弊害があるとはな・・・魔法で何とかならないものか、困った時にはリンネもんに解決してもらおう!


「つーわけで、何とかしやがれ」


「マスター、怠惰になりましたね。まぁ出来ないことでもないので何とかしましょうか」


願ってみるものだなぁ。リンネがサキューへ触れ、何やらし始めると「終わりました」とリンネが良い笑顔でこちらを振り返る。もう解決したのか?


「リンネは一応元魔力生命体ですから、一部をサキューに流し込めばマスターとのリンクは完了します。リンクしていればマスターの理解できる言語をサキューも理解できるというわけです」


俺とサキュー二人の拍手が響く。リンネもん優秀!使えるわこの娘。自称しない存在が俺に与えただけはあるというものだ。しかし、実体化してこれからこいつどうするのだろうか?聞いてみるべ。腹を割って話そうじゃないか・・・。


「俺はさ、知ってると思うが元の世界と遜色ない生活ができたら・・・まぁ大体は満足なんだけど。リンネは実体化してやりたいことはないのか?生活空間の確保、召喚用の魔力が確保できたから俺の方は満足なんだが、お前はどうしたいのかなぁってな」


リンネは少し考える素振りを見せるも、ニッコリと笑った。


「マスターから色々知識は貰ってますけど、あちらの娯楽はまだ知らないものが多いはずです。しばらくはここで楽しみたいのですが、よろしいでしょうか?」


「問題ある?」


「ないな」


サキューの問いに即答し、こうして元の世界からの娯楽を三人で楽しむという生活を続けていく。飽きるまでどの程度の時間をここで過すのか?娯楽も楽しむがサキューとの快楽にも溺れる気満々なのだが、リンネは実体化したとはいえ俺の娘みたいなもんだしなぁ。近親相姦は不味いよね・・・あ、考えていることがバレた・・・流石は我が娘。


「ん~、娘扱いしてくれるなら外から婿候補を引っ掛けてきますよ。私の美貌なら可能ですから、男が欲しくなったら探しにでも行きますね」


あっそ・・・そういえば俺の娘だもんな、でもそのドヤ顔やめろや。俺から生まれただけはある・・・良い性格してるよこいつ。リンネは女版俺なのかもしれん・・・エレガントはどうした?

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