カトー、引き篭もる
「マスター、非常事態発生非常事態発生。魔女、獣人族の街に出現。繰り返す、魔女、獣人族の・・・」
マジかよ・・・恐れていたものが遂に来やがった。リンネの警告が間違いだといいのに・・・このバニーがそう言うなら確実に来てる。元凶なりし者その名はマユ・・・。
「大丈夫なの?魔女とか言ってるけど」
サキューが不安顔である・・・が、大丈夫だよとか言ってやらない。幸も不幸も分かち合うのが恋人同士というものだ。
「まぁぶっちゃけるとな、俺が異世界へ・・・この世界へ転移してきた原因その2な」
「誰かのおまけで無理矢理飛ばされたって言ってたわね・・・その誰かが魔女ってこと?」
「そういうこと、魔女の案内人として飛ばされたのがこの俺カトーってわけだ」
自分で言ってて悲しくなってきた。完全に必要じゃない存在としてココにいるわけで、お家に帰してと叫びたい。一緒に居たいと思える女が出来たから・・・今じゃ帰れるとなっても地味に悩むかもしれないが、それでも結局8割方帰還を望むだろう。そのくらい帰りたい・・・元の世界に不満はそこまで無かったし、こっちよりも良いと今でも思える。
こっちでは生活が大変だ。探索者稼業は地獄だし、死ぬ可能性が高過ぎる。チートが傍に居れば違うが、それは永遠とも言えない。セーガならしばらくは俺に付き合ってくれるかも?とは思うが、マユを利用して立ち回る気は俺にはない。くっぞ面倒になるからだ・・・あの女の性格的にな。
「リンネ、こっちを探知されるってことはないのか?」
「今のところは・・・ですが、セーガのおっさんを利用されれば丸裸にされますね」
ヤバイヨヤバイヨ、救出に・・・いや駄目だ危険すぎる。セーガの守備範囲外への対応を信じよう。理不尽回避で全員でバックレるという方法もあるが、自分の行動は変更出来てもマユの方は動かせない。
一旦は回避できるが、直ぐに次の接触がやってくるだろうな、何て面倒なんだ・・・。
どこへ逃げても追ってきそうな怖さがある。どこか・・・確実に逃げられて発見されない場所はないものか、考えろ考えるんだ。
あるにはあるが、今は挑戦できないという結論が出る。
「しゃーない、無視して魔力確保すっぞ」
「良いのですか?」
「今だけだ・・・必要なことを必要なだけ実行しておく」
サキューがそんな俺を見て不可解だと思ったのか小首を傾げる。
「方針決まったの?」
「ああ、決めた。魔力回収しまくりながら転進だ」
「転進・・・クルリと回って進むのね」
目的に向かって進む・・・そうする事しか出来ないからそうする。マユが使命を成すまで時間がかかるはずなので、何とかなるだろう。当初の予定通りに付近の迷宮に突っ込む。
迷宮内まで捜索に来られたらアウトだが、ここで限界まで魔力を確保してまた別に場所へ転進。
そうやって規定値まで貯め込んで、絶対手の届かない場所まで逃げ切る。
迷宮内へ突貫、ザンサツを振り回し雑魚い魔物を薙ぎ倒しながらノンストップで突き進む。
「リンネ、効率的に深層まで行けるように誘導頼む」
「時間的効率?それとも魔力的効率でしょうか」
「魔力だ。奴の手が届かない場所への転進に、リンネへの魔力供給が必要だからな。リンネの探知能力を限界まで使う必要がある。当然転移能力もだ」
サキューが何時の間にか疑似精霊を構築、乗り物タイプに変化させて乗り込んでいる。獣人族の街で乗っていた箱型のやつに似ている。俺が走るよりスムーズな気がする・・・身体強化した俺に付いてこれる工夫を自然と行っていることに少し驚いた。
ポンコツハイエルフだったとは思えんな。そんなことを考えながらも一階の多分ボス部屋へ躊躇することなく入り込む。敵を観察することなく走り抜け、抜けるついでにボスらしい魔物の頭をかち割る。一つ目巨人?魔力はどの程度増えただろうか。
「リンネさんや、流石に1000くらいは確保できたかのぅ」
「マスターに残念なお知らせ、雑魚含めボス撃破で612魔力増加。迷宮内なら探知偽装しなくていいので、その分私の魔力が減らないってメリットがあるくらいかしら」
塵も積もれば・・・いやいや流石に少な過ぎ。転移で一気に深層へ飛んで稼ぐとか出来ないもんかねぇ。
「しかしまぁ迷宮によって姿が大きく異なるようだな。ダインの迷宮は岩やらごつごつした通路だったのに、こっちは綺麗な城の通路みてぇ・・・整ってやがる」
「古代魔法王国があった中央大陸だから、その影響が迷宮にもあるのかも?凄い魔道具とかないかな?」
3000年前に滅んだ国、サキューはロマンを求めるタイプか。辺境とはいえ迷宮の管理とか定期的にやってんだろうし、めぼしいものは取得されちゃった後だろう。まぁ迷宮探索はしたことがなかったしな・・・スライム目当てとか逃げるために隠れるためにとか、碌でもない理由でしか中に侵入したことがないとか・・・我ながら切ねぇ。
魔道具か・・・マユの記憶から俺を消去するとか、特定のものを認識できなくなる様にするとか、そういう道具がありゃ最高なんだけど。本当に不利だよな、マユを殺すと都合が悪いから殺せないっていうハンデはさ・・・ノーマさえ殲滅できりゃ、あんな女どうにかして殺してやんのに。
地下二階を駆け抜けながら考える。あれだよダンジョンマスター的な存在となり、マユが入ってこられなくなるとか・・・ねぇかなぁ。チラっとリンネを見る・・・フヨフヨと宙に浮くバニー、こいつの能力で迷宮の制御をして完全封鎖できれば・・・面倒な方法で転進することもないのに。
「実体化したら即欲情するなんて・・・節操がないマスターですね。今はまだおあずけですよ」
ぐねぐねとわざとらしく体をくねらせるリンネ。
「サキューいるし問題ない。残念でした~」
「あのマスターがあっさりと拒絶!サキュー・・・その目やめて下さい同情?同情ですか?」
「・・・・・・頑張れ」
二人がこんな感じなんですが俺はというと、さっきから蝙蝠系の魔物を捕捉しちゃ斬り、捕捉しちゃ斬り斬りながらも走ってまた斬り・・・あああ、面倒臭い!
小物を片付けながら深く潜る。17階までは疲れるが一気に降りることができた。
そこまで広くもないので、いけるところまでいく気ではあったが・・・。
17階のボスだと思うメタリックな一つ目巨人に剣が弾かれ、ここでストップとなった。
「ザンサツで斬れないとかやば過ぎだろ。サキュー、カノンで倒せるか試してみ」
「はいはい」
召喚というか構築というか、そこにあるものを搔き集めて作り出される疑似精霊。作成時間二秒・・・もうこんなのは召喚でも何でもないな。メタリックを足止めするために魔力銃をぶっ放すも、全く効いていない。カノンでもどうにもならねぇんじゃ?
硬過ぎなんだよなこいつ。斬撃も銃撃も効かないということは、物理攻撃&魔力攻撃に耐性か?ありえないな。今までは雑魚ばかり、ボスとはいえこいつもそこまで強くないはず。
サキューがカノンを構築終了し、稼働させるも・・・その銃撃を全て弾くメタリック。
「リンネ、弱点ねぇのこいつ?」
「打撃以外は全て弾く系の魔物ですね。スライム用に作ったハンマーなら通用するかと」
収納されていたハンマーを取り出すと即振り下ろす。気持ち悪いほど簡単にメタリックが崩れ落ち崩壊していく。何なんだよ・・・糞雑魚過ぎる。崩れ落ちたメタリックの体、これすげぇ使えそう。
回収回収、まぁ自分では加工出来ないけど、出来る奴にやらせたらいい。
その後もメタリック系の魔物が出たら、ザンサツからハンマーへ切り替えては倒すを繰り返し・・・30階へ。
そこは異様な世界だった。研究所の施設のようなものの廊下、俺たちは立ち竦む。
「どう思う?予測としては古代魔法王国の何かだと考えてるが・・・」
「マスターの推測は当たってるかと、迷宮自体が過去の研究成果だったのでは?」
「王国時代の魔道具はとても貴重なのよ。見つけられたら・・・魔女から逃げる時に使えるかも」
サキューも俺がマユをめちゃ嫌がってると理解していてくれるようで、そこが嬉しくもあるのだが・・・魔道具ねぇ。魔法関係ないようにしか思えない。どう見ても科学研究所・・・巨大ロボが発見されても驚きゃしねぇぞこんなの。
ただまぁ希望は見えてきた。ここに迷宮の制御装置とかあれば、この場所に引きこもれるのだ。
入り口を閉ざし、住環境を整えてしまえば・・・転移以外で入り込まれることもない。
転移妨害できるシステムとかあれば完璧だ。廊下を進みながら部屋があれば内部を確認、調べてはまた進む。
PCっぽいもの発見。電源は生きてんのか?どうやって稼働させる・・・分からん。
「リンネ、分かる?」
「さっぱり分かりませんね」
多分これがモニター、キーボード臭い物もある。マウスは見当たらない。
まぁ稼働できなきゃ意味ないしな。
ブゥーンと懐かしい起動音が鳴ったと思ったら・・・稼働してますやんコレ。
「サキューか?何した」
「えっと・・・魔道具でしょこれ。魔力流し込まないとダメかなって・・・」
「どこから流し込みやがった」
「ほらこれ、この球体」
マウスポジションっぽいところに台座付きの球体があり、触ると台座の上で球体が回転する。
おかしい・・・繋がってねぇやん。何故これが電源なんだよ。
モニターに映し出される何か、アイコンかな?カーソル臭いのが動かない。
と思ったら、またも動いた。サキューが球を弄るとカーソルが移動する。
なるほどね。魔力を流して稼働させ、操作も出来ると・・・洒落たPCですな。
クリックは・・・そう思った瞬間にファイルが開かれる。意思が伝わり操作可能と、なんつー便利な。
論文かな?言語理解が仕事をしてくれたのか読める読める。強化装甲実験その6、テスト不可・・・ノーマ変異体への対抗措置・・・ガーディアン。
ん~、どういう状況で書かれたものなんだろうねコレ。
他に何かないかと調べていく。異空間内拠点概要・・・防衛設備一覧・・・拠点管理者一覧。
あった・・・拠点管理者、ええと・・・所長、ジャスコン・リードと権限所有者が・・・リナ・オルコット。この二人か、そいつらの部屋に権限か管理装置があるはずだ。
二人の部屋位置はすぐに判明した。一覧に部屋割りまで記載されてるやん・・・。
「リンネ、記憶しといて誘導頼むわ」
「了解、マスター」
「何する気なのカトー、魔女から逃げるために魔道具探すんじゃないの?」
「それもあるが、この古代魔法王国時代の拠点に引きこもろうかと思ってな。まずは拠点を自由に弄れる権限と、弄るための装置か何かを探さないといけないってわけだ」
「ここで生活?私まだ心の準備が出来てないんだけど」
「問題ない。死ぬまで引きこもるつもりはないし・・・サキューが飽きたら転移で出してやるから」
「マスター、ここの掌握も出来ていないうちに皮算用は早いかと。サキュー、この施設が使い物にならなければ魔女にバレないように脱出しなければいけません。まずは使えるかどうか確認からですね」
「あいあい」
「それもそーね」
まずはリナちゃんの部屋を探す。リンネの誘導で即場所が分かるので楽である。侵入してみると私的な部屋という感じだ・・・時が経過しても女性の部屋という印象は変わらない。ぬいぐるみに鏡、まだ使えそうな大きなベッド?いやキングサイズ過ぎるだろ。
そこまでごちゃごちゃしていないので権限ついてそうなアイテムは探し易い。鏡台、机、そしてベッドの下まで隈なく探す。なんもねぇな・・・って、ドアがもう一つ部屋に付いてるじゃないですか。
そっちが本命だろうと三人で捜索を開始する。
「魔力あるものが多すぎて何が鍵か不明ですね」
「指輪とか・・・ペンダントとか、腐るほど置いてあるしな」
「全部回収する?それで装置っての探して、反応するか試すのよね?」
「それしかないな。この部屋の主リナって奴の生体データが鍵です、とかならどうしようもないけどな」
「この部屋には装置らしきものは無いですから、所長の部屋に行きましょうか」
リンネを先頭に動き出す。所長の部屋はリナの部屋から出て正面、案内されるまでもない。
書類の山かな?この部屋。多分だがここにはない・・・リナの部屋と同じようにもう一つ部屋があるはず、あった・・・やっぱりそういう構造なのね。入って左にドアがあり、そこを開け・・・・開かない。
「ここまで順調過ぎたツケかな?リンネは解析とか出来るか?」
「やってみましょう」
「魔力銃でドア破壊とかしちゃえば?」
「迷宮ごと消滅するトラップが発動!とか嫌だしなぁ。最終手段やな」
リンネが調べている間にリナの部屋から回収した物で鑑定能力が生えてこないか試す。
頼むから生えろと指輪やらその他アクセサリーをじっと見つめる。必要なんや・・・快適に生きるために、必要な能力はクレよ。駄目か・・・。
「何してるの?どの女に何を渡すかとか・・・考えてた?」
「お前以外の女には餌をやる気はないから、安心しろ。鑑定が出来ればいいなーと思っていてな。そういう能力が生えてこないか試してた」
「鑑定魔法なら使えるわよ」
は?魔法にそんなもんあるのか・・・聞いたことねぇぞ。
「人族の魔法には無いからかしら?知らなかったみたいね」
「マジかよ。そういうことは早く言え・・・あと鑑定魔法教えてくれ。その前に・・・これすべて鑑定よろしく」
部屋の中にどさりと小山ができる。収納していたアクセサリーの山・・・多いなホント。
「こんなに?きゃっ・・・分かったわよ。やるから・・・分類していくから手伝ってね」
「あいあい」
サキューのケツを撫でくり回してやる気を出させ、作業開始である。
一つ一つ丁寧にとか考えていたが、一気に魔法をかけて終わらせるようだ。鑑定魔法の効果があるうちに分類を開始する。魔力増加弱~特大まで増えるアクセサリー、特定の攻撃を緩和するアクセサリー、身体強化を自動で行う指輪、空間魔法で収納・排出が出来るペンダント等。定番の物、面白い効果がある物と色々出てくる。
「これじゃない?異空間制御盤起動キーだって」
「それだ!けど起動するだけか?結局はすべて調べるしかねぇなよろしく」
「えー、面倒になってきたわ」
キーという割には形はコイン。こんなの鑑定しなきゃ判明しないだろ・・・その後もコイン型キーが何個も出てきた。予備かな?それとも沢山使用するものなんだろうか。
ヤバイのも出てきた・・・強化装甲認証キー。まぁ滅んだ国の強化装甲なんてしょっぱい物のはずで、あんまり期待はできないのだが・・・。
あー、もっと問題なものまで出てきた・・・。チラリとリンネを見るとめちゃ笑顔ですね・・・そりゃそうだわな。出てきたのは制御盤管理室のキー、無駄骨だったのだからそうなるよね。
「こういう事はよくある事、リンネ御苦労様」
「一言言いたいですけど、まぁいいです。多分ここが鍵穴じゃないですかね?」
「これか・・・」
コイン型を近づけるだけでカチリと音が鳴り、ドアノブの飾りだと思っていた石の色が変化する。赤から青へ・・・こういうのは定番だよな。ロック解除ぉ!って感じである。
即侵入。部屋の中は簡素なものだ・・・入って正面の壁がそのままスクリーン、その下に多分例の制御盤、そして丸っこい椅子が二つ。
起動用のキーはある・・・鍵穴はどこかいな?制御盤らしきものを見渡すが、どっこにもない。
起動できねぇ・・・。椅子に座りゆったり考える・・・壁か?壁に何か・・・無いな無いわ。
後他にあるもの、座ってるこの椅子か。肘掛けから腕を上げ観察すると、透明な紋章が付いている。
ドア開ける時も嵌め込むわけじゃなく、カードを当てて鍵が開いた。つーことは、怪しいところにコインを当ててみたら良い訳だ。
ひょいっとコインを取り出して肘掛けの先端に当ててみる。ん~、お約束・・・起動しているねぇ。
スクリーンの肘掛けに付いてた紋章が表示され、続いてマップのようなものが表示される。・・・何か警告が出てきた。魔力が足らない補充を・・・ってどこからだよ!
先程は玉から魔力を入れられたが、そんな玉ありませんよ?考えろ、使用者が便利に使えるように成っているはずだ。つまりは椅子に座ったまま魔力補充が可能に成っていて、立ち上がる必要がないはずなんだ。つまりはこの紋章が臭い。
「サキュー、仕事やぞ」
「またなの?」
「魔力で動くみたいでな、補充が必要だ」
紋章に魔力を補充してもらうと・・・思った通りスクリーンに出ている警告は消えた。
あとは制御盤の使い方のみだが、ここまで来たら余裕だろう。
遂に俺は外界に影響を与えない隔離された場所で、自由に快適な生活を満喫できるわけだ。
「フヒッ、イヒヒヒハハハハハハハハ」
「マスターが壊れましたね」
「凄く喜んでるだけよ」
何とでも言えよ。もう戻れないなら、こっちであっちと同等の生活をするのが俺の目標だったのだから。召喚で自由に物を確保出来・・・そうだった魔力がない。物を召喚する為の魔力がないわー。
どうする?こんな糞迷宮じゃ魔力確保は不可能だ。100万ありゃある程度は問題ないはずだ・・・現在は10万程度。
「ぬぅぅぅ、魔力が・・・肝心の魔力が無い。リンネ、少し返せよ」
「最早リンネの血肉となっているので無理ですね」
外に出て竜種でも狩れば溜まるのだろうけど、獣人族の街にはマユがいた。接触したくねぇ・・・。
セーガが撃退してくれればいいのだが、どっちもチートだからなぁ。
「外の様子は分かるか?」
「ここからでは不明ですね。こっそり出て確認してきましょうか?」
「バレない?」
「バレるというか警戒されますね。魔物と偽装して迷宮外に出るわけですから、危険だと判断されて様子を見に来るかと」
ノー、それは最悪なパターンだ。詰んだ・・・理想郷が目の前にあるのに・・・。弱い探索者へ偽装すれば・・・とも思ったが、その場合は様子を見に来て中はどうだったか聞かれる可能性があると・・・。探知持ち相手に姿を晒すのは危険すぎるか。
「魔力がないから召喚で色々出せない。出せないから魔力が欲しいってことでしょ?魔力量増大の指輪があるじゃない」
サキューさんのアドバイスは嬉しいが、こういう系統のアイテムは何割増えるってのが定番なのだ。
10万がベースではどうにもならん。固定値増える可能性もあるが、良くて10万・・・悪くて1万くらい増える感じだろうか。
ま、試すのはタダだし、魔力量増特大の指輪を嵌めてリンネに計測してもらうか・・・。
「どんな感じ?100万超えたか?」
「1000万超えましたね。流石は魔法王国の遺産、きっかり1010万ですよ」
マジか・・・っていうことは、理想郷が現実に・・・。ふらふらと椅子から立ち上がり、サキューの手を掴むと部屋を出る。リンネには思念で伝えてある・・・あいつなら気を使うくらいするだろう。
「ちょっと・・・この手の行動ってもしかして」
「お察しの通りだ。今回は御褒美だな・・・たっぷり感謝を体で表現するから」
「・・・・・・喜んでくれたなら私も嬉しいけど、興奮し過ぎじゃない?激しいのはちょっと・・・」
「今回は諦めろ。夢が叶った記念みたいなもんだし、全力以上になりそうだ」
用意されてたかのように主のいないキングサイズのベッドがあるし、運命だと思って諦めてほしい。