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そんなものは無いっすよ  作者: G・スー
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子供に優しく、無欲な男カトー

地道な作業を繰り返すこと十二日目、偵察隊が三十体ほどのノーマの集団を発見する。


陽動の可能性もあるが、少しでも数を減らしたいので奇襲を狙ってみる。

村の男衆二十名+俺で森に潜み、バックアタックを狙っていくのである。

餌はガキ五名、彼らを助けられるかは男衆の奮闘に懸かっている。


「おい!子供を使うとか聞いてねぇぞ!」


どの世界も一緒だな・・・子はカス害だったっけか?


「っせぇなぁ、餌が無いと罠に嵌められねぇだろうが」


ガキに犠牲は出ても仕方ないが、大人に犠牲が出たら戦力低下。

だから餌は、どうなってもいいガキにやらせるわけだ。しかも弱そうで柔らかい肉として認識されるだろうから、狙われ易くベストチョイスなのだ。


という説明を淡々と行う。全員が理解は出来ても納得は出来ないという顔してやがる。

無理も無いっすわ。


「おまえらが頑張れば犠牲無しで終わるだろ?首か頭を一撃で突け、突いたら下がって後ろの奴が同じ様にする。下がった奴は槍からノーマの死体を外せ、突いて綺麗に抜けたなら待機だ。他の奴が下がるようなら前に出ろ」


「そんなので大丈夫かよ」


訓練しても不安か、まぁ所詮はノーマだがされどノーマ。ノーマにもそれなりに個体差はある。

ギ・ノーマに成長する個体もいるのだから当然だが、偵察隊は何度も少数殺しているのだからやれるだろ。


森の中で身を潜めながらのやり取り、あんまり騒ぐとバレるからって理由で黙らせる。

黙って待つこと数分、目の前の道をガキ共がすり抜けていく…釣れたな。追ってくるノーマが見える。足はガキより遅いようで、これならなんとかなりそうじゃね?


手で合図、ノーマたちの後ろから躍り掛かる。


ノーマは逃げようとするも、その先は蔦などで囲んだ袋小路であり、行き止まりになるよう仕込んだ。

ガキ共だけ通れる穴を空けているが、通り抜けたら塞げと指示してある。


俺のしょぼい魔法パート2である。

草や葉などを少しだけ成長&操作する魔法で、蔦を伸ばし木と木に絡ませて通行止めにしたのだ。

それなりに手間が掛かる罠専用魔法、こんなのでも100万ドーンもしたんよ。


葉っぱで敵を切断!とか、木の根や枝で敵の動きを封じるとか、その手の植物魔法は中級。

安いものでも500万ドーンはするとさ…高いわ!


植物系は農作業にも使えるので重宝する。

需要が半端ではないのでどれもこれも高いし、教えてくれる先生も少ない。


俺の場合は字が読めないので、魔導書買って自力でというのは不可能。

ゆえにさらに金額が跳ね上がる。言葉は分かるのに字が読めないとか、異世界転移は不親切だ。


余計な事を考えてるうちに、追いついた村人が石槍でノーマの首筋を狙う。

青黒い血がそこら中に飛び散る。

蔦の向こう側へ移動完了した悪ガキ五人も、手の平サイズの石を投げる投げる。


コントロール良くね?当たるわ当たるわ。

ガキも結構戦力になるなぁと高みの見物である。

俺は動かない…これは村人に戦いを経験させるための奇襲でもあるのだ。

あと事前準備や罠が如何に効果的か、身を持って知ってもらうのに都合が良い。


怪我人一人いない完全勝利だが全く嬉しくねぇなぁ。

チート能力とかありゃこんな糞面倒なことしなくてもいいのに。


本当なら俺が一人で薙ぎ倒して、キャー加藤様素敵抱いて揉みくちゃにして~とかなるはずだろ?


俺の魔法じゃノーマでさえ確実には息の根を止められないし、剣も普通かちょいマシ程度。

虚しい…俺に力がありゃガキを餌になんてしなかったのに、何もかも俺をこの世界に送り込んだ奴が悪い。いるのか不明だけどな、存在するなら余程の糞に違いない。


あ~、娼館行きてぇ。でも残り十八日、我慢だ我慢やで~。


「大成功なのに浮かない顔してるな兄ちゃん」


樵兼兵士の村人が話しかけてくるが、何と返したものか。


「子供を使わないとこんなことも出来ないとは悲しくてな」


良い人ぶってみるが変な顔された。


「ガキはノーマを釣る餌とか言ってなかったか?」


そんなことを口走ったような気がするが、スルーしようと心に決めた。


「おら!ノーマの死体は一人二体運べ!その後は油絞りだ、キリキリ動け」


勢いで誤魔化そう。


「あんた戦ってもいねぇのに…」


分かってねぇこいつら何も分かってねぇ。


「俺は体力温存と魔力回復に全力なんだよ。おまえらがノーマを突いた槍、誰が木材から削ったと思っていやがる。蔦伸ばして封鎖したのは?俺だぞ俺、そいつがなきゃノーマ三十体も殺せたか?ああん?」


村人たちが各々で反応を示す。確かにな~とか、それもそうかとか、何か丸め込まれてねぇか?とか…一部余計な事言ってる奴もいるな。


「いいか甘ちゃん共、俺様が不快になってとんずらかました次の日に、ギ・ノーマが襲ってきたら対処できるのか?俺様がいて二回に一回勝てるかな?もしかしたら勝てるかも?正直ヤバくね?ってな感じだぞ。いなかったらどうなるか分かるか…確実に殺される。殺されたらマシな方かもな、生き残ってもボロボロの状態ならノーマに拉致されて考えたくもない目に合うぜ。お前らじゃない、お前らの後ろにいる女子共がだ」


想像力を掻き立てるように煽るのもこいつらの為だ。

この程度の絞めは必要。命令無視されたら、そこから崩れてゲームオーバーなのだから。


娼館に行けなくて溜まっててイライラしたから八つ当たり、とかじゃないんだからね!勘違いしないでよね!


村人たちは無言で両脇にノーマの死体を抱えるとトボトボと村に向かって歩き出す。

もう文句を言う者もいない。


言いすぎちゃった?でも、しゃーない。

これも俺にチートを与えなかった糞のせいなのだから…。

俺は悪くねぇ!




「カトーが怖いとか何人か言ってくるんじゃが…」


あの腰抜け共、村長にチクリやがった。


「怖いのはこれから来るかもしれない敵だけだ」


「そうじゃな。しかしおぬしに逃げられるのはワシも怖いし、うちの孫とかどうじゃ?」


ん?それってつまりアレかな?村娘差し出します~御自由にどうぞ~、その代わりに逃げんなよっていう…俺の首に鈴を付けたいと?そんなもんが鈴になるか?こちとらヤリ捨てごめんができる男、カトーですことよ?


それにあれだ、容姿やスタイル見ても好みはいないしね。そもそもがここは借金作って農奴に落とされた奴が集まる開拓村で、そんな奴らに可愛い娘がいたら速攻で娼館に売り飛ばされてるだろ。

売り飛ばされてない=売り物にならない娘たち。

押し付けられて嬉しいわけねぇだろ!


まぁ多少は頬が緩んだことは内緒だ。どう断るか…正直に言うか?


「俺はさ、依頼で村を守りに来てる探索者だぞ?守る側が守る対象を汚してたら意味ないだろ。それにほら、こういうのは互いの気持ちが通じ合ってないとな」


村長がやれやれふぅって見下した態度でこちらを見ている…見透かされてる?


「カトーの綺麗事は何かを隠す嘘じゃと読めとるわい」


読めてますかそうですか。


「まぁぶっちゃけて言うと好みの女がいない。美人がいたら売れる、売れてたら借金返せるから農奴になってないだろ」


「そりゃそうじゃ」


あたりまえの常識的なことである。借金返せなかったらまずは売るものを選定する。これはどの世界だろうが同じなのだ。物の価値が微妙なこの世界で、売れるものと考えると…高価な薬か魔道具に武器防具、んでもって女である。土地は領主のものだから転がせない。


「村長も理解力がねぇな、この俺がこの立場で遠慮とかすると思うか?」


「欲望丸出しじゃしのぉ、好みの女がいたら守ってやるとか言いつつ誑し込みそうじゃの」


「たりめぇよ」


こっちでは素人童貞なので普通なら素人が喰えるチャンスを逃すはずがないのだ。

自慢できることではないが。

奪うものがない開拓村、今は人からは狙われないだろうが生き残り金が入ればどうなるか。


しかしまぁ、このタイミングでノーマ三十体はどうしてここを目指してきたのか?

考えたくなくても頭から離れない。やめろよそういうの…このまま何も起きなくていいよ。

それでもあれってどう見ても先遣隊じゃねぇか?


俺はノーマ解体作業をしている村人たちへ足を向ける。

嫌な予感しかしないので、急いで油を用意させよう。


俺の安全と俺の報酬のために。

そして待っててくれる娼館の脚が綺麗なミーヌちゃんと、おっぱい大きいルルノちゃんの為に!

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