表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そんなものは無いっすよ  作者: G・スー
20/60

マユ、カトーの時間稼ぎ堪能 其の一

予定通りに武器屋で子供たちに色々買い与える。服はもう先に女の子が強制的に見繕ってしまった。

子供用武器もちゃんとあるこの世界、カトーの記憶からその一端を見る。

凄く必死に走っていく子供たち・・・やっぱり探し出して文句の一つでも言いたくなる。


「あー、退屈だわ。俺だけ適正無いし・・・防具見てきていいか?」


「駄目よ、クローは目を離すと余計な物買いそう。女の買い物くらい待ちなさい!将来役に立つわよ」


クローの文句をリアが捻じ伏せる。この子たちは意外と仲が良い・・・何かムカつくわ。

私と同郷の男なんていきなり殴ってくるわ、ゲロ吐き確定記憶見せてくるわ、アグレッシブ過ぎるし。


「剣なんてどれがいいか分かんないよ・・・これとか?」


「それでいいぞハイン、格好いいなぁそれ、鞘の飾りも美しい。ああ、なんで僕は斧なんだ!おかしいだろ!」


「・・・良いじゃない強そうで、私なんて」


「お金が掛からないのは良いことだよディア、剣なんて使ったことも無いから不安だよ僕」


ハインの剣を見繕うデューと、それに付き合うキールディア。


クロー、キールディア両名、武器無しなのだから、愚痴りたくもなるだろう。しかもこれって・・・。


「おじさん、振り回してもいい?」


リアが武器屋のおじさんに了解を取って槍を試すのだが・・・これがまたとんでもない。

試し斬り用の藁に、あえて槍先を掠めて次々に突き入れるリア。当てない・・・わざとだ。

藁は人を模した形をしているが、その首部分がどんどんと細くなっていく。リアの振るう槍先が、藁の首を掠め取る。えぐい・・・ここから魔物を狩って身体能力がさらに上がったら、リアちゃんどうなるのよ。


「ふぅ、こんなもん?」


藁の首部分だけがポトリと落ちる。何で首ばかりなのかはあんまり聞きたくないなぁ・・・趣味?


「・・・・・・こんなのと組むのか、頼もしいやら怖いやら」


落ちた藁を見て、クローが呻いた。


組んで戦う場合をナビィに聞くと、前衛が盾要員ハイン、体が武器のキールディア、斧という決定打のあるデューとなる。そうなると必然的にその後ろに控えるのが槍のリアと、魔法担当のクロー。


肉体派が多いなぁこの面子。一応魔法も覚えさせるつもりなんだけど、ナビィ曰く魔力量が育ってないから厳しいらしい。試しにクローに風の刃を使わせたけど、目で追える速度で、ナイフで切りつけたくらいの威力しかなかった。今朝のことを遠い目をして考えていると、壁にかかった斧を見つけた。


ん?何か良さげな斧があるじゃない。


「おじさん、これは?結構良さそうな斧だけど、いくら?」


「50万ドーンだな」


「買った」


鑑定で見た感じそこそこ頑丈、さらに重さを減らす効果まであるし。


「高いし子供用ではないのだが、いいのかい?」


「いいですよ。軽いなら子供だって扱えるでしょ」


「鑑定持ちかお嬢さん、敵わないねぇ」


黒雲の斧、迷宮産。重さを感じないくらい軽く丈夫、それ以外特に特徴はない。即購入してデューに渡す。刃の部分以外が黒く、地味に禍々しい斧の軽さに驚くも、それよりもビジュアル面が不安なよう。


「狂戦士が振り回しそうですね。騎士からどんどん遠のくなぁ僕」


文句を言いながらも試し切りするデュー、四秒・・・一で首を右から両断、二でその勢いで振り上げ振り下ろし右腕を切り、三で下した斧をカチ上げ左手を断裂、四で最後に足の部分を両足まとめて切り飛ばす。使い方上手くない?軽いとはいえ、的確に一撃で敵を倒しそうな攻撃から入り隙を作らない。息を切らすことなく、平気な顔でそれを実行する。資質ってのは確かなものらしい。


武器組三人合計、100万ドーンで武器を揃えると、今度は防具屋に向かう。皆、皮鎧系を選択する中で、クローだけローブにマント。躱して戦う魔法使いというコンセプト、マントはいざという時用に、矢などを防ぐ効果付き。 お値段両方で100万ドーン・・・他の皆の皮鎧も四人で40万ドーン、こんなに使って回収できるのかと、リアから現実的な意見が出た。


「問題無いわ。迷宮にはお金になるお宝が眠ってるらしいから、楽勝なのよ」




皆でオーエン迷宮へ早速挑むのだが、入り口で連盟の人に止められる。用意しておいた探索者証明を皆で見せるのだが、穴があった。全員初級という穴が・・・。


「え?入れない?私強いよ」


「そうは見えませんが・・・仮に凄く強くとも、それを証明する実績がないと困ります」


「どうすれば・・・」


「初級で実績を積み、中級試験に受かるか。中級探索者に同行してもらうか。この二つですかね、何故調べないのですか?」


怒られた・・・まずいなぁ、皆の装備で結構散財しちゃったよ。

くるりと振り返ると、呆れたような目が五人分私に突き刺さる。村での稼ぎも魔断使用者集めないと期待できないし、探索者の他の仕事はたいして稼げない。詰んでしまった・・・。


途方に暮れる私に、何故か連盟の人が問いかけてくる。


「えっと・・・あなたはマユという探索者ではありませんか?確か一人でいると聞いているのですが」


「そうですが・・・何故名前を?一人でしたが事情がありましてね」


「連盟の方に領主様から連絡がありまして、マユという探索者を探しているとのことです」


どうして領主が・・・ルーディスさん?いや、昨日の今日でそんな訳ないし。私を知っている者、カトーしかいない。そうか、これはカトーの置き土産ね。領主様に力がある私を紹介、褒美でも貰ったのかな?それとも、自分に出来ないことを私にやらせたいのか。どっちでもお金持ってそうな領主様なら、接触すればチャンスかも。私はくるりと振り返ると笑顔で宣う。


「皆、お金儲けの機会が訪れたよ。皆一緒に領主様に会いに行こう!」


「何でよ!偉い人なんでしょ?怖いじゃない」


「厄介そうだし、作法なんてわっかんねぇよ。俺は連盟支部で仕事探すから跳ばしてくれよ」


「ノーマ狩りしたい」


「僕は行ってみるべきかと思う。騎士も見てみたいし・・・」


「みんなで決めてよ・・・僕は戦うのも領主様に会うのも嫌だな」


結構反対が多い。クローなら金のために!とか言って賛成するかと思った。よく考えたら彼らの立場は微妙、ガンドに捕らわれていた事実は明るみになれば、処分の対象になってもおかしくはない。

いや、だからこそこの機会に会うべきかもしれない。彼らはこのままだとバレないように怯えて生活しなくちゃならないわけで、領主様に認めさせればある程度は安心してこの領内なら暮らせるはず。


「皆、聞いて。領主様に皆も会わないと今後も安心して暮らせないでしょ?会って話付けなきゃ、ルーディスさんもいるし、逃げるのは後々問題になるかもしれないよ」


「・・・・・・手はあるの?」


「状況次第だけど、私の力が本物だと証明して・・・あとはあの時の状況をルーディスさんに説明してもらえたら、何とかなると思う」


リアはやっぱり不安を抱えていた。他の子も・・・デューは例外だったけど・・・。

やっぱり皆で行って安心を勝ち取らなきゃ駄目だ。


「えっと、直接行ってもいいですか?」


連盟の人に尋ねると、連盟支部で待っていれば迎えを寄こすそうだが・・・正直面倒。マップを開き、連盟の人に教えてもらおう。


連盟の人は「何なんですかこの魔法!」とか言ってたが、軽く無視して領主の館の場所を教えてもらう。

もう用はない。皆で手を繋ぎ・・・リアが嫌がる。


「大丈夫なのよね?」


「安心して、処分すると判断されたらこの領すべて更地にしてあげるから。どうとでもなるわよ」


互いに笑いあう。不満も不安も何もかもチートで粉砕してあげる・・・そのための力なのだから。



ネスカの領主館の前にいきなり出現した私たち、門番が警戒する前に名乗りを上げる。


「探索者マユです。お呼びと聞き参りました・・・この五人のことでもお話があるので、一緒に入れてもらって構いませんか?」


「どこから現れた・・・」


「転移ですよ。早く聞いてきてもらえません?あんまり遅いと直接乗り込みますよ」


「証明するものを見せてくれ・・・マユという探索者の話は聞いている。本物なら丁寧に対応するように言われているからな」


探索者証明を見せると門を通し、館まで案内してくれる門番。玄関からはメイド?にタッチ交代、応接室に案内されお茶、お茶菓子でもてなされると、メイドからしばらく待ってほしいとお願いされた。クローなんぞは緊張していたのか、ソファの背もたれに体を預けるとだらんと力を抜いている。


話を聞いているから対応が丁寧なのかな?なんだろう・・・こちらを篭絡しようと考えている意志を感じる。だけど、領主は私の力を知らない。・・・つまりカトーの入れ知恵、こちらのことをそれなりに話している可能性が高い。領主への対応はある程度強気でもいいかな・・・多分。


しばらく待つとドタドタと慌てた足音が近づいてくる。何なの?


「おお!あなたがマユ殿か?お待たせしました・・・私からお願いがあるのです・・・これこの通り」


おっさん・・・領主っぽい人が部屋に侵入するなり、床に正座したと思ったら床に手をつけて頭までつけ懇願してきた。何が何やら分からないが、カトーの仕業であることは判明している。この世界に土下座なんて無いから!無いよね?


「やめてください・・・話は聞きますし、できることなら条件次第でやりますので」


「おお!やってくれるか!カトーがこうやってお願いしないと駄目だと教えてくれてな。成果はあるようで安心した。これで娘も救われる・・・」


やっぱし・・・結構偉い人に何てことさせてるんだろう。


領主様をソファに座らせると交渉開始。事情をサックリ聞いて、治せたら治します、駄目なら諦めてね的な魔法契約を交わす。3000万ドーンの大金が報酬である・・・治せることを祈る。もし難しいならナビィを引っ張り出してでも成功させる。迷宮で荒稼ぎの計画が途絶えた今、貴重な収入なのよ!


「みんなも来る?」


「俺らなんかが行っていいのか?お嬢様だろ?めっちゃ気になるけどよぉ」


領主様が豪快に笑うと、バシバシとクローの背中を叩いた。


「小僧、ネスカはやらんぞ。子供たちには来てほしい・・・ネスカのために祈ってほしいからな、一緒に行こうではないか」


皆でぞろぞろと応接室を出る。先頭には領主様、それから私、ついで子供たち。階段を上がる、また上がる、三階には一室しかないようで、どんだけ娘を溺愛しているのかこの人。ドアの前にメイドさん、ドアを開けるためだけに配置されて?いや、この人、私たちを案内してもてなしてくれた人だ。私たちが応接室から出る時もドアを開けてくれてたはず、おかしいでしょ。


疑問を抱きながらもお嬢様の部屋へ入る。大きなベッド、多数の家具、そして少し離れて大きな等身大人形が吊るされている。ん?いやいや何故吊るすのよ。


「お父様とお客様ね。いらっしゃいませ、ネスカ・ハイクリスです」


お嬢様は椅子に座り、等身大の人形を縫っている。あちこちが継ぎ接ぎだらけのそれは痛々しいが、普通に飾るだけならそうはならないでしょ・・・サンドバッグにでもしてたのかな?


「木偶一号は修繕中かネスカ」


「はい、自分で壊して自分で直すのも慣れたものですわ」


手慣れた様子で破れた腕を修繕、人形の腕をくいっと動かす。仕草は可愛い・・・でもその腕を破壊したのも、お嬢様なのよね。


「ネスカ!お前の目を治す先生を連れてきた。今度は自信がある!試させてくれないか!」


耳に響く領主様のデカい声、さっさと治してお金貰って帰りたい。そんなことを考えていると、お嬢様の様子がおかしいのに気が付く。何なのよ、治してほしくないみたいな表情じゃない。


「お父様、ネスカは治してほしくありません。治ったら弱々しい貴族に嫁入りでしょ?そんなの嫌です」


なるほど、目が不自由だからそういう話がない。それは都合が良いらしい・・・って、それは困る・・・金が、金が稼げないじゃないのよ!


「領主様、強制的に治していいですか?面倒なんで」


「お医者様ですか?勝手な真似はやめて下さい」


「うるさいですねぇ・・・うりゃ!」


詳細鑑定・・・水晶体が濁ってるから見えないと、よくわかんない。先天性白内障?

ナビィ君、出番よ。


マユはもうちょっと僕に優しくしてよ。再生の魔法で一発で治るよ・・・っていうか、目自体を作り替えちゃうからね。


ナビィはツェルギによって私に付けられた使い魔みたいなものだし、あんまり優遇するもカトーに悪いかなって。


ツェルギ様にも色々あるんだよ・・・この先、それが少しづつ分かってくると思うよ。


じゃ、分かるまでは便利使い魔としてよろしくね。


さて・・・治し方は判明した。一応は領主様にお伺いをしてみないとねぇ。


「領主様、簡単に治りそうです」


「本当か!良かった・・・ネスカ、お前が軟弱な男には嫁に行きたくないという気持ち、ちゃんと理解しているぞ。そもそも俺が男爵位のままなのは特殊な理由がある。この領は王都を守る要なのだよ・・・ゆえに力なきものはこの領を継ぐことはできない。カカロが強くなればそのままカカロが領主となり、そうじゃなければお前が強い男を見つけ、領主にしたらいいのだ。俺の子は二人しかいない、嫁になんぞ出さぬよ」


「兄様が領主になるものと思っておりました・・・兄様では駄目なのですか?」


「悪くはない・・・が、まだまだよ。最近開拓村でガンドが出てな・・・力の無い小狡いだけの男がそれを倒しおった。最初はその小狡い男は全力で逃げた・・・カカロはそれを聞いて、その男を評価しなかった。ガンドとは俺の騎士団が総力を挙げても、勝てるか勝てないか微妙な相手。逃げるが正解であり、さらに偶然だろうが倒せたら奇跡である。やれない者がやり遂げた・・・評価せねばならぬ」


お嬢様は考えているよう。嫁に行かなくていいなら治しちゃってもいいさと考えて!お金がない恐怖を、カトーの記憶で嫌というほど見せられてきた私には切実な問題だ。


「あのー、治していいですか?」


空気をあえて読まない私。私にとって誰が後継ぎだろうがどうだっていい・・・治したという実績と金が貰えたら充分なのだから。


「治したくて仕方ないようね。いいでしょう、目が治ったら後ろのお嬢さんと闘わせてくださる?」


ほへ?闘いたいとな・・・キールディアのことだろうか?殴る蹴る者同士の波長でも読み取ったのかな。


「キールディア・・・お嬢様がお手合わせしたいって、やってくれる?」


「いいよ、怪我させちゃいそうだから、マユ姉が治療してね」


「言いますわねぇ・・・さ、早く治しなさい」


やべぇことになっちゃった・・・もう知らない・・・。再生の魔法で目自体を作り替える・・・治療は三秒も掛からなかった。


「見えるかネスカ?我はどのように見える?」


領主様・・・嬉しいのだろうなぁ。


「お父様は意外とおっさんなのですね。予想通りのお顔で、あまり感動がありませんわ・・・ルーフェ!あなた私が子供のころから使用人してたはず、何で若々しいの!あなた一体何歳なのよ!」


「お嬢様、淑女が取り乱すものではありませんよ。あと・・・女性に年齢を聞くなんて、お仕置きが必要でしょうか?」


父親より怪しいメイドさんへのリアクションが凄い。子供の頃って何歳くらいからいたのだろう?やばい・・・私にまで視線が飛んできた。こっそり詳細鑑・・・いない!どこいったメイドぉ。


「何者ですあのメイド・・・ルーフェとかいう・・・消えましたよ?」


「俺が妻を亡くして悲しんでいると、何故か王から賜った使用人だ・・・メイドとは何だ?」


「女性使用人の通称です」


鑑定から逃れるとは只者ではない。悔しいのでお嬢様を鑑定・・・ん?予想と違うよ。

お嬢様は己の体が武器じゃない。適正武器・・・鎖、鎖ってどういう・・・あー、魔法だ魔法がそれ系だから鎖なんだ。強化に操作、身体能力でも上がるのだろうか?んで操作で鎖をぶん回すと。

ナビィ・・・そんな感じ?


追加すると力の流れも操作できるみたい。洗脳みたいなのは無理だね・・・自身も武器も強化して、武器を操作、敵からの打撃の衝撃を操作して撥ね返したり、魔法も撥ね返せる。強くなれたら・・・魔法に慣れたら可能といえば可能だけど、無詠唱で力量が上なら可能って感じかな。


ナビィの解説を聞いていると領主様が席を外す。報酬かな?報酬ですね?報酬用意してくるのね!


「マユさん、お約束のお手合わせをお願いしたいのですが」


お嬢様はヤル気だ・・・話しておいたほうがいいかもね。


「ネスカお嬢様、格闘技等で闘うのはやめたほうがいいですよ。あなたの適正武器は鎖、魔法は強化と操作ですから、使いこなせたら・・・うちのリアがお相手します」


「リアさん?彼女は槍使いかしら・・・」


「そうです。己の肉体が武器であるキールディアでは、鎖使いのネスカお嬢様とは相性が悪いので」


「鎖なんて使いませんよ。それに魔法ですって?私が?」


ああ、詳細鑑定の話しとかないと分からないか、しても分からないかもしれないけど。


「私の魔法、詳細鑑定では相手の適正武器、得意な魔法使える魔法を見ることができるのです」


どやぁ!


「適正ねぇ、自分が望む力を自分で手に入れるべきじゃなくて?無いからこそ人は求めるの。適正はあくまでも適正でしょ?鑑定結果は参考程度にしておくべきね」


ぬぅぅ、チートに逆らったって上手くいくはずがないのに。


「いいわ、キールディア相手してあげなさい。あなたの全身凶器を見せる時!」


「まぁ軽くいくよ・・・この部屋めちゃ広いし、ここでいいよね?」


「ではこちらへ」


空いている場所で手合わせ。合図などなく始まる攻防、先手はディアが取った。

ディアの拳はネスカを捉えているはずなのに、ギリギリで躱されている。逆に足を引っかけられ転がされるディア、飛び起き様に蹴り・・・掴まれた。


「ふむ、キールディアだったか・・・悪くはないが経験が違うな。あれではうちの娘には勝てんよ」


領主様・・・贔屓し過ぎでしょ。資質があるのはディア、まだまだこれから。

足を掴まれても引き剥がしにかかる・・・中々外せない。ディアはあえてそのまま押し壁へ、ネスカを壁に・・・離した?ディアが勢い余って壁へ、前蹴りの状態で壁を蹴り反動で振り向くが間に合わない。

ネスカの拳がディアの振り向き様に入る。鳩尾を・・・寸止め?


「強過ぎでしょこの人」


「あなたが弱いのですわ。あなた、碌に稽古もしてませんでしょう?あれだけ動けたのなら、資質というものも馬鹿にはできませんね。あなたおいくつですか?」


「10」


「私は14歳ですから、流石に経験差が大きかったようね」


資質は努力と経験には勝てない・・・大事なことなのかもしれない。カトーが倒したガンドも能力に優れていた、資質が初めからあった。それでも追い込まれた時に相手を騙してきた経験、楽をするためにどうすれば思う通りに相手が動くのか導き出す思考力。そんなものでガンドを型に嵌めて潰した彼を思い出した。


「マユさんは凄い魔法が使えるようですが、上手く使わないと宝の持ち腐れでしてよ」


小娘がぁ・・・落ち着け落ち着くのよ。私はチート私は凄い不可能は無い。


「お嬢様の努力と経験は素晴らしいですね、勉強になりました。それはそれとして色々お話もありますので、応接室へ移動しましょう」


メイドがドアを開けてくれる・・・ぞろぞろと階下へ。応接室前にはすでにいる同じメイドさん・・・双子なのかな?そうじゃなきゃ怖い。応接室に入ると腰を落ち着ける。


「それで話とはなんだマユ殿、この子供たちのことで合ってるかね」


「話が早くて助かります。この子達五人、西の開拓村出身でして・・・壊滅した時のですけどね」


領主様の顔色が変わる。当然か・・・農奴が生きていて目の前にいるのだ。


「農奴の子供たち・・・ということで間違いないな」


「細かく言うなら、ガンドの実験のために、母親五人と共に捕らえられていた農奴の子供たち、ですかね」


頭を抱える領主様。扱いに困るし、その情報はやばいし、問題過ぎてどうしようもないってところかな?私はそれでも切り出す。


「この子達に平民の身分をお与え下さいませんか?今のまま不安定な立場だと生き辛いので」


「処分するという手もあるが・・・それは考えているのだろう?」


「そう考えそうだなとは考えていました。処分されそうなら逆に処分する気ですがね」


「ふん、何を処分するつもりだ?俺か?」


「簡単に言うとカト村・・・開拓村以外のすべて、ですかね」


サラリと簡単に口にする。冗談とかではなく実際に出来てしまうのでこんな風にも言える、言えてしまう。掌に出した思念伝達魔法補助装置でルーディスさんを呼ぶ準備をしておく。怒りに支配された私の初戦闘を目にした唯一の人物、支部長という肩書き、そして長命ゆえの積み重ねられた信頼。あのイケメン詐欺ハイエルフの言葉なら、領主様でも考えるに違いない。


「予想通りだな・・・心配しなくても子供たちへは平民の地位に書き換えはしておく」


肩透かし・・・領主様が折れた?何で?娘の目を治したから?


「意外という表情だな。マユ殿を怒らせる真似は最初からしない・・・ガンドを倒し強き存在への恐怖を知っている者がな、マユ殿と戦うくらいならガンド十体と戦う方がマシと表明した。俺がマユ殿を怒らせたならどうすると問うたら、俺の首をマユ殿に差し出し、許しを請うとさ・・・ガンドから全力で逃げた男が、俺には向ってくると自信満々に言いやがった。力への嗅覚が半端ではない男の言、これほど説得力のある話はあるまい」


カトーへの借りがさらに積もる。村での収入確保に領主への根回し・・・あいつは私を助けることはツェルギの思惑に乗ることだと言っていたけど、充分助けられている。歪んだツンデレってやつなのかな?

私が倒す予定だった白いガンドも、あいつが倒してしまっていたし・・・助けられている気がする。


私は白いガンドがどのような実験をしていたか、その成果や実験のためには人と魔法契約までしていたこと、そして実験により生み出されたギ・ノーマ十五体の話などを領主様に聞かせる。


これからは知性あるガンドが生まれてきて、搦め手まで使うだろうと予想していること。ノーマが発生する根源を探すつもりであること。ノーマ絡みで問題が発生したら、ルーディスさん経由で私を呼んでほしいこと。ルーディスさんと聞いて領主様は少し驚いていた。知り合いの話題に花が咲いていたが、メイドさんから横槍が入る。


「旦那様、マユ殿を訪ねてお客人が来ております」


誰よ?カトーならカトーと言うだろうし、ルーディスさんならそれも同じ。あとは・・・カト村村長?なわけないし・・・あ、多分カトーの回し者だ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 腹の立たないチート。 努力は才能を超える。 [一言] 今回も良かったです。 次回も楽しみにして居ます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ