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そんなものは無いっすよ  作者: G・スー
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カトー、マユにプレゼントを用意する

貴族からのお呼び出し。

お褒めの言葉でさえ正直勘弁してほしいところである。前を歩く騎士の対応具合からして、お褒めの言葉じゃなく、もっと違うことな気がする。そこんところが俺の不安を駆り立てる。


詰め所を出て用意されていた馬車に乗り込む。正確には馬車と言えない・・・セブという魔物を使っているのでセブ車が正しいか?セブは犀のような草食の魔物である。騎士は大体これに乗るし、セブ車は商人なども使用する。この世界には馬がいないので、戦争などではセブに乗って戦場を駆ける。地味に足が速く、突進力がある。ノーマ程度なら轢き殺すくらい大きいので、探索者憧れの乗り物・・・かなり高い。


俺をドナドナしたセブ車は、領主であるハイクリス男爵の屋敷に向かってひた走る。無言は辛いので、情報収集でもしますか。


「聞いてもよろしいでしょうか?」


正面に座っている騎士っぽい人に話しかける。


「何が聞きたい」


「領主様に呼ばれた理由です」


ハッ!と鼻で嗤う騎士。身に覚えがないのかい?自覚あるだろお前って、ニュアンスを感じるハッ!ですな。うぜぇ・・・殴りたい。


「ガンドだ、それ以外あるか?・・・お前が倒したのだろう?」


まぁそれだよね・・・しかしこちらは報酬をもう貰ったし、領主様には用事がないので放っておいてほしいのだがねぇ。


「報告書は騎士団長から届いていると思いますが・・・何か聞きたいことでもあるのですかねぇ」


「アレがか?あんな移動速度と飛翔能力を持ったガンドがいてたまるか!」


俺だって信じたくはなかったさ・・・低速ガンドしかいなかったのなら、俺は全速力で南の森を隠れ進み、大回りしてでもここを目指しただろう。足の遅い、飛べないガンドなら最高だったさ。


「私は卑怯者で臆病者でしてね。見張り台に登り、北の森に見えた白い羽を確認した瞬間に、全速力で南の森へ逃げたのですよ。街道に出て全速力で逃げても無駄だと、ならば発見されないようにしようとね。でなければ殺されると直感しましてね。奴が足が遅い奴なら、私は逃げ切って依頼放棄して違約金払ってましたよ」


「・・・・・・」


ショックか?俺のがショックだったっての。逃げ切ったと確信した瞬間に、奴は目の前に降りてきた・・・あの絶望感、今でも寒気がするね。


その後、騎士から話しかけてくることはなく、セブ車に揺られること十分ほどで領主の屋敷に到着した。到着したはずだが・・・そのまま庭に入り込む。玄関には向かうことなく、屋敷をグルリと回り屋敷の裏へ、そこでセブ車が止まった。


「降りて着いてこい」


騎士は暗く沈んだ声でそう言うと、先を歩き出す。


マスター、やばくないっすか?人目の無いところで、サクッと殺る気かもっす。


無くは無いなぁ・・・それならセブ車に乗せないとは思うが、どうなんだろうね。

八割方大丈夫だと思うわけだが、二割残ってるし絶対ではないな。

大人しく騎士の後に続いて小道を進むと木戸を開けて先へ進む騎士、それをに着いていく俺。しばらく進むと開かれた場所に出る。どうやら訓練場のようだ。


訓練場内に見えたのは、セブに跨って槍を振り回す訓練中の騎士、御苦労なことだ。


「連れてきたぞ」


俺を連れてきた騎士がそう告げる。騎士の同僚か?

訓練中の騎士は兜を脱ぎ、顔を見せる・・・おっさん何してんの?

セブに乗ったままドスドスと近づくおっさんこと男爵、セブ上から俺をジロジロ観察してきやがる。


「おお、確かに魔法契約した男、まだ若いからなんとなく覚えておるぞ」


「また御目にかかることが叶い、嬉しく思います男爵様。探索者カトー、お呼びにより参上いたしました」


貴族怖いしね。媚びていくスタイルでいくぜ・・・ちゃちゃっと用事済ませて逃げたい。


マスター?どうせそのうち煽り始めるのは分かってるっす。無理しない無理しないっす~。


するかよ、怖過ぎだろ。


男爵はスルリとセブから降りると俺の肩に手を置いてくる。


「硬いな・・・敬語は不要、そっちの休憩所で話そうじゃないか。おっと、自己紹介しておらなんだ。俺の名はククル・ハイクリス、男爵をやっておるが元は探索者でな、気楽にしていいぞ」


話せるおっさんだなぁ。でも、こういうタイプが小賢しいパターンなのは読めてるぜ。


訓練場の傍に建てられた休憩所へ、促され椅子に座る。テーブルの向こう側に何故か案内役の騎士も座る。どこから湧いて出てきたのか、メイドが茶を入れてくれる。まったく気配がしなかった・・・やべぇよ貴族、使用人でこれっすか?茶を啜ると男爵の視線を感じる。興味津々ってところか?ガンド戦を詳しく聞きたいなら、報告書にすべて書いてあるし、何なんだろうな。


「要件は簡単なものよ。おまえさん騎士にならんか?」


は?


「何言ってやがる!こいつはガンドを見た瞬間に逃げるよう奴だぞ」


「だからこそ必要だと、分らんかカカロ」


ん?


「えっと・・・そちらの人は部下の騎士じゃなくて・・・カカロってもしかして、息子さんですか?」


騎士改め、男爵の息子らしい男がばつが悪そうに頭を掻く。


「分かるだろ・・・名前から察しろよ。名乗らなかったわけってやつをさ・・・」


恥ずかしいよな。街の名前は自分の名前とかカカロ・ハイクリス君は街と同じ名前・・・街の名前って罰ゲームか何かか?おっさん・・・息子になんて仕打ちを。


「良いと思うが理解してくれなくてな、街に愛着が湧くだろうに。因みにオーエンは妻の名、ネスカは娘だ」


俺は例として加藤渋谷とかイメージする。あれ?こっちのがマシな気がするぜ?俺の親は男爵以下か。


マスターの場合、加藤・・・正に仏っすか・・・どこが?どのあたりが?欠片もそう思えないっす。


喧しいわ!どうしてこんな子に!って、かーちゃんに何度も言われるのがお約束でしたよ。


「俺の趣味は置いておいて。騎士になる件、考えてみる気はないかカトーよ」


「男爵様、カカロ様がおっしゃる通りでしてね。私は・・・いや、俺は卑怯者なのですよ。騎士など、とてもとても・・・務まるとは思えません」


謙遜じゃねぇのが悲しいところだ。だが、俺は自分大好き自己中主義、誰かを守る盾になるなど想像もできない。俺に出来るのは誰かを蹴落とすことだけだ!


マスター・・・そこ自慢するとこじゃないっすよ。


「カカロはまだまだ青い。おまえさんのようにゲスだろうが、カスだろうが結果を残すことが大切ということが理解できておらん」


ああん?事実を言うな事実を。正しくても口にしちゃいけないことってあると思いますよ?


「流石にゲス騎士はまずいですからね。諦めてください男爵様」


「お前は否定せんのだな、挑発には乗らないか」


「事実ですから。開拓村でのガンドとの戦いでも、一番に逃げて・・・その時、村人のことを足止め程度にしか考えていませんでしたからねぇ。民を守る盾たる騎士なのに、真逆の俺を勧誘してはいけませんよ」


騎士は確かに安定職。給金も悪くない額貰えそうだが、この土地に縛られる。一応、魔物狩りやら盗賊狩りで移動はするだろうが、それも領内だけの狭い範囲。しょぼい魔法とはいえ召喚が使えるようになった今、魔力を増やすのを諦める手はない。魔力やら存在力が上がれば、電化製品稼働も夢ではない。

電気どうするって?発電機があるし、なんならソーラーでも水力でも風力でも何でもござれよ。


その為にも騎士に縛られてはいけない。快適な生活が俺を待っているのだから・・・。

男爵は少し首を傾げるとうんうん考え始めた。考えることもないだろうにねぇ。仮に俺が騎士になるなら、鎧はブラックで決まりよぉ。禍々しい感じにする為に赤い線でも入れるか?


「普通なら飛びつく話、お前は何やらやることがあるようだな。勧誘はここまでにしとくか、お前には聞きたいこともまだあるからな」


「聞きたいことですか?ガンドとのあれこれなら騎士団長に絞られてかなり正確に報告させられましたから、付け足すことは・・・特に無いかと」


五時間もな・・・。


「俺が聞きたいのは、お前から見て今後ノーマ共はどう動くかという予測だよ」


「御心配ですか?ですが、ノーマのことで頭が痛くなることは今後減るでしょう」


何せマユがいるからなぁ・・・歩くチートがな。


マスター、マユがこの地を去れば安心はできないっすよ。知能持った奴がまた生まれてくる可能性は高いっす。そいつらが組織的に動いたら・・・この程度の領地、蹂躙されるっすよ?


なるほど・・・ここは足止めを兼ねてマユのことを吹き込んでおくか。


「カトー、楽観するのは危険ではないか?奴と会話したのだろう?奴らは知性を手にした。これからも生まれてきては、組織的に襲い掛かってくる可能性が高いと俺は睨んでいるのだ」


「そうですね。その点は危険ですがノーマにガンドが生まれるように、人間にも恐ろしい力を所持した者が誕生しているのです。凶悪な魔法を操る反則のような少女がいましてね」


男爵は沈黙、カカロは全力で疑いの眼差しですよ・・・そりゃまぁ、仕方ないよな。


「その凶悪な魔法を使う少女は、息子さんと同じ名前の街にいるはず。早めに見つけて丁寧な対応でお願いし、逃がさないのがこの領の為かと。ガンドの恐怖を嫌というほど感じてきた俺が、この少女なら余裕だと自信を持てるほどに強い。万のノーマ、千のギ・ノーマ程度なら一瞬で潰せるかと。ガンドの場合でも民を守りながらなら厳しいですが、自由な状態なら軽く倒してしまうでしょうね」


お決まりの嘲笑、息子さん楽しそうだねぇ。


「笑わせるなよ!そんな強い奴がいるなら、お前が利用しないのはおかしいだろ!」


「御尤も、俺が開拓村での危機を脱した後に遭遇しましてね・・・分かります?凄く悔しかったのが・・・そいつがいればガンドなんて楽に倒せたのですから。その少女の強さを知って、八つ当たりですが殴りかかっちゃいましてね。カカロの街に記録があるはずですよ、俺が少女に殴りかかり連行された記録がね」


「お前・・・そんなことしたのか」


カカロ君、したんですよ・・・理由は違うけどな。


「記録を確認させれば事実だと判明するでしょう。殴りかかり、すべて防がれ、それでも構わず拳が潰れるほどに殴りましたよ。見えない壁に遮られ、無意味に俺の拳が潰れただけでしたけど。その少女は痛そうだと思ったのか、俺の手を癒しの力で治療までしてくれたのですよ、笑えるでしょ?」


「笑えねぇよ、なんだそりゃ」


カカロ君もドン引き・・・だが事実だ、嫌になるほどの事実だ。息子とは違い、何かを考えているような男爵。恐る恐るといった具合に妙なことを聞いてくる。


「その者は癒しの力を使えるのか・・・どの程度の?」


「手を治療したところしか確認していませんが、本人が色々な規格外の力を所持しているようなので、直接御聞きになるのがよろしいかと」


変なところに注目するなぁ。魔法で回復とかあるのだし、珍しくもないだろうに。


「そうか・・・色々戦力としてもそれ以外でも、期待することにしよう」


その言葉にカカロ君が反応する。何?何かあるの?


「親父、ネスカを診てもらうつもりか?」


「俺は親だ、娘に出来ることは何でもするさ」


何かドラマが始まったぞ・・・。娘の話みたいだねぇ、何かの病気とかかな?リンネ、マユって病気の治療出来るの?もし治せるならマユたん恩人化するやん。娘が懐くかもしれないし、男爵の親父はなるべくは手放さないように動きそうやん。


マスター・・・押し付ける気満々じゃないっすか・・・。


馬鹿野郎!善意だろ善意・・・彼女ならきっと救える・・・マユも人助け出来て満足、娘さんも何かしらんが治療してもらえて満足、男爵やカカロ君も家族が救われたら満足。

そして俺も王都での遊びに邪魔が入る可能性が減って満足。パーフェクトだよぉ!

それでどうよ?治せそう?


九割方、治せまっす。どんな病気か不明だから適当ですけど、ノーマ殲滅を目的に送り込んだ刺客ですから、病気とか治せるようにしてるはずっすよ。


それもそうだよな・・・ツェルギは騙してまで連れてきたわけだし、駄目にならんように対策はしてるか。


「ちょっといいです?」


二人に一応聞いておきますか。


「ああ、お前には話してなかったな。娘は生まれた時から目が不自由でな・・・その件の少女に治療できる可能性があるなら、娘の目の治療を頼んでみようかと考えていたところだ」


聞く前に男爵が語り始めたわい。しかしあれだな、これは定番キターと言うべきか?

でもまぁ俺は丸投げするだけだし、どうでもいいか。お約束なら俺がチートで治療、回復した娘さんが俺に惚れる!みたいなパターンなんだが・・・。


そんなことは無いっすよマスター。


ですよねー、知ってた。そもそもチートがねぇんだよ!糞ぉ!


無いといったのは惚れられたりしないって意味っす。治療はマスターでも可能っすよ、微妙っすけど。


マジでか・・・もしかして召喚魔法?


そーっす、その娘さんの眼球を取り出して・・・召喚した眼球と入れ替えて、軽く回復魔法でくっつけたら移植完了っす。マスターの元いた世界で謎の両目消失事件が発生するっすけど、関係ないっす問題ないっす!


うわーい、妖怪の仕業じゃ!とか盛り上がりそうですなぁ。てか、そんなんで治るか?


治るか不明っすね、だから微妙なんすよ。


俺がやる必要はないな。失敗してへこんでも責任取れないし、そういう役目はチートにやらせときゃいいさ。合理的ってやつだ。


俺は茶を啜ると、マユのことを男爵たちに垂れ流す。その娘にどう対応するか、何をやったら不味いか、カカロ君と歳は変わらんし要注意すること。出来るだけこの領で足止め喰らっておけやという私怨をぶつける。ただ・・・扱いは慎重に、カトーから聞いたとバラされるだろうから、問題になると俺が困る。俺が恨まれたりな・・・大丈夫だよな?適材適所だし。


男爵もカカロ君も期待半分、不安半分でそれに耳を傾ける。不味いこと以外はマユの容姿まで克明にバラすと、対価なのかセブ車を利用して武器屋にまで行かせてもらった。適当な剣、購入。その足でそのままオーエンに送ってもらう。


いやぁ、良い事すると気分がいいね!

目の不自由な可哀想な少女を助けるがいいさマユ、チートへの俺からのささやかな贈り物だ。

主人公はなんやかんやで病気を治療する為に色々やんのは定番だろ?

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