ロト6って一度でいいから当たってみたいよな
原田、行っちゃった。大丈夫かな。喧嘩にならなければ良いけど。
あ、皆さん元気ですか? 毎度おなじみ、泡沫杏佑です。今僕はファーストフード店の入り口で、トラブルに巻き込まれているらしいゆりかを助けに行った原田を待っていると言う、情けない状況にあるわけですが。
「ま、僕が行ったところで何もできないけどね」
そう、今まで普通の日常に埋もれていた僕は絡まれた好きな子を救うために喧嘩、なんて言う経験がないため、喧嘩したら多分かなり弱いはずだ。
それにしても、原田遅いな。大丈夫かな。
ポテトをかじりつつ、原田を待っていると、頭上から原田の声がした。
「泡沫お待たせ」
「あ、どうだった?」
原田の言い方がデートの待ち合わせみたいなのは、この際無視して、ゆりかの無事を確認。
「大丈夫だよぉ」
背の高い原田の脇からひょこっとサーモンピンクの頭が覗いた。
「おう。良かった良かった」
「ていうか、何で杏ちゃんは助けに来てくれないのよう」
ゆりかが頬を膨らませる。あっ、いつも怒るときこの顔なら可愛いのになあ。
「仕方ないよ。俺が泡沫にここで待っておくように頼んだんだ。金を払わずに店を出るわけにはいかないだろ」
「ふぅん」
まだ納得がいってなさそうなゆりかを余所に、何が起きていたのか気になるため、聞き出しにかかる。
「ま、そういうこと。で、何の騒ぎだったの?」
「はうっ……クックックッ……あははは!」
「原田!?」
突然原田が笑い出した。ああ、またゆりかが何かやったな。
「ちょっと、原田君酷いよ。ゆりか原田君が来る前に解決してただけ!」
「だってさ」
原田が目に涙を溜めて笑ってる。
「で?」
「あのね、ゆりか可愛いでしょ?」
あれ、自覚済みかよ。
「う、うん」
「だから、原田ファンクラブの人が付き合ってるのかって聞いてくるから、ただの友達だよって言ったのね」
すげえな女子って。例え好きな子がいても、僕ならその子と付き合ってるかなんて聞けないよ。
「そしたらさ、杏ちゃんとも仲良い癖に二股かけんなって言うからさあ」
「全くもって誤解だな」
「そうなの。しかもなんか、向こうがキレだしてさ」
「うわ、最悪だ」
「ゆりかの髪を掴んできたのね」
「女子怖ええ!」
あ、因みに原田はまだ爆笑中。
「だからあ、ゆりかがキレて怖い顔しらさあ、一瞬で離れるんだもん」
そりゃそうだろ。ゆりかのキレ顔怖いもん。原田が腹を抱えてヒイヒイ言ってる。もしかして、ここがツボなのか?
「で、それを原田が見てたわけ?」
「そう。相手が女子なら、きっと萩本さんのほうが強いと思って」
絶対半分は自分がゆりかのキレ顔見たかったからだ。
「ええー。そんなんで見とくかよ。原田ファンクラブの子達なんだろ? 原田が出て行けば一発じゃん」
「俺が出て行って萩本さん庇ったらまた勘違いされるだろ」
「そうか」
流石は原田、頭が良いよな。しかし凄いな、原田ファンクラブ。
「原田ってやっぱりモテモテだよな。ファンクラブがあるし」
「ん? そうか?」
「だってファンクラブだぞ?」
「うんうん。しつこかったよね。原田ファンクラブ」
「でも、泡沫だってファンクラブできてんだろ? 何も凄くねぇよ」
あ、え、あれマジなの!?
「うぇぇええ!」
「ええー! 杏ちゃんファンクラブできてるの!?」
僕だって今日はじめて知りましたよ。
「多分」
「ええー! 嫌よそんなの!」
ゆりか……? ま、まさかお前、僕のこと……
「今日みたいなことが増えるんでしょ? ゆりかもう髪掴まれたくなんかなぁい!」
あ、そっち? ちょっと期待した僕がバカみたいじゃん。そんなことを言っていたら、知らない学校の女子が話しかけてきた。
「あの……」
「ん? 何か用?」
原田が慣れたように対応する。
「若林学園の原田君だよね?」
「ん、そうだよ」
「あの、今度私と遊びませんか?」
え、凄い展開だなこれ。原田がデートに誘われている。
「ごめん、俺今彼女作る気ないんだわ。コイツらとフレンドリーライフしてる方が楽しいや」
「……」
「だから、ごめん」
「何よ! 勇気出したのに!」
うわ、修羅場。でも原田は慣れてるらしくて、冷静に対応した。
「ほらね、そうやって逆ギレして俺に好かれようってのがまだまだだよ。用が済んだなら帰ってくれる?」
「……」
他校女子は無言で帰って行った。原田、恐るべし。
「んじゃ、カテキョ始めますか」
「うん」
「張り切っていくよ、杏ちゃん!」
修羅場をあっさりと交わした原田に驚きつつ、僕達が店を出ようとした時だった。
「あの、泡沫ちょっといいかな」
「真鍋さん?」
何故か僕の目の前に真鍋さんが。どうしたのかな。次回に続くよ!