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3度目の正直とか言うけど僕は信じていない

 僕の姿を見ると倒れ込む数多あまたの女子。皆さんこんにちは、毎度ご愛読感謝します。ある日突然、偶然拾ったメガネによってイケメンとやらになってしまった元普通の高校生、泡沫杏佑です。……うわ、自分でイケメンとか言うのって引くよなぁ。

 ところで今僕は何をしているかというと。

「あのさ、持ち主にこのメガネ返した方が良いと思うんだ」

 クラスの友人・山咲君とその愉快な仲間達に、メガネのことを相談中。あれから3日たったから、一度は裏切り者扱いされていた僕も、誤解(?)が解けていつも通りクラスの友達と会話を楽しんでいる。そう、何も特別じゃないけれど、これこそが僕のザ日常なのだ。でも一度崩れた日常が戻ってくるのはなかなか難しいみたい。

「返す? いや、もうメガネ美男子定着しつつあるぞ、お前。今更メガネ外されても多分、何か物足りなくて俺達が落ち着かない」

「そ、そうか?」

「ああ。正直男の俺達から見てもお前本当に格好良くなったしな」

「そうだな」

「そのままがいい」

 え、何ですか、もしかして僕が普通に戻ることを反対されている? 不味い。これじゃ、皆が敵じゃないかぁぁああ! この状況を何とか打破しなくては、僕はもう平凡には戻れない。僕がメガネを外そうと手をかけたときにそれは現れた。

「杏ちゃん……」

 僕の視界にサーモンピンクのサラサラボブが。

「ゆ、ゆりか」

「私に黙ってメガネ外そうとしたわね?」

 もうヤダこの子! 笑顔が脅迫材料だってば!

「ゆりかちゃんだ!」

「可愛い!」

「好きだー!」

 いや可愛いか? 見た目はそうだけど、僕には最近可愛いことこそが恐怖なんだけど! まぁ仕方ないよね。ゆりかは学年アイドルだしね。

「こんなに怖くても学年アイドルだしな」

「何か言った?」

 うわぁぁああ怖ぇえ! 笑顔で首を傾げてる! 長い付き合いだからわかる笑顔の裏の殺意!

「泡沫はいいよなぁ」

 不意に、山咲君が呟いた。

「ん、何が」

「友達たくさんいるし、ゆりかちゃんと幼なじみ」

 ゆりかと幼なじみ、あんま良いことないぞ。それに友達はたくさんいても、山咲君みたいに後藤君という親友はいないしな。あ、何か今軽く落ち込むこと考えちゃったな。いかんいかん。こんなとき原田がいたら、あの気持ちいいくらい爽やかな声で笑ってくれそうだぜ。

「おーい、萩本、泡沫」

「あっ原田」

 すげえ本当に来たよ原田。アソパソマソのバタ○さんくらいのベストタイミングだ。

「あっいけない、ゆりか原田君のこと忘れてたぁ」

 うぉおい! 原田が可哀想じゃねぇか。

「あー……ごめんな原田。どうせゆりかが呼んだ癖に忘れられてたんだろ?」

「多分。でもいいよ。そんな待たされてないし、泡沫のクラスじゃないかと思ってたし」

 え、笑顔が爽やかだ! 原田って本当。

「原田って本当に良い男だよな」

「え、何か照れるな。そんなこともないぜ。ちゃんとワルやってるし」

「そういうことじゃなくてさ、お前の飾らないとこがまた良い男っつうかさ」

 ていうか、僕原田にこんなこと言える立場じゃないよな。そんなことを考えていたら、山咲君が肩を組んできた。

「泡沫ってさ、本当に友達多いよな。原田なんかクラス遠いだろ。しかも泡沫と原田が並ぶと爽やかだし」

 え、そ、そうか? 爽やかなのか?

「きっと2人がイケメンだからだね」

 ゆりかがにっこりと微笑んだ。うんうん、そう言う笑顔は可愛いよ。山咲君達も思わず見とれてる。そんな可愛い笑顔で言われたから、僕も原田も照れてしまった。そんな僕達を横目に、山咲君が思い出したかのようにゆりかに同意した。

「今の会話自体が爽やかだしな」

「山咲君なに言ってるんだよ」

 今まで男から誉められた経験がない僕も戸惑ったけど、原田も初対面の奴から誉められて少し戸惑ったみたいだ。

「えと、山咲君? そんなに爽やかかな、俺達」

 原田が赤面してる。何かイケメンってもっと自信たっぷりなもんだと思ってたけど、原田ってそんな感じじゃないよな。

「あっ」

 原田と言えば、ゆりかに呼び出し食らった(呼ばれた)んじゃなかったか?

「そう言えば原田さ、ゆりかに呼び出……呼ばれたんじゃなかったか?」

「あ、そうだね」

「ごめんね原田君。私忘れる気はなかったんだけど、杏ちゃんがね」

 ゆりかがこちらを睨んできた。うっ。だってメガネの持ち主困ってるかもじゃないか。

「僕が、メガネを持ち主に返そうか相談してたんだ。で、外そうとしたらゆりかが……」

 原田はよほど可笑しいのか、目に涙を溜めながら笑っている。

「クククッ。あー俺、猟奇的な萩本ツボだわ」

 原田よ、僕は苦労しているのだぞ。

「しかもさ、そのメガネ」

 原田は更に眉根を寄せて、堪らない、と言うような表情になる。

「持ち主を知っているのか?」

「俺のなんだ」

 ん? 織さん? それとも織君か。いや、ち、違う。まさか原田のか!

「えぇぇええ!」

「いやね、一回遊びでつけたら似合わなくてさ。だからそれ、泡沫にやるよ。お前の方が似合ってる。それ、結構高かったんだぜ?」

「……」

 う、嘘だろ。こんな偶然あってたまるかちくしょう。

「いやあ、でも落とした自分のメガネのおかげで泡沫と友達になれたわけだから、無駄じゃなかったんだな」

 目の前で爽やかに笑う原田に、僕はありがとう貰っておくよとしか言えませんでした。


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