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1日の始まりは牛乳から

「山咲君ー? 山咲君! 何故逃げるんだぁぁあ! もしかして急に、一昨日君が僕の宿題を写したとき、僕の学力が普通なことを忘れていて先生に当てられた場所が間違っていたことをまだ恨んでいるのかぁああ!」

 泡沫杏佑うたかたきょうすけ17歳、ただ今廊下を疾走中。メガネをかけたら突然、友人から裏切り者扱いをされてしまった可哀相な凡人である。僕の問いかけに、前方を猛スピードで駆け抜ける友人・山咲君が振り向いて否定する。

「んなこと今言うな泡沫!」

 そう言うと山咲君は猛スピードを保ちつつ、急カーブ。そんな高度な運動に凡人の僕が着いていけるはずもなく。

「ぐあはっ!」

 もちろん躓く(つまづく)。しかし躓くことに慣れた僕は顔から突っ込まないようにガード。その躓き方の派手さに、1人の女子生徒が声をかけた。

「杏ちゃん、大丈夫?」

 そのサーモンピンクのサラサラヘアがボブで可愛い少女はあろうことか、僕の幼なじみ・萩本ゆりかである。

「うぅ……ゆりか……」

 僕が顔を上げると、ゆりかは少し驚いた顔をする。

「メガネ……!」

「あぁ、コレ? 外すの忘れてたよ」

 そうだ、外すの忘れてた。何かいつもと違う気がしたんだよね。

「あっ! 外さない方がいいよっ。杏ちゃん」

 突然止められた。え、でもこのメガネ、ダテだよ?

「?」

「そのまま廊下を一往復してみて。毎日が変わるかも」

 そう言うとゆりかはその小さくて指先の細い手を差し出してくる。

「毎日が、変わる?」

 この、平凡過ぎる毎日が? 変わると言うのか、メガネをかけることで。

「いいから、メガネかけたまま廊下を歩いてみてよ!」

 ゆりかに促され、立ち上がる。何が変わるというのか。

 しかし予想に反して、メガネの効果はすぐに現れた。横を通り過ぎようとした女子が振り向いてじっと僕を眺めただしたのだ。それは、以前僕が軽く傷付く言葉を言われた女子生徒。

「泡沫!?」

 あんまり凄い形相で見てくるから、ちょっとビックリ。

「ま、真鍋さん」

 次の瞬間、真鍋さんは口をパクパクさせて、赤面している。どうしたのかな。

「真鍋さん?」

「泡沫がイケメェェェエエン!」

「は?」

 そう言うと真鍋さんは走り去ってしまった。え、今……

「今、イケメンって言ったよね」

 僕は未だにハッキリしない頭で、必死に考えを巡らせた。

「ゆりか、鏡」

「はいっ」

 まさか、メガネをつけることでイケメンに見えるメガネだったりして? ハン○ムスー○的な? ま、そんなまさかなんて鏡を見れば一目瞭然なはずだ。さぁ、いらっしゃい現実。僕はゆりかの手鏡を覗く。

「いやまさかだこれ!」

 そこには、イケメンがいた。でも、顔のパーツが変わったわけじゃなくて、今まで僕の顔に足りなかった何かが追加されたような感じだった。

「杏ちゃんって、イケメンになるには何かが足りない感じだったけど、メガネだったんだぁ」

 感心したかのように言うゆりか。

「ちょっと失礼じゃね?」

「あは、ごめーん。でも、毎日が変わりそうでしょ」

 鏡の中の自分を見てみる。自分で言うのもなんだが、確かにイケメンだ。頭の良さそうな、インテリ系イケメンって感じ? 山咲君が裏切り者扱いをしたのがわかる気がする。

「まぁ、ね」

「ほら、廊下歩いてみなよ。皆ビックリするよ!」

「うーん」

「いいからいいから!」

 僕はゆりかに背中を押され、しぶしぶ廊下を歩き出す。

「イケメン!」

「裏切り者!」

「イケメン!」

「裏切り者!」

 女子からはイケメンの名声が、男子からは裏切り者の汚名が。僕はどうやら、本当にイケメンになってしまったらしい。あぁ、どうなるの僕の日常。

「ゆりかぁ、やっぱりメガネ外した」

「ざけんなよ?」

 うわあ笑顔。可愛いゆりかがすると何故かホラー!

「でも一つだけ気になるんだよね」

「ん? 何が?」

「イケメンになっても普通の学力アンド体力は変わってないんだよ」

 あ、そうでした♪

「と言うわけで明日から、学年一のイケメン・原田君にイケメンとして身に付けるべき学力アンド体力のカテキョしてもらいます!」

 あ、何だろうこれ。日常が変わりすぎてカルチャーショックってやつ? 僕は目眩がして、気がついたら、保健室にいたんだ。


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