12って……特に何も思いつかねぇな
大学祭が始まったので忙しくて更新遅れました。すみません。
「さて、英語やりますか」
メガネの上げ方で十分ゆりかを楽しんだのか、原田大天帝がご命令を下さった。
いやぁ、前回は皆が暴走してしまい、久しぶりの大混乱になりましたね。あっ、泡沫ですよー。
「じゃあ泡沫、長文の特訓から行くか?」
「うげっ。いきなりか。スパルタだなぁ、原田は」
「何言ってる。泡沫や萩本を俺と同じ大学目指せるくらいにしなきゃだろ」
は、原田……! 何て素晴らしい友情なんだ!
「原田……」
「原田君……」
「それにさ、長文って実は色んな分野の問題が出る、つまりは、総合問題なんだ。沢山解けば、効率良く勉強できるってこと」
「原田!」
「原田君!」
「なっ。効果的だろ?」
「ああ! 早くやろうぜ! 100問くらい!」
「ああ! じゃあまずは、単語の数が少ない問題から10問、で、ボキャブラリーを増やしてから、単語の数を増やした問題に移っていくぞ」
何か、やっぱり原田はすげぇ。努力してるんだな。こんな勉強の方法なんて、思いつきもしなかったぜ。
「ここはさ、泡沫がbarvalの意味がわかってないから解けてないんだ。barvalの意味は、言語のまたは言語だろ」
「あっそうか。うーん、ボキャブラリー少ないな」
「ゆりかついていけないよ」
そんな感じで今日の英語は終了。ゆりかと家路についた。
原田にカテキョをして貰うようになって、2人で帰ることが増えた。
「こんなの、小学校以来だな」
「うん。ねぇ、杏ちゃん」
突然、ゆりかが立ち止まった。
「ん?」
「原田君、良い奴だね」
「うん」
「ゆりか、好きかも」
「うん、え?」
ゆりかが原田を、好き? そ、そんな……!
「マ、ジ?」
「……」
黙って俯くゆりかの顔は良く見えなかったけど、きっと頬を染めているのだろう。僕は一応、確認してみる。
「え、それって、原田に惚れたってことか!?」
「……大きな声で言わないでよ」
ゆりかは、恥ずかしそうに俯いた。こりゃ、マジだな。僕じゃなくて、原田が好きなんだ。仕方がないけど、応援しなきゃな。
「そ、そうか」
そんな、と言いそうなのを、必死に止めて言ってやる。何か、ちょっとショックだ。
「……杏ちゃんのバカ」
え、僕何かゆりかを傷つけたのかな? それとも何か間違ってる? うーん、女子って未知の生き物だ。
「は?」
「杏ちゃんのバカ!」
ゆりかは暗い夜道を走り出してしまった。いけない、危険だ止めないと!
「ゆりか!? 夜道を1人で行くと危険だぞ!」
「知らないもん!」
更に小さくなるゆりかの背中を追いかける事もできずに、僕はただ、唖然として佇んでいるしかなかった。