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「それで、手がかりはつかんだのか?」
携帯から声が聞こえている。
三十とそこらの男の声。
「もちろんだとも、点睛のおかげで収穫はあった。しかし首を突っ込みやすいのは彼の欠点かな。」
声の調子が高いのが自分でもよくわかる。
点睛の変わりようがうれしいのだろう。
実際、会ったときと比べると別人なのだから仕方がない。
「はぁ、そりゃアンタもだろ。」
「それを言われてはぐぅの音も出ないね。」
実際彼の学習元は私であることが多いのだろうから私に似るのであればそれは道理なんだろう。
「自覚あるんなら…いや落とし子のことはいいや。
それより手がかりをつかんだならすぐにでも人がいるだろ。何人だ?」
「そうだね、あまり多いと逆効果だろうから―――。
矢島さんいつものように車お願いね。」
「だと思ったよ畜生。
適当に待ってろすぐに行く。」
呆れた様子で彼が了承する。
文句は言っても律儀に来てくれるところが彼の長所である。
いやなんだ。無茶ぶりでも大概は付き合ってくれるのだからつい頼んでしまう。
「ああ待つとも、しばらく調べものをするから少しは遅れても大丈夫だよ。」
そういって通話を切る。
視線を上げれば、様式の屋根と校章が目につく学校がたたずんでいた。今はジャージを着た学生の姿がいくつかあるのみであり、平日ほどの人通りがない。
「今頃は部屋を調べてる頃だろうけど、点睛はちゃんと助言できているかね。」
とはいえ、学生に任せきりではいけない。
万が一があってはあちらも黙ってないし。
手伝えるくらいには調べておいたほうがいいだろう。
「キミ達、今大丈夫かな。」
「はい?え、なんすか?」
話している青年たちに声をかけると彼らは戸惑いながら応じる。
警戒がないのは楽でいい。
「ちょっと失礼。」
そう口に出して目を合わせる。
うん、大体は予想通り。
少し妙だがそのほうが辻褄があう。
「だけど、そうか。そうなると彼女では気づけないか。」
もう一度マエシロミキが青年達と目を合わせると今度は何もなかったかのようにまた話し出した。
さて、もう何人か視ておこうかな。