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「―――まぁ、そううまくはいかないよね…。」
一軒家の一室。少し埃の舞う部屋のカーテンを開けながら私と点睛くんは立ち尽くしていた。
家に乗り込み意気揚々と事情聴取をしようとした私たちはユキナさんの母親に「普段と違いはなかった。」とわりとスムーズに出鼻をくじかれてしまったのだ。
そのため、母親への話を早々に切り上げて部屋を捜索させてもらっているのである。
「大丈夫ですよ、ミキさんもちゃんと調査しているんですから手がかりが少なくてもきっと大丈夫です。それより、しっかりこの部屋を調べないと。」
「そうだよね…。」
点睛くんの気遣いが身に染みる。
わかってはいたけれど、やっぱり彼は以前からこういう仕事を手伝っていたのだろう。さすがに慣れてる。
調査の事情説明も全部やってくれたし。
ワタシ、イイトコナシ。
「それにしても―――。」
この部屋は埃が多い。
床は絨毯が敷いてあるからわかりづらいけど、机にまで埃がたまってる。ユキナさんがいなくなったのは金曜日だから、一日でここまではならない。加えてベットは皺が多いから―――。
「この部屋でユキナさんはベットに潜る毎日を過ごしてきたんだろうな…。」
「そうなんですか?」
「うん。引き出しも取っ手に埃があるし。他にも私服がクローゼットの奥にしまってある。あまり着てなくて普段から外に出ないような生活なんだと思う。」
こういうのはよく知ってる。
他人と隔絶された生活。
人との関わりが少ない人生を私は知ってる。
そっか。
普段と変わらないって。
「相談なんてできなかったんだ。」
「え?」
「ううん、なんでもない。
でも困ったなぁ。」
ゴミ箱を覗いてもかろうじてティッシュが捨ててあるだけ。
埃の被った部屋には生活感が少なく、家出したユキナさんがどこを目指すかを示す手掛かりなんてどうにも探し出せそうになかった。
「ここもどん詰まりかぁ、そりゃそうだよね。
通報もしたって言ってたし手がかりなんてないか…。」
ユキナさんの母親は私たちが話を聞いた時、行方不明を警察にも通報したことや今朝にはその調査に警察官が来たことも話してくれた。先に警察官が来たとういうのなら、あらかたの有力な糸口は調べつくされたということは想像に難くない。
まぁ、そのおかげで私たちは出鼻をくじかれてばかりなのだけど。
ただ妙なのは、調査をしに来たにしてはこの部屋が調べられていなかったということ。でも行方不明の調査なら顔写真と目撃情報で行うのが普通なのかな。
「そうですか?僕には順調に見えますけど。」
「順調?どういうこと?」
滞った調査を見て順調と言った点睛くんの発言によって長考に潜りかけていた私が浮上する。
「いえ、だって過去視をするなら。それでいいと思いますけど。」
―――あ。
ついさっきミキさんのところで言われたばかりのことを思い出す。
そうだ、私がするのは推理じゃない。
ううん。推理したとしてもそれも過去視の情報を集めるため。
結局ユキナさんの行き先を知るためには過去視を使うんだから私が調べるべきなのは―――。
「そっか、ありがとう点睛くん。
私にはユキナさんの人柄が必要なんだ。」