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 子供の頃から私には変なものが見える。幽霊とか、妖怪とか多分そんな類。触れられないし、他の人には見えてない。

 なのに、私はそんなこと知らなかった。そこに在るものは誰にとっても在るのだと信じきっていて、いつだって訴えかけていた。

 車に轢かれた猫が平気で歩くのを見たと。

 亡くなった祖父が布団で本を読むのを見たと。

 そこにあるはずのない現実を、私は見たと。

 良識のある親がそうした子供を見て頭がおかしいと判断するのは当然だろう。だって、いつだって間違っていたのは私なのだから。それからすぐ、私は田舎にある親戚の家に預けられる。わかりやくいえば私は社会から隔離されたのだ。受け入れられない子供として。

 それが、数年前。

 そう、今私は数年かけて社会に戻ってきたのでした。

 適応するために嘘で私の視界を塗りつぶしながら。

 世界の一部に蓋をして、みんなの求める私になって。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 手を握られておる。

 男の人の大きな手。

 振り返れば何やら必死な表情で同い年かという男の子が私を見ていた。

「は、はい」

 はて、私は一体何をしようとしていたのか。記憶を掘り返し自然と飛び降り自殺を図ろうとした自分に背筋から冷や汗がこぼれ落ちた。

 この人が止めてくれたのか、いやいやそれより私はそこまで疲れていたのか?待て――まずはこの人と話をしなければ。

「何ですか」

そう尋ねると男の人はすぐに表情を変えていく。

驚きと、困惑と羞恥、そうしてから。

「大丈夫ですか?ちゃんとご飯食べてますか?」

 なんともまぁ母親かと思うほど素っ頓狂な質問を問いかけきた。困惑、しかるのち返答をと口を開こうとすれば。

「食べていないのなら、そこのファミレスによって行きませんか!」

 続け様にまた問いかけられた。

 これは新手のナンパか、私にもついに春の到来か、大して押し寄せもしない期待を想像しながら私は自身の意とは反する返答をする。

 ――グゥゥゥ――。

 お腹で。

 顔が赤くなってゆく。

 こらえきれない羞恥が身を熱くする。

 どうしようもなく逃れることのできなくなった私は最早お手上げと食欲にてストレスを発散することに決めたのである。

 「たべ、ます…」

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