表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

短編集

子育て支援について聞いた話をもとに色々考えてみた

作者: よぎそーと
掲載日:2019/09/26

子育てやら育児やらへの手当を充実させたらこんな事になったと聞いて。

だとしたら、その先がどうなるのかも考えてみた。

「あーあ」

 ため息。

 投げやり。

 悪態。

 それらが渾然となった会話が続いている。

「俺らが働いた金が」

「ハーレムに使われるなんてねえ」

 彼らの嘆きはここに集約されている。



 育児支援の制度。

 これにより結婚が極限まで減少してしまっていた。

 当たり前と言えば当たり前だろうが、結婚しなくても育児に必要な支援が得られるのだ。

 となれば無理して結婚する必要もない。

 自分の好みの男との間に子供をもうけ、あとは育児支援を手に入れて子育てをすればよい。

 このため、未婚のまま子供を生む者がかなり増えていた。



 そして、これも当然というか妥当な流れであろうが。

 女は自分の好みの男だけを相手にする。

 結果として全く相手にされない男が発生する。

 好みは人それぞれなので、これは仕方が無い事ではあるだろう。

 誰だって嫌いな人間と付き合う事は出来ない。

 やってやれなくは無いが、多大なる苦痛を抱える事になるだろう。

 しかし、それならそれで、育児は子供をもうけた者が担ってもらいたいものである。



 この場合であるならば、子供の父親と母親が責任をもって子育てをしてもらいたい。

 その負担は両親がなすべきであろう。

 だが、育児支援のせいでこれが崩壊している。

 なんとなれば、世の納税者全員が負担をしてるのだ。

 そこには当然ながら結婚してない男も含まれる。

 自分の子でもない、赤の他人のガキをだ。

 不満が出るのも当然だろう。



「税金、また上がるってよ」

「どうせガキのせいだろ」

「ふざけんな」

 そんな声や思いが出て来るのも無理のない事である。

「なんで他人のガキを」

「社会で子育てだ?」

「お前が育てろ」

「自分の事だろ」

 責任を押しつけられてる方はたまらない。



「本当に、どうにかならねえかな」

 誰もがやるせない思いを抱いていた。

 しかし、この制度を覆す方法は見あたらない。

 社会正義となってしまった『子育て支援』を誰も否定出来ない。

 口にすればそれだけで社会(を名目にした一部連中)からの制裁を受ける。

 迂闊に口にする事も出来なかった。

「ふざけやがって」

 つのるのは不満だけであった。



 ────と思われていた。



「別にいいんじゃない」

 それは世間のほんのいっかくで上がった声だった。

「やりたいならやらせてやれよ」

 そう言ったのが誰なのかは記録には残ってない。

「女からすれば、少しでも良い男とヤリたいんだろ」

 情け容赦のないこの事実から始まる提案は、それでも人々の記憶に残っている。

 主に、負担を強いられた者達の。

「となりゃあ、そんだけイケメンなんだろうよ」

 だから女が群がる、という悲しい事実を相手にされなかった野郎共は感じた。

 ひるがえって、自分らが女の要求水準に到達してなかった事を思い知らされる。



 胸が痛み、ストレスで胃に穴が空きそうになった。

 頭ははげ上がり、更に身体の一部に様々な問題を発生させそうになる。

 鬱も患い体を動かす事も困難になりかねない。

 ストレスというのは、心の重荷というのは恐ろしいものである。

 だが、当然ながらこの話はこれで終わるわけがない。



「だったら好きなだけ作らせようぜ。

 そんで、その負担を背負ってやろうぜ」

 何を言ってるんだ、と誰もが思った。

 しかし、その次の瞬間に、なるほどと誰もが思った。

「その分の配当はしっかりもらおう」



 そして、時は流れ……。



「ようやくだな」

「長かったなあ」

 誰もがこの瞬間を待ち望んでいた。

「これが俺達の育てた……」

「立派に育ったもんだ」

 感動の声があがっていく。

「それじゃ、早速」

「順番はくじ引きの通りで」

「ああ、早く選んでくれ」

「それじゃお先に…………三番か」

「俺は、五番だ」

「じゃあ、次は俺な」

「なるべく良い順番になりますように」

 そんな事を集まった者達は口にしていった。

 全員、これまで人生でおそらく最良の笑顔を浮かべながら。

 しかし、くじ引きをしてる者達以外はたまらない。



「んんー! うぐううううう!」

 猿轡のせいで、上げる事も出来ない悲鳴をくぐもった声にしてあげている。

 拘束され、身動きができなくされて。

 そうして頃がされてるのは、うらわかき少女達。

 いずれもそこそこに見目麗しい。

 そんな彼女らを、集まった男達は嬉々として見つめながら順番を決めていった。



「それじゃ、一番の俺から……」

「おう、早く決めてくれ」

「あいつを外してくれよ」

「俺の好みが残ってますように……」

 くじ引きで決まった順番通りに男達は捕らえた娘を選んでいく。

 選ばれた娘は、抱えられて別室へと連れていかれる。

 そこで何が起こるかは、言うまでもない。



 制度施行によって生まれた子供達がそれなりに育った頃。

 かつて負担を強いられていた者達は、負担の配当を手にし始めた。

 制度として成り立ってるものではない。

 当事者達が自発的に徴収してるだけだ。

 違法と言えば違法である。

 だが、取り締まる者がいない。



 警察などは一応存在する、取り締まる力として機能してない。

 事実上の野放しとなっている。

 あるいは、不文律による合法化と言うべきか。

 中枢や上層部はいざしらず、実際に現場を担当する者達などは全く動こうともしなかった。

 それどころか。



「おう、やってるか」

「あ、来たか」

「いや、立ち寄っただけだ」

 巡回に出てる警察官が、立ち寄った先で会話をしていく。

「まあ、異常はないと思うが」

「ああ、そんなもん無いさ」

「だろうな」

「平和なもんだよ」

 そんな事を言いながら適度に談笑をしていく。

「でも、何かあったら通報を」

「分かってるって」

 そう言って警察官は立ち去っていく。

 彼の見てるその先に、捕らわれた娘達がいるのに。

 その姿をその目で見てるのに。

 しかし、警察官はそれらを無視した。

 そして。

「通報のあった所に行ったが、特に異常はない」

 無線で経過を報告する。

 それでこの件は終わりとなる。

 そこにあった事実は無かった事になり、姿を消した者達は発見される事もなく消えていく。

 このような事が国内のそこかしこで発生した。



 彼等にしても負担を強いられた側である。

 どちら側に立つかなど言うまでもない。

 虐げられてきたのは彼等とて同じである。

 ならばその分の穴埋めを求めてもおかしな事は無い。

 それを与えてくれないならば、自力で手に入れるだけの事である。



 国内から一定の年代の少女達が消えていった。

 対応は遅々として進まない。

 心配する母親達は何とかしようと行動をしていったが、それも芳しい成果を上げる事は無かった。

 また、子供達の父親もさして懸命になりはしなかった。



 彼等からすれば、行きずりで交わった相手の子である。

 その数は膨大で、とても対処しきれるものではない。

 そういった物理的な問題をさておいても、彼等が気にする理由はほとんどなかった。

 何せ、全く接点の無かった子達なのである。

 愛情を持てというのも無理がある。



 ましてその他大勢と言える程の数なのだから、一人一人にそこまで熱を入れられない。

 人間が対処出来る数には限界がある。

 その限界を突破するほどの数の子がいるのだ。

 気にしてられないというのが本音である。



 その後も同様の事件は発生していく。

 ある程度の年齢になった娘が突如姿を消していく。

 それらが発見される事はなく、時間だけが過ぎていく。

 犠牲者の数だけを増やしながら。



「ようやくだな」

「長かったなあ」

 とある場所でそんな声が上がっていく。

「やっと俺らにもめぐって来たんだな」

「そうだなあ」

 感慨無量、といった風情である。

「おまけに、結構な上玉だし」

「本当、これだけは遺伝子のおかげだな」

「少なくとも親の片方は美形だし」

「違いない」

「イケメン相手にがんばってくれた母親のおかげだ」

 かつてはそれに不満を持っていた。

 しかし、こうなると逆にありがたく思えてくる。

 何せ、遺伝的に優れた容姿を持つ可能性が高くなるのだから。



「税金、払い続けて良かったな」

「あと、育児基金もな」

「ふざけた話だと思ったけど」

「別嬪を育ててると思えばな」

 だから彼等は耐える事が出来た。

 辛く苦しく、贅沢もさほど出来なかったが。

 しかし十数年の苦難の果てに、ようやく成果を得る事が出来た。

 見目麗しい…………少なくとも並以上の容姿の娘達を。

 それを思えば自分一人の生活を余儀なくされた事も忘れる事が出来る。



「それじゃ、もう少し楽しんでくるか」

「そうだな」

「まだまだこんなもんじゃおさまらん」

「今までの分を取り戻さないと」

 笑顔を浮かべながら彼等は戻っていく。

 様々な声が上がってる部屋へと。

 悲鳴のような嬌声が聞こえる場所へ。

 それらを聞きながら彼等は、奮い立っていった。



 国内から女子の姿が消え始めてからしばらくして。

 今度は莫大な数の孤児が発生し始めていった。

 それらはある日突然、孤児院の前に捨てられていった。

 一人二人ではない。

 一度に数人、十数人とである。

 それらが社会問題になるまでさほど時間はかからなかった。



 この子供達がどこで生まれたのか、親が誰なのか。

 その調査は即座に行われた。

 しかし結果は出てこず、全ては謎のままで終わっていく。

 そうしてる間にも子供は育ち、これを育成するための政策が実施されていく。

 これには、育児支援の資金が回されることとなる。

 親のいない子供という、片親よりも悲惨な境遇の子供達を救うのだから当然だろう。



 また、この時期になるとシングルマザーなども減ってきていた。

 そもそも、子供を産もうという女の数が減ってるのだ。

 そうなるはずだった者達が突如として消えたのだから。

 余り気味だった予算は、新たな使い道へと流れていく。



「本当に助かるな」

「俺らが子育てしないで済むからな」

「まあ、あとは担当する所に任せるか」

「楽だよなあ、本当に」

 しみじみとした声が上がる。

「他人任せってのがこんなに楽なんて」

「これじゃあ、辞められないよな」

「今なら分かるよ────」

 かつてを振り返って語る。

「────育児支援に頼ってた奴らの気持ちが」

「確かに」

「そうだな」

「まったくだ」

 居合わせた者達は口々に賛同していった。



 育児支援。

 子育て支援。

 それらは捨てられた子供達に使われる事になる。

 育児を放棄した者達への絶大な支援として。



 その後も捨てられる子供達は増大していく。

 行方不明になる娘達も。

 それは時間をかけて常態化していき、ついには世間の常識となった。

 もうそれをおかしいと考える者もいない。

 年頃の娘が消えて男だけが残り、誰が親かも分からない子供が捨てられていく。

 確定したこの流れは、消えることなく長く続いていく事となった。


あくまで創作物だ。

想像だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ