予兆
本日2話目です
―キャルト王国にて―
スペード家国王ゼビラエルは空を見上げた。
秘書と思われる女性が駆け込んでくる。
「報告がございます!」
「話せ。」
「光が誕生しました。」
「ほぅ...場所は?」
秘書が顔をしかめる
「まだ特定できておりません。聖女様の光よりも今回は強く、聖女様が探すことが出来ない状況でございます。」
「そうか。」
ゼビラエルは顔をしかめる。
聖女よりも強い光ということは、動ける者が限られてしまう。
秘書が顔をしかめながらも話を続ける。
「...同時に闇も誕生したとのことです。」
「まさか!」
「こちらはご安心を、こちらに干渉できないようです。おおよその場所も掴めております。
...おそらく今回の光と闇の誕生は計画されたものと考えられます。」
「宵闇の部隊、空蒼の部隊を連れ戻せ。それと、他の3家にも。」
「......かしこまりました。」
「我も準備を開始する。」
国の権力を示すだけの豪華な国王の正装を脱ぎ棄て、歴戦を戦い抜いてきた鎧に身を纏う。
「我が国王でいる間は好き勝手させぬ。」
その眼には揺ぎ無い決意で埋め尽くされていた。
―とある村にて―
「村長!大変です!」
村長と呼ばれた老人はゆっくりと目を開ける。
「ダリス。儂は言ったはずじゃしばし待たれよと。」
ダリスと呼ばれた青年は息を切らしながら伝える。
「はぁ...はぁ...や、厄災が!...か、神の怒りが!」
「分かっておる。...潮時じゃな。」
村長は立ち上がり、外に出る。
そこには約30人ほどが急いで集まってきたのか、息を切らしながらも体勢を崩さず村長の言葉を待っている。
「今こそ!あの忌まわしき悪魔を生贄に神の怒りを鎮める!悪魔を連れて来い!!!」
「はい!」
ダリスは極上の笑みを浮かべながら合図を送る。すると鎖で繋がれた、母親とその娘が連れて来られた。
「こんなこともあろうかと既にご用意しておきました!」
「...ダリスよ、儂はしばし待たれよと言ったはずだ。何故悪魔の用意が出来ておる?小屋から出すなといったはずだ。」
ダリスは悪気のない笑顔で言う。
「しかし結果的に村長は悪魔を連れて来いとおっしゃいました。何も問題はございません。」
二人は、いや村長は睨む。一方でダリスは笑顔を崩さない。
やがて、村長は諦め
「これから儀式を始める!」
こうして一つの村が跡形もなく消え去った。
消え去った真相を知る者はいない。
たった一人を除いて。
―とある洞窟内で―
「ヴァルハルト!!!」
一人の男が目覚める。
辺り気配を確認するが何も居ないことが分かる。
「クソッ...」
彼に一体何があったのか、彼がここにいる理由、それを知る者はもういない。
彼に残されたのは一本の剣のみ
そして何も居なかったはずの洞窟がいつの間にか多くの気配で覆われていた。
「ヴァルハルト...」
その声は届かず、虚しく消えていった。
読んでくださりありがとうございます。
恐らく誤字、脱字、言葉足らずな部分などなどあると思います。
見つけ次第教えてもらえると助かります。