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魔女は真面目なお仕事です!  作者: 黒辺あゆみ
第三章 薬草探してえんやこら
21/59

21話 薬草はどこだ!?

けれど、そこまで絶望することもないだろうに。

「ここじゃなくて、違う場所の薬草を探して使えばいいじゃない」

このヒカリの提案に、オーレルはふん、と鼻を鳴らした。

「他の場所か、ずいぶん無茶を言うな。当てもないのにどうやって探すんだ?」

まるで物知らずだとでもいうような態度に、ヒカリは噛みつくより先に驚いてしまう。


 ――え、私そんなに難しいことを言った?

 ヒカリは一瞬きょとんとしたものの、魔力を感じられない人たちにとって薬草探しとは不可能に近いものなのかもしれないと、考えを改める。

「っていうか、薬屋はここでしか薬草を採ってないの?」

そんなに薬草探しが困難なら、いざという時のために予備の場所を確保していてもいいだろうに。


ヒカリの指摘に、オーレルは難しい顔をした。

「薬屋が使っているのは、ここの薬草だけだと」

オーレルがサリアの街の薬屋に聞いたところ、代々ここで薬草を採っており、他を知らないという。

 そして今までここの薬草が切れたことはないそうだ。

 他の街でも、薬屋ごとに薬草の採取場所を持っており、他の薬屋はそこから採らないルールなのだとか。

 薬屋は最初この場所のことも教えたくないみたいだったが、このままでは店が潰れると思い、渋々口を割ったのだそうだ。


「あー、なるほど。ずっと困っていなかったから、考える必要がなかったのか」

ズボラにも程があるが、あり得る話だ。

「そういうことだ。それに薬についての知識は秘匿されていて、一般の俺たちはどれが薬草でどう使うのかなんて知らない」

「秘匿技術って……」

オーレルの言葉に、ヒカリは「あんな草汁ごときに大げさな」と思わずツッコミそうになったが、ぐっと飲み込む。


 師匠に教えられた製法と違って、雑に作られる現在の薬。

 それはもしかすると、昔はちゃんと薬を作っていたのに、だんだんと手を抜くうちに、正式な作り方を失ったのだろうか。

 秘匿技術なら他人に手抜きだと言われることはなく、「新しい製法だ」とでも言い訳すればいい。


 だとすると薬の作り方同様、薬草の種類や見分け方も失っている可能性がある。

 独自に薬草が生える場所を開拓できないのなら、今ある薬草で誤魔化すしかない。

 ひょっとして草の繊維ごと瓶に詰め込むのは、薬の嵩増しのためだろうか。

 水でエキスを薄めてはあからさまで手抜きがバレるが、草ごと詰まっていると「この方が効能が高くなる」とかいう説明で誤魔化しが効くだろう。

 オーレル曰くあの激マズ薬は、どこの街でもあれが普通だそうだ。

 ならば薬業界自体が、「楽をして稼ごう」という流れに乗ったのかもしれない。

 結果薬の質はどんどん悪くなる。

 薬の質が下がれば、薬で助かるはずの命が助からない事態に発展するだろう。

 もしかして、すでになっているかもしれない。


「なによ、意外と大問題じゃないの!」

悪循環に陥っている薬業界に、ヒカリは憤慨して杖を振り回す。

「なにを今更なことを言っているんだか」

オーレルが呆れ声を上げるが、恐らく彼とヒカリとでは大問題の内容が違う。

 乗り掛かった舟という言葉があるし、知らぬ振りをするのも気分が良くない。

 ――よぅし、ちょっと人助けといきますか!

「薬草探しに行くわよ、オーレル!」

ヒカリはドン、と杖で地面を叩いて宣言した。

「だから、それは無茶だと……」

なにか言いかけるオーレルの言葉を、ビシッと杖を突きつけて黙らせる。

「いいから、私に任せなさい! ここみたいな、薬草の群生地だったらいいんでしょう?」


大地を流れる魔力の動きには方向性が感じられる。

 恐らく「魔力の道」の根の一つが逆流しているのだろう。

 ならばここから逸れた違う「魔力の道」の上には、枯れない薬草があるはず。

 魔力が豊富な場所を探れば、きっと見つかるだろう。

 それにオーレルたちはここみたいな群生地に固執していて、薬草は雑草に混じって普通に生えていると考えないらしい。

 ――街の周りをウロウロすれば、結構生えているのにね。


 サリアの街に来る時、最後の方は走っていて薬草どころではなかったが、それでもちらほら見かけた。

 探せば群生地だってあるだろう。

「そうとなれば、早速出発!」

ヒカリは杖を振り上げた。

「……大丈夫なんだろうな?」

「つべこべ言わない!」

ヒカリが自信満々になるほどに不安がるオーレルを杖で突く。

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