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7話

幼女保護者を得る。




改9月10日

<私>の近くの洞窟でフェンリルという氷の上位精霊と出会ってから3ヶ月が過ぎた。

この世界の一年は16月あり1月に24日で、一年は384日らしい。

お爺ちゃんは長く生きているだけあって多くのことを知っていた。

なので毎日日課を終えたら会いに行き、この世界に関することや魔術について教わっている。

ちなみに名前はフィンというのだそうだ。

フィンは普段は巨大な狼の姿だが、普通の狼の大きさになったり、人の形をとることができる。

はじめて人間形態を見たら80歳程の銀に近い白髪を持つお爺さんで、お爺ちゃんとからかい混じりに呼んだらなぜか喜ばれた。

なのでそれ以来フィンのことを爺ちゃんと呼んでいる。

今日はお爺ちゃんとともに古式魔術で使役妖精生み出す予定である。

使役妖精とは人工精霊のことで、昔は魔術の補助役を目的に生み出され、使役されていた。

ちなみに2500年前に起きた人魔戦争の影響で文明が崩壊したせいで古代の魔術の大半が消失しており、今回使う魔術も失われた魔術である。

ちなみに昔人間に使役されていた使役妖精の大半は人魔戦争の最中に使役者が多く死んだときに大半が一緒に死んでしまったが、一部は使役者であった人間が開放して自由になった。

その子孫が妖精という種族で生き残っている。


いつものように洞窟の入り口で念話を使用してお爺ちゃんを呼ぶ。

この洞窟はお爺ちゃんの意思で内装が変化するらしい。


―お爺ちゃん来たよ。


―少し待っておれ。


―わかった。


念話を切ると同時に目の前に氷の柱が生まれ、徐々に形を変えて最終的に銀色の毛に覆われた狼が現れた。

大きさは大人の柴犬ほどである。

口に黒色の精霊石をくわえている。

精霊石とは長い間精霊の影響を受けて強力な魔力をまとった石のことを指す。

魔石と間違えられることがあるが別物である。


―わしの口から精霊石を取ってくれ。


―うん。・・・取ったよ。


―では、行くとしようか。


念話での私の口調が変わっているのはお爺ちゃんに矯正されたからである。

場合によっては人の中にまぎれる必要があるので、そのときに男口調だと目立つからというのが理由だ。

心の中では依然として男口調のままだが・・・。

それはさておき、今はこの世界にきて一日目に見つけたカランコエが咲いているところに向かっている。

その花をもとに私の使役妖精を作りだすのだ。

なぜその花なのかというと、花は私の属性である木と相性がいいこと、単純に印象に残っているからである。


2分ほど歩いて、目的の場所に辿り着いた。

目覚めた日はクルミの木から約30メートルしか移動できずじっくり見れなかったが、次第に移動範囲が広がったので、間近で見れるようになってからはちょくちょく見に行っていた。

今では移動範囲が約200メートルになっているので、問題無く見に行くことが出来る。

周りは緑ばかりなので目的の花、オレンジ色のカランコエはすぐに見つかった。

今日で見れるのは最後なのでゆっくりと観察してから準備に移る。

まず、木で作った植木鉢にカランコエを移す。

そしてそのまま植木鉢を持って、<私>の許に向かう。



<私>の許に着いたら、カランコエを中心に魔法陣と古語で術式を描いていく。

続いて<私>にも陣を描いていく。


うぅ、痛い・・・。

結構きついな、これ。

まあ、必要なことだから我慢しなくては・・・。


そうこうしているうちに描き終え、私の魔力を吸収させた大きめの魔石3つとクルミを術式に組み込んでいく。

次に<私>からいくつか枝を取って、カランコエの花から葉を少しもらう。

枝をカランコエ側の陣の中心に立て、葉を<私>の側の陣の中心に鉄串を使って固定する。

そして最後に、闇属性の精霊石を握り締め少しづつ魔力を流す。

右手に精霊石を持ち、左手で陣に触れながら詠唱する。


『我は汝を望むもの也。我は汝を望むもの也。我は汝を望むもの也。―――


3回文言を繰り返すと陣から緑の光が溢れた。

<私>に描かれた陣の中央にある葉が<私>に同化し、<私>の枝がカランコエの花と同化する。

そして、陣の中心にあるカランコエの花が姿を変えていく。

徐々に形が変わり、次第に人の形を取っていく。


―――我が名はリーユ。汝の主であり母となるもの也。汝に祝福と契約の証として名を送ろう・・・ 汝の名はシャリー。

これから生まれる新たな生命の手向けとしてこの名と力を汝に授けよう。受け取るがよい。―――


そして、手に持っていた精霊石をいまだ不安定な形を取るカランコエの花・・・シャリーに埋め込む。

すると不安定な形を取っていたシャリーが完全に人としての形を取る。


―――これにて汝の命は我と共にある。汝、我に永遠の忠誠を奉げるか?―――


―さ・・さ・げま・・・す。


―――よろしい。我は汝に変わらぬ信頼と愛情を与えよう。・・・ここに契約は成立した。』


目の前に身長が約50cmの少女が立っている。

深緑色の髪を橙色のカランコエの花でサイドにまとめており、背中に羽を生やした整った顔立ちの少女が目を閉じたまま立っている。

ゆっくりと目を開いた。

何回か瞬きをした後、周囲を見渡した。

そして私のほうを見て微笑みかけた。

無事に成功したようだ。


おおー・・・成功した。

痛いのと熱いのを我慢した甲斐があった。


今回なぜ使役精霊を生み出したのかというと、情報を集めるためと私の身を守るためである。

闇属性は隠蔽したり、精神に干渉したりすることに適している。

なので、闇属性の精霊石、私の魔力を吸収させた魔石とクルミを使うことで、闇と木属性に秀でた使役妖精を生み出すことができる。

使役妖精に私の本体であるクルミの木を私が離れるときに守ってもらう予定である。

しかし、一方的に利用しているような感じがして嫌なので、シャリーの核を<私>にした。

これで私もシャリーを守ることが出来る。


一方的に利用とか、気分悪いしね・・・。

私はあの人と、あの人たちとは違う。

違う・・・。


契約の最中私はリーユと名乗ったが、契約結ぶためには名前も必要だったのでカリュアーを元に名前を考えて、リーユと名乗ることにした。

ちなみにシャリーという名は一ヶ月前につけた名前をそのまま使っただけである。

話を戻すことにして、一年ほど経ったら私はお爺ちゃんの知り合いのドリアードに会いに行く予定である。

ここ三ヶ月の間にこの精霊の森の主であるドリアード、名をリアというが、そのリアが眠ってしまった理由が分かったのだ。

私が目覚める少し前にリアが強い瘴気を受けてしまい、弱ってしまったそうだ。

そのためこれ以上衰弱するのを抑えるために眠ってしまったのだそうだらしい。

なお、瘴気とは生き物が死んだ時に生まれる穢れたマナのことで、精霊にとって猛毒である。

リアを治すためには同じ木の精霊、しかも上位以上の木の精霊の力を借りる必要があるが、木の精霊の総数は1000に満たないうえ、上位以上となると数が限られている。

幸いなことにお爺ちゃんの知り合いに上位の木の精霊がいるのだが、別の大陸にいるため海を渡らないと会えない。

しかもお爺ちゃんはここから遠い場所には行くことができず、他の精霊はこの精霊の森を維持する必要があるため、私が行くことになった。

なので、その準備として使役妖精を生み出すことにしたのである。

基本的には私の本体のクルミの木を守ってもらうが、時には街で様々な情報を集めてもらう。

今日は使役精霊を生み出したが残りの時間でゴーレムとホムンクルス、そして私の依り代を作り出す予定でいる。

ゴーレムはクルミの木を防衛するために、ホムンクルスは旅に出る私の護衛としての役割を果たしてもらう。


この森からでて世界を見れるのは楽しみだけど、かなり不安だ。

まだ私はこの世界のことをあまり知らない。

そして、魔術しか見たことが無いので、他の術の対処法が無い。

信頼できる仲間は多ければ多いほどいいけども、敵が多すぎるのがなぁ・・・。

私は生贄になんてなりたくなんかないからね。

できるだけ私の正体と力がばれないようにしないといけない。

旅の間無事でいられるだろうか・・・。


目の前の愛らしい妖精を見つめながら内心ため息をつく。

詠唱のところは深夜のテンションで書いたものなので改めてみると恥ずかしいですね(/ω\)

次回もしかしたら街にいくかも?


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