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4話

クルミの恐ろしさ。



改9月9日(途中)

おそるおそる猪に近づいてみる。

反応は無い。

そして体から漏れ出ていた濁った光が無くなっている。

あの光が嫌な感覚の正体であろう。

本来の茶色の体毛が見えるが生気が無い。

猪はからからに干からびて死んでいた。


・・・なんぞこれ?

どうして急にこんな風になったんだ?

私がやったのか?

・・・胡桃の仕業か。

恐ろしいな胡桃。

胡桃のような何かだ・・・。


頭にくっついている胡桃を見る。

胡桃は黄色に発光しており、元々の大きさの3倍ほどの大きさになっている。

一つだけ胡桃を拾って大きくなった胡桃と比べてみる。


大きさは、まあ、すごくでかくなってるな。

そして、魔力か・・・大きいほうは黄色で、普通のは・・・緑だな。

色が変化しているようだ。


胡桃をじっと見つめる。


なぜだ・・・なぜか胡桃がとてもおいしそうに見える。

殺人?胡桃の癖に生意気な・・・。

そういえば、さっき鉄串についていた石を見たときも同じようにおいしそうに見えたな。

先ほど出発していった3人組が食事をしていたときや近くに生えていたきのこを見つけたときは別になんとも思わなかったが。

共通点があるのか・・・。

・・・魔力か?

魔力が私にとってのごちそうなのか?

でも別に魔術を食べたいとは思わないけど。

それとこれとは別物か・・・。

ふむ・・・。


胡桃をまじまじと見つめる。


・・・この胡桃、食べてみるか。

う~ん・・・あの交じり合ったせいなのか濁った光を発する魔力を吸収したなら、さすがにまずいと思うが、どうなのだろうか?

腐ったものをどうにかリサイクルして別物にしたような感じと思えば・・・。

う~ん、一応、きれいな黄色の光を発しているが・・・微妙なところだな。

食べたいか食べたいかと言えば、食べたい。

なら、その感覚に沿うべきだな。

だけど、魔力を吸収するなら私の魔力も吸われないかな?

さっきから散々手に持ってるし、さすがに大丈夫だと信じたい。

<私>から生まれたものだしな。

・・・よし。


恐る恐る手を伸ばして、胡桃に触れてみる。

何も起きない。

大丈夫そうだと、手に持って皮をむき中の種子をむき出しにする。

種子は外皮よりも鮮やかな黄色の光を発している。

口に運び少しかじってみる。

やわらかい。

癖が無くまろやかな味だ。

微かに甘みを感じる。

香りもよく、すごくおいしい。

次は大きくかぶりつき味わう。

一口食べたときと違い、濃厚でまろやかだ。

夢中になって食べていると、すぐに無くなってしまった。


物足りないな・・・。

もっと食べたい。

・・・そういえば地面にいくつか落ちていたな。


地面にちらばっている胡桃をみる。


これらも食べてみよう。

これらは見た目は普通の胡桃だけど美味しいはず。

・・・あれ?普通の胡桃なら美味しいんじゃ・・・。

・・・まあ、食べるか。


とりあえず1つ拾い、食べてみる。


う~ん・・・味や香りは悪くないが、物足りなさを感じるな・・・。

魔力を吸収した胡桃の方がおいしい。

普通のは野菜みたいな風味だけど、黄色に光る胡桃は乳製品、チーズみたいだったからな。

この世界の胡桃はみんなこんなものなのかな?

触れると、魔力を吸収される危険性がある胡桃・・・

うん、危険だな。

魔力をからからになるまで吸収する胡桃が普通にあるとか、怖すぎる。

私だったらそんな世界に住みたくない。

・・・私は胡桃に魔力を吸収されないようだけど。

まあ、まだ初日だし、だんだん知っていけばいいか。


腕いっぱいに胡桃を持ち、胡桃を頬張っていると猪の体に異変が起きた。

体がどろどろに溶けていき、体内から透明な石が出てきたのだ。


これは・・・あの三人が取っていた魔石か?

ふむ・・・なんとなくだけど、串に付いていた石と同じな気がする。

だが、串に付いていた魔石と盗み見た魔石とか比べると色が無くて透明だな。

透明なガラス玉みたいだ。

・・・胡桃が魔力を吸収した影響か?

とりあえず手に持ってみようか。


猪の死骸のところにいって落ちている魔石を手に取ってみる。

すると、体から徐々に力が抜けるような感覚をうける。

その代わり、少しづつ透明な石が緑色に染まっていく。


あれ?鉄串にくっついている魔石に比べたら魔力の吸収速度が遅いな。

大きさの問題か・・・鉄串のほうは何らかの加工が施されているのか?

・・・そういえば胡桃に気をとられて鉄串を回収するのを忘れてた。


地面に転がっている鉄串を回収しようと手を伸ばす。

だが、ふと気づいたことがあり、手を止めて周囲を見渡す。


・・・狼達の死骸がないな。

猪と戦っている間はまだあったはず・・・。


三人組は魔石だけとっていき死体は放置していた。


猪と同じで溶けて消えてしまったのか・・・。

ということはあの猪も魔物なのか?

見分け方が分からないな・・・。

あの三人が言っていた魔獣との違いはなんなんだ?

それに魔術の使い方は・・・。

今の私には・・・分からないことが多すぎる。

私は一体何者なんだ?

なぜ、死んだ覚えが無いのに、胡桃の木に転生しているんだ?

魔術とはいったい・・・?

この世界はどういう世界、元いた世界である地球との違いは?

この森はどういう場所でどのような名前があるんだ?

あの三人は何者で、どういう理由でこの森に入ったんだ?

魔物とは?

魔獣とは一体どう違うんだ?

なぜ、魔物らしき存在は私を視認することが出来たんだ?

この胡桃は一体何なんだ?

出来るだけこの世界、そして私自身について知っておきたい。

それが私の身を守ることにつながるだろう。

さっきはだんだん知っていけばいいとは思ったけど・・・最低限の知識は手に入れておきたいな。

さすがに、そう何度も猪と戦ったときみたいな事態になって、死にたくは無いからな・・・。

それに、どうせならこの世界を巡って冒険してみたい。

いろいろな人と出会ってみたい。

さまざまな場所の光景を自分自身の手で見てみたい。

魔術を使いこなしてみたい。

剣とか槍とか使ってみたい。

この世界を見守りたい。

いろいろとやってみたいこと、知りたいことがある。

・・・とりあえず、生き抜かなくては。


考えごとをしていたら疲れたのか、少し眠くなってきた。


「ふわぁ・・・。」


あくびが出ると、本格的に眠くなってくる。


眠いな・・・。

そういえば、私は木に・・・胡桃の木になったようだけど、眠れるのか?

それに私は今何歳なんだ?

0歳?いや、見た目は5,6歳だしな・・・。

そういえば、幼女の姿はまだ<私>が若いからなのか?

わからんな・・・。


思考がずれていることに気づき、嘆息する。


そんなことはさておき、一度眠ったら魔術の特訓でもするかな。

使えないにしても魔力は見えるし、感じ取ることが出来る。

魔力のコントロールくらいは身につけておきたいな。

魔物と戦うなら胡桃を投げつければ何とかなりそうだし・・・いや、でも狼みたいに多数で来られたら危なそうだ。

やっぱり空中に逃げるのがいいかな。

起きたら飛ぶ練習しよ・・・。

そういえば、どこで寝ようか・・・。

<私>の上でいいか。

じゃあ・・・おやすみ。






               ◆               ◆






暗い。

痛い。

苦しい。

どうして――はこんなことをしているのだろう・・・。

――は――と同じあの人の子供なのに・・・。

でもこれだけはやらなくてはいけない。

此処はいやだ・・・何も無い。

あるのは――と――だけ。

だからこのままにはしておけない。

こんなところにはいたくない。

でも、行くところがない。

だれも・・・助けてくれない。

それに――を残して独りだけ生き延びるのは・・・耐えられない。

せめて・・・。

・・・この場所で指示されたことをやり続けなければいけない。

――は――だから。

生きていられだけでも、住む場所、食べられるものを与えられるだけ、まだマシだから。

他の――はもういない。

残ったのは――だけだから・・・。

だから少しでも――のためにできることをしたい。

あぁ・・・足音が・・・今日はもうおしまい。

よかった・・・。

でも、もう少し・・・。

いつまで続くんだろう・・・。

いつになったら終わるんだろう・・・。

分からない・・・けどやらなくてはいけない。

それが――の役割だから。

それが――にできる贖罪だから。


























どうして?

次話は少し時間がとびます。

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