表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/51

21話

長かったホムンクルス作り。

こんな長くなるとは、予想外デス。




改9月16日

帝国が精霊の森で騒動を起こしてから4ヶ月が経った。

帝国はあれから動きは無い。

いや、あるにはあるらしいが、精霊の森には手を出さないようにお触れが出されたらしい。

あれだけの被害を受ければ当然だろう。


約2500人が死んだからまあ、その遺族が黙ってはいないと思うけど・・・お触れねぇ・・・。

新体制に移ろうというときにそんなことしたら不満が溜まると思うけど・・・どうだろう?

なにが目的だったんだろう?

まあそれはさておき、私はホムンクルス作りに集中しよう。


あと三ヶ月ほどでホムンクルスが完成というところまで来た。

しかし、まだやることがある。

約九ヶ月の間培養液に浸からせておいたので、大分肉体は安定してきている。

なので、ホムンクルスの魔術回路と魔導核を作るには丁度いい時期だ。

ホムンクルスは特殊で、魔力を生成する能力が低い上に魔力を放出させることが出来ないのだそうだ。

なので作成する際に何も施さなければ、魔力を持てど魔力が使えないという状態になる。

しかも魔力を放出できない場合、体内に魔力がたまり、体を壊して死んでしまう。

実際に人種には魔力を放出することが出来ない障害があり、そういう者は約2ヶ月ほど死んでしまうのだそうだ。

なので、魔力を放出させるために魔術回路を刻み、なおかつ魔導核を埋め込むことで魔力の生成能力を底上げしつつ、様々な知識を与える。


魔導核はお爺ちゃんの協力が必要なので、先に魔術回路を刻むことにする。

先月辺りに街に行って手に入れた魔紙という魔道具にホムンクルスに刻む魔術回路を描いていく。

魔紙は『樹木子』という木の姿をした魔獣から作る事ができる紙で、魔力の伝達性が良く、丈夫なので魔術回路を描くのに適している。

描き終えたら、各属性の魔石を用意する。

各属性の魔石も街で買った。

街で買った10個のガラスのビンにそれぞれ魔石を入れて、森にいる水の精霊から貰った水の精霊樹の雫を一滴ずつ入れて、療水、クルミで作った油を入れる。

そして、ビンに魔法陣と術式を刻み、魔術を発動する。


「我が望みし形を成し、表せ・・・【形成】」


ビンに中で全てが混じわり、形をかえる。

そして各属性を含んだ絵の具が完成する。

作った絵の具を魔紙に描いた魔術回路(生命の樹みたいな形)の10の魔法陣を各種属性の絵の具でなぞっていく。


・・・違う属性を混ぜたらどうなるんだろう。

気になる。

でも、数が少ないからそんな実験ができないよなぁ・・・。

また機会があったら試してみよう。


しばらくしてから二つの魔術回路が完成する。


完成したので早速二人に魔術回路を刻む作業をする。

刻むといっても魔術回路を描いた魔紙をホムンクルスの背中にはり、魔術を使って定着させるだけだ。

ゴーレム達に手伝ってもらって、二人を床に下ろす。

そして、背中に魔紙をはり、魔術を構築して、発動する。


「溶けよ。そして馴染め・・・【定着】」


魔紙が溶けるように消えて、ホムンクルスの背中に魔術回路が刻まれた。

ちなみに、定着は激痛を伴うらしい。

どんなものでも激痛と引き換えに定着させることが出来るらしいので、この魔術を考えた奴はキチガイに違いない。


これ元々拷問に使われた魔術に違いない。

・・・どうしてこんな魔術知ってるんだろう、お爺ちゃんは。

・・・考えないようにしよう。


作業が終わったら軽くホムンクルスたちの汚れを洗い流して、カプセルに戻す。

そして異界から出て、シャリー達にお留守番を任せて洞窟に行く。




洞窟に着くといつもどおり念話でお爺ちゃんを呼ぶ。


―お爺ちゃん、来たよ。


―うむ、そのまま真っ直ぐ進むといい。


―うん、分かった。


今回はこの洞窟の最深部、お爺ちゃんの魔木があるところで作業をする。

ちなみに、この洞窟も異界なのだそうだ。

なのでお爺ちゃんが望めば洞窟の構造を変えることが出来る。

真っ直ぐすすむと扉が現れたので、扉を開けて進む。


―着たようだな。わしの下まで来るのだ。


頷いてお爺ちゃんの下まで行く。


最近此処には来てなかったなあ・・・。

やっぱりまだクルミがないと無理かな。


少し懐かしく思いつつ、お爺ちゃんのところにたどり着いた。


―既に術は構築しておいた。早速はじめるとしよう。


―うん。


地面にはかなり大規模な魔法陣が描かれており、その魔法陣の東西南北にも魔法陣が描かれている。

大きな魔法陣の中心には純石、竜核、精霊石、アダマンタイト鉱石、ダイヤモンドの原石、銀鉱石が二つずつ置かれている。

いずれも魔力を内包した特殊な物である。


アダマンタイト鉱石ってどこで手に入れてきたんだろう・・・?

私が知ってる限り、アダマンタイト鉱石は半人工鉱物だから、数が少ないらしいけど・・・。


その中心にいくつかクルミを置いてきたら、準備完了である。

お爺ちゃんが陣に魔力を流し、私が術を発動させる。

今回の魔術は『儀式魔術』というものである。

まず東の魔法陣の中心に入り術を発動する。

そして、南、西、北の順に陣に中心で術を発動する。

最後に中央で術を発動することで儀式魔術が完成する。


お爺ちゃんがすべての陣に魔力を流しているのを見ながら東の陣の中心に立ち、詠唱する。


「暖かい力を持って、草木を生み出し、慈しみ、育てるのだ・・・【青龍】」


唱え終えたら南の陣に移動し、中心に立ち、詠唱する。


「再生の力を持って、聖なる火を、猛き炎を絶やすな・・・【朱雀】」


次に西の陣に移動して、中心に立ち、詠唱する。

「その堅固で冷徹な力を持って、如何なる脅威に打ち勝て・・・【白虎】」


若干辛くなってきたが、挫けず北の陣の中心に立ち、詠唱する。

「溢れる生命の力を持って、命を育み、魔を洗い流せ・・・。【玄武】」


凄まじい疲労感に襲われながらも、気力を振り絞り、中央の大きな魔法陣の中心に立ち、詠唱する。

「何者にも打ち勝つ強き力を持って、総てを守り、見守るのだ・・・。【黄竜】」


東の陣が緑に、南の陣が紅に、西の陣が白に、北の陣が黒に、そして中央の陣が黄の色の光を発して、洞窟の中を力強く照らす。


すごい眩しい・・・。

でも、魔力が。

ああ、意識が・・・。


光が徐々に収まり、完全に消えたら中央に二つの宝石が出来ていた。


「よ・・かっ・た。」


私、気絶しすぎ・・・?


無事に出来ているのを見届けたら、意識が途絶えた。


          ◆          ◆


「あ~・・・すごい渋滞だな。」

――は旅行帰りの最中だったが、事故がらしく、その影響で出来た渋滞に足を止められてしまった。


せっかく高速道路の渋滞から抜け出して、もうすぐ家に帰れるというところだったのに・・・


ハンドルに手をつきながら、下を向きため息をつく。


「はやく帰らないと、葛がおなか空かせてるかもしれないのに・・・。」


久しぶりの旅行で楽しかった分、帰りの渋滞地獄で憂鬱な気分になる。


「もうかれこれ一時間だ・・・そろそろ動きがあってもいいと思うんだが・・・。」


淡い期待を持って顔を上げると。


「うん?なんだ?なんで車から出て・・・。」


他の車に乗っていた人が車から出て先の方を見ていた。

道の先・・・事故があった方になにかあるのだろうか。


「――も見てみるか。」


車から出て先の方を見る。


「なっ!?」


火だ。

既に夜を回っていたため、分かる。

先の方が薄明るくなっているのは火の影響だ。


「火災?火の場所は・・・渋滞の原因となってる事故の辺りだな。一応聞いてみるか。」


近くにいた男性に話し掛ける。


「あの、すいません。」

「うん?ああなんだい?」

「どうしてみんな車から出ているんだろうと思いまして・・・。」

「僕も他の人から聞いただけだから良く分からないんだけどね、なんでも幾何学模様が事故が起きた現場の真上に現れたらしんだよ。」

「幾何学模様?」

「そう。でもその模様は見える人見えない人がいてね・・・僕は見えないんだ。君はどうだい?」

「――ですか?う~ん・・・そんなものは見えないですね。――としては事故現場の辺りが薄明るいのが気になってるんですが・・・。」

「薄明るい?いや暗いよ?」

「え?」

「う~ん・・・これを見てくれ。」


男性は手持ちのスマートフォンを見せてくれた。

とある掲示板のサイトで、猛烈な勢いで書き込まれていた。

男性は一つのURLを開く


「・・・確かに幾何学模様ですね。それに暗い。」

「だろう?」

「写真だと見る事ができるんですね。」

「そうだね。僕もスマートフォンで撮ってみたら見る事ができたよ。ぼんやりとだけどね。」

「――ははっきりと見えます。でも、――は薄明るく見えるですが・・・。」

「薄明るいっていうのは書かれてない。一応薄明るく見える人がいるか書き込んでみるよ。」

「お願いします。それと、火の明かりで薄明るくなってるように見える事も書いてくれませんか?」

「分かったよ。」


男性が書き込んでから少し待っても――と同じ様に見える人はいなかった。


「う~ん・・・だめだね。もしかしたら他に君と同じように見える人はこういうサイトを見てないだけかもしれないね。」

「そうです・・・あれ?明るく・・・!?」


違和感を覚えて事故が起きたという方向を見ると、――の方に何かが迫ってきていた。


「っ!?」


声を上げる間もなく――光に飲まれ、黒い手に腕を引かれた。


な!?どういうことだ!?


声が出ない。

喉が潰されている。

のどから血が溢れている。

次第に意識が遠のく。


どうして、こんなこと・・・に。

?あれ、は?


最後に見たのは深い緑の髪をした女性達だった。

彼女達の表情は伺い知れなかったが、悲しんでるように思えた。


          ◆          ◆


目が覚めたら<私>のところにいた。

大分魔力を消耗してしまい昏睡してしまったようだ。

お爺ちゃんが送り届けてくれたのだろう。

傍にはシャリーと萩がいて、寝息を立てている。

心配させてしまったようだ。

労いの気持ちを込めて頭をなでる。


やっぱりかわいい。

それにしても、また気絶するとは・・・。

魔力量は大分増えたと思うんだけど・・・。


そういえば、と周囲を見渡して魔導核は無いか探す。

・・・あった。

<私>の根元に魔術で隠蔽されている状態で置いてあった。

誰かに盗まれないようにするために魔術で隠したのだろう。

作ったときはよく見ることができなかったので、じっくりと観察する。

魔導核は直径が10cmほどの大きさで、宝石のようである。

時間が経つといろいろな色に変化するので、見ていて面白い。


それにしても、作成に精霊が昏睡するほどの魔力を必要とするけど、昔の人間はどうやって作ってたのだろうか?

私の魔力量とアリアの魔力量を考えると・・・アリア10人分かな?

多いのか少ないのか良く分からないな。

そもそもお爺ちゃんも魔力を流してたから実際にはもっと多いだろうし・・・うん分からない。

ホムンクルスの魔術は禁術だったらしいし、隠れてやるなら多くの人数を集める事はできないだろうしなぁ。

まあ、魔石とか使ったのかな?


そんな疑問を持って考えていると、シャリーが目覚めた。

シャリーが目覚めたと同時に、萩も目を覚ましたので、シャリーと萩に心配させたことを謝罪しておく。


―ごめんなさい。


―次からは気を付けてくださいね?


―きをつけるんだぞ。


―はい。


シャリーと萩にジト目で見られて釘を刺されたので、敬語になってしまった。

とりあえず、今日は安静にすることにして、シャリーと萩と共に過ごした。



     ◆     ◆     ◆



魔導核を作ってから3ヶ月が経った。

今日でホムンクルスが完成する。

ちなみに魔導核は使用済みの培養液に浸すことで、馴染ませ易くしておいた。


リサイクルは大事だよね。

でもなんか使用済みって所が気になる。

私だったらいやだな、使用済みの培養液を使うのなんて。


そんな事を考えながら魔道核を埋め込んで、ホムンクルスに魔力を流す。

そして目を開ければ完成である。

ホムンクルス達をお爺ちゃんと一緒にカプセルから出して、あらかじめ創っておいたテーブルの上に横たえる。

そして、胸の上に魔導核を置き、魔術を構築し、発動する。


「馴染み、溶けろ・・・【定着】」


魔導核が胸の中に半分程沈む。

しばらく見守って、特に拒絶反応などが無いのを確認してからホムンクルス達の手を握り、魔力を注ぐ。

今回、大分魔力を消費するらしいので、私の魔力を吸収させたクルミを20個用意した。

これで、どうにかなるはずである。


~三十分経過~

ホムンクルス達が少しずつ暖かくなっている。

順調なようだ。


「しゃりー、たべさせて?」

「しょうがないですね・・・。」


シャリーにクルミを食べさせてもらいながら、魔力を注ぎ続ける。


~一時間経過~

疲れた。

すでにクルミを八つ消費している。

ホムンクルス達の真っ青だった肌が徐々に赤を帯び始めて、いまでは健康的な肌色である。

順調に進んでいる。

九個めのクルミを食べさせてもらいつつ魔力を注ぐ。


「しゃりー。」

「分かってます。」


なんかシャリーの私に対する態度が少し変わってないか?

・・・かわいいからいいか。


~二時間経過~

心臓が動き始めたようだ。

ここまで来たら後は1時間程魔力を注げばいいだろう。

十四個目のクルミを食べさせてもらい、魔力を注ぐ。


「しゃ、むぐ!?」


名前を呼ぶ前に口の中に突っ込まれた。

クルミおいしいです。


~三時間経過~

もうクルミは無い。

そして私の魔力はあと半分程だ。

あと、もう少しである・・・。


うん?胸が動き始めたな。呼吸を始めたのかな?


呼吸を確認する。

風を感じる。

少しだが呼吸をしているようだ。

念のために胸に触れ鼓動を確かめる。


「・・・。」


自分の胸を触る。


なんだろう・・・なんか悔しいぞ。

ま、まだ子供だから。


鼓動を少しゆっくりな気がするが問題なく動いていた。

呼吸を始めたらもう魔力を注ぐ必要は無い。

手を離し、魔力を注ぐのをやめる。

あとは目を覚ますのを待てばいい。


疲れた・・・。

こんなに魔力を使うのは初めてだ。


―終わったようだな、リーユ。


―うん。これでいいんだよね?


―うむ。いつ目が覚めるか分からないがな。ふむ・・・問題なく出来ておるぞ。


―よかった・・・。


―今日はもう休んだほうがいいな。


―うん。


―わしは洞窟に戻るが、何かあったら呼ぶのだぞ。


―分かった。じゃあね。


―うむ。ではな。


そう言ってお爺ちゃんは消えた。

シャリーと萩が話しかけてくる。


―母様、向こうで休んでいてください。


―わたしたちがみてる。


―うん。あとよろしく。


―はい!


―うん。


私はゆっくり飛びながら、作業場に創ったベッドで寝る。





魔導核の詠唱部分はいつか変更するかも。

早く無詠唱で魔術を使えるようにしたいものである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ