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20話

帝国が攻めてきた!

おや、リーユの様子が・・・。





改9月16日

萩とシャリーと共に勉強をしていると、魔力が森を走り抜けるのを感じた。


合図だ

帝国が来たようだな。

この様子だと想定内の数が来たようだけど・・・さて、どうなる事やら。


私達精霊の森の精霊は、今回の襲来に際して一つの連絡手段を作った。

魔力を飛ばすことである。

ただし、普通の魔力ではなく、極薄く、広く進む魔力で森中に知らせる事にした。

広く展開するにしても範囲は限られているので、最大二キロまで広がる魔力の波である。

その波に気づいたほかの精霊が狼煙のように森中に魔力を飛ばし、警戒を促す。

また、魔力の周期によって知らせる内容変わり、今回のように一度だけだった場合は敵襲来である。


私も同様に周囲に魔力を飛ばす。

精霊たちが魔力を放出させたために膨大な魔力が森に溢れているのを感じながら、勉強を中止して準備しておいた術を起動する。


「この地に我が領域を生み出せ・・・【樹海創造】」


<私>を中心として、半径100メートルに木々を生やす。

今回使った樹海創造はグランドドラゴン戦のときと比べて準備時間がたくさん有ったので、二倍以上の規模で展開する。

さらに相手が動きづらいように木々の間隔は狭めてあり、私やシャリー、萩、ゴーレム達は問題なく私の樹海の中を動けるので、<私>の周辺で戦う分には圧倒的に有利だ。

そもそも、ここ精霊の森には約12000体の精霊がおり、そのうち300体が上位精霊である。

上位精霊は幻獣(大抵Aランク以上)並みの力を持ち、特にお爺ちゃんは大精霊に匹敵する。

精霊の魔力量は人間の約50~100倍あり、その差が直接戦力差となる。


帝国が可哀想になるくらいひどい戦力差だなぁ・・・。

こうして考えると、精霊の森と呼ばれる理由がよく分かる。

精霊が12000体というのは、この世界に生息する精霊の約2%を占めるらしいし。


あまりの戦力差に少し帝国に同情する。

精霊の森はかなり広く、精霊は森全体に広く分布しているとはいえ、この辺りにはリアの精霊樹があるため1000体ほどの精霊がいる。

帝国がどれだけ戦力を持っており、一点に戦力を投じてくるか、分散して戦力を投じてくるかは分からないが、私達精霊にまともに戦っても勝てはしないだろう。

そもそも精霊は普通の人間には見えない。

帝国は見えない敵と戦うことになるうえ、地の利も私達にあるため、私達の勝ちは揺るがない。

懸念事項として、魔物に襲われる可能性があるが、この森にいる魔物にやられるよな精霊はいないので問題は無い。

つまり、帝国の行動はかなり無謀である。

それと、私達精霊は今回容赦無く殺る予定なので、今日から帝国から精霊の森のことを帰らずの森とでも呼ばれそうだ。


まあ、帝国はたびたび精霊の森を荒らしたりして、精霊のヘイトを溜めていたうえ、リアに危害を加えたから、精霊たちの怒りはピークに達しているから仕方が無いね。

さて・・・覚悟だけはしとかないと。

何人私の場所に来るかな・・・。


少し緊張しているので、深呼吸をする。

気持ちを落ち着けたら、異界から分身を取り出し、移る。

そして服を着て、ローブをはおり、装備を整える。

着替えているとシャリーが念話で話しかけてきた。


―母様、状況はどうですか?


―さっき連絡来たばかりだからまだ戦闘は始まってないかな。一応ある程度敵をおびき寄せてから一網打尽にする作戦だしね。


―無理はしないでくださいね?


―シャリーこそ無理はだめだよ。


―はい。


―萩も気をつけてね?萩は帝国が来る前に異界に避難してもらうけど・・・。


―わかった。それよりくるみちょうだい。


―はいはい。


シャリーと萩を撫でる。

萩には撫でながらクルミを食べさせてあげる。


シャリーも萩もかわいいなぁ。

戦闘前だけど和む。

早く終わらないかな・・・。


戦闘準備を整えたのでシャリーと萩を抱きかかえながら、後は誰かがゴーレムに引っかかるまで待つ。




準備を整えてから3時間が経つが、誰も来ない。

しかしたびたび悲鳴が聞こえるので近くには来ているのだろうが、


急に悲鳴が聞こえるから驚く・・・。

どうせ来るなら早く来て欲しい・・・。

さあ、人思いに終わらせてあげるから、早く。


―母様・・・。


―シャリーと萩はそろそろ避難したほうが良いかな。


―母様、私も・・・。


―大丈夫。私が、私達がやられる事は無いよ。それに、シルフも近くにいるから。だから、ね?


―・・・はい。


「ワオーーーーーーーーン。」 


突然、遠吠えが聞こえた。

私が作ったゴーレム達の遠吠えだろう。

どうやら帝国の人間が近づいているようだ。


―さあ、早く


―分かりました。


―あ、このクルミはおやつとして持っていって。萩が耐えれないと思うから。


―はい。お気をつけて。


―うん。気をつけるよ。


異界を開き、シャリーと萩を異界に匿う。


さて、やるかな。

・・・今来てるのは三人か。


串とクルミを用意して待ち構えていると、

こちらに向かってきている足音が聞こえる。

3人の男の姿が見えた。


「くそっ、なんなんだよ!」

「こんなはずじゃなかったのに・・・。」

「お前ら、無駄口叩くな!」


大きな怪我はしてないようだが、所々に切り傷があり、着ている服もぼろぼろである。

服から察するに帝国の軍人のようだ。


そういえば、学者と女騎士は来てるのか?

あの二人は良く分からないから、来てるのなら仕留めておきたい。


まだこちらに気づいてないようなので既に魔術を構築したミスリルの串を木に投げつける。

そして術を発動する。


「【縛り樹】」


串が刺さった樹がひとりでに動き出し、三人の男を拘束する。


「何だ!?」

「木が動いて・・・。」

「魔術か!」


三人が何とか抜け出そうとしていると、三人の男の内の一人が私に気づいた。


「どうして子供が・・・。」

「何?」

「どうした!」

「あそこに子供がいるんだ!」

「「何だと!」」


残り二人が私を見る。

男達はどうして私のような子供がいるのか分からず困惑した様子を見せたが、すぐに気づいたようだ。


「まさか、精霊か!?」

「精霊だと!」

「お、おい、俺達は別になんもしてないんだ!だから放してくれ!」

「上から命令されただけなんだ!」

「頼む、命だけは・・・!」


三人は私が精霊だということに気づき、命乞いを始めた。

私としても人殺しには抵抗感があるし、助けを求める相手を殺すのは尚更だ。


う~ん、どうしようか。

私個人としては殺すのは忍びないと思うけど、なんかあれだな。

命令されから私達を襲うのか。

大精霊に危害を加えるのか。

まあ下手に抵抗したら職を失うし、下手したら死ぬかもしれないしね。

でも、そんなことは私には関係ないんだよ。

先に手を出してきたのはそっちだから。

恨むならどうぞ、ご勝手に。

さあて・・・私の糧になれ。


「あは・・・アハハハハハハハハハハ。」


プライドを捨てて必死に命乞いをしている彼らを見ていると、頭痛のような痛みが走ったかと思うと、一瞬なにかが頭を過ぎ去り、不快な気分になってくる。


「な!?」

「急に笑い出して、何を・・・。」

「まずい!?」


「だいじょうぶ・・・くるしいのは、いっしゅん。」


「咎人に、眠りを・・・【磔刑】」


三人が私が魔術を使用したことに顔を青ざめて喚いているが無視する。


「お、俺たちを殺すきか!?や、やめろおおおおおお!」

「い、嫌だ・・・死にたくない!死にたくなあああああああああああああああい!?」

「嫌だ、死んで消えるのなんて、嫌だ!俺は家族に忘れ去られたくないんだ!」


男達を拘束している樹が形を変えて、手足、胴体を拘束し、逃げられないようにする。

三人は拘束から逃れようと暴れまわるが、次の瞬間に地面から生えてきた木の槍で胴体を貫かれ、男達は痙攣した後、動かなくなった、


これで、私は・・・。


男達を殺した後私の中に安堵が残る。

勢いよく貫かれたために血が周囲に飛び散った。

しかしその血を浴びたことで我に返り、急激にさまざまな感情が萎んでいく。


・・・あれ?


自分の状態が良く分からないのでとりあえず深呼吸をして心を落ち着ける。


オーケー落ち着こう。

今、何が起きたんだ?

感情の赴くままに殺ってしまったけど、どうして激情が沸き起こったのか、ころした瞬間に心が安らいだのか、まったく分からない。

殺した三人を知っているわけではないし・・・。


自身の豹変に困惑していると、初めて人を殺したことに対して、落ち着いた少し落ち着いた今でも何も感じない。普通は忌避感や罪悪感を覚えてもいいはずだ。

そのことに若干気分が悪くなる。


シャリーと萩と遊ぼう。

そして癒されるのだ!

そのためにも早く処理しなければ。


気分転換のために楽しいことを考えながら死体を処理する。

そしてローブについた血を魔術できれいにする。





三人の男が来た後も二回敵がやって来た。

2回目も私が直接殺ったが、三回目は敵は瀕死の状態だったので、ゴーレムに任せた。

そろそろ日を跨ごうというところで、また森の中を魔力が走りぬけた。

2回目は敵が撤退したという合図なのでもう終わりだ。

樹海創造で生み出した木々を枯らして元通りにする。


これで終わり、と。


―大丈夫か、リーユ。


―うん?シルフ・・・うん大丈夫だよ。シルフは?


―我も問題ない。だが、リーユは戦闘中に少し魔力の流れがおかしくなってたからな。なにかあったか?


―うーん?特に何かあったわけじゃないけど。


―そうか?我の勘違いだったか。


―私を心配してくれたんだね。ありがとう。


―同じ精霊だから当然だ。


―・・・うん、ありがとう。


―?何もないようだから我はもう行く。さらばだ。


―じゃあね。


鋭いなぁ・・・。

さて、異界を開くとしようか。


私はシルフを見送ってから異界を開く。

シャリーと萩が飛び出てきた。


「うわ!?」

「母様!大丈夫ですか!?怪我とかしてませんか!?」


―りーゆ・・・だいじょうぶ?


―うん・・・大丈夫。心配をかけてごめんね?


私はシャリーと萩を抱きしめる。


「だいじょうぶだから・・・。」





お爺ちゃんが少し気になるのでシャリーと萩を連れて洞窟に向かうことにする。


うわあ・・・ホラー。


近くにある洞窟の道中でもところどころに血が見受けられるので、暗い森という現状だとかなりホラーである。

お爺ちゃんは洞窟の入り口にいた。


―お爺ちゃん。


―リーユか。何かあったのか?


―何も。ただお爺ちゃんが気になったから来ただけ。


―そうか。特に問題は無かったか?


―・・・うん、大丈夫だよ。


一瞬最初に現れた男達3人を殺したときの自身の異変のことが頭を過ぎったが、言わないでおいた。


―ふむ、まあいいだろう。分かってる事を伝えて置くぞ。今回ことでグランバルト帝国は約3000人を投じてきたが、約8割を倒した。帝国におけるわれわれ精霊に対する反感が増えるだろうが、それ以上に恐れられるだろう。さらに、今回は帝国は多大な被害を受けたためにその責任を第二王子が負う事になるだろう。これで帝国は後継者が決まり、忙しくなる。当分は我らに干渉することは無い。


―古代兵器はどうにかしなくてもいいの?


―存在さえ知っておればどうにでもなるから、放っておけばいい。そんなことより、リーユよ何があったか知らぬが休んでおけ。


―・・・うん。


―ではな。


―じゃあね。


お爺ちゃんが洞窟の奥に消えるのを見届けてから、心配そうに私を見ているシャリーと萩を連れて<私>の下に帰った。


私って、そんなに分かりやすいかな?

単純に昔の環境が問題なだけだから・・・問題ない。

私は壊れてなんかいない。






次回辺りでホムンクルス完成、その次で旅たちの予定・・・だといいなぁ。

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