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19話

帝国が動き出す。




改9月15日

萩と出会ってから、4ヶ月が経った。

ホムンクルス製作は順調だが、森で問題が起きた。

グランバルト帝国と思しき人間が森でよく見かけるようになったのだ。


うっとうしい。

早くいなくならないかな・・・。

精霊達がピリピリして嫌なんだけど。


私が街に居る頃にもシャリーは帝国側らしき人間を見たらしいが、それから見かける頻度が増え始めた。

精霊の森の主であるリアに危害を加えてから半年は経っているが、ついに本格的な行動を始めたようだ。

そろそろ軍事行動に出てくるだろう。

しかし、グランバルト帝国はあまりエスタブリッシュ王国の方向には行かず、精霊の森で調べ事をしているようで、不気味である。

グランバルト帝国がどう動くか分からないので、私はゴーレムを作ることに決めた。

ゴーレムはシャリーやホムンクルスを生み出すよりは簡単なので、6体作る予定である。

ゴーレムを作るには肉体と核があれば十分だ。

早速異界を展開する。

森の中だと帝国の人間に気づかれる恐れがあるので異界で作るのだ。


さて、やるかな・・・。

この森に合うゴーレムなら・・・あれを真似るといいか。


作業所の外に庭のような場所を創りだす。

その庭に六つのクルミをばら撒く。

そして魔術を構築し、行使する。


「【創樹林】」


魔術を行使すると六つの樹が生えた。

ミスリルの串を六つ取り出し、魔術を構築する。

完成したら六つの樹にそれぞれ突き刺し、術を発動する。


「【樹人形】」


木々が姿を変えて、六体の狼の人形が出来た。

フォレストウルフを模した人形だ。

次にゴーレムを動かすための核を作成する。

真ん中に大きな陣を描き、それを囲むように六つの陣を描く。

そして六つの陣に魔力を籠めた魔石とクルミを置き、真ん中の陣には文字を描いた石を置く。

これで準備ができたので、術を発動する。


「我が望みし形を成し、表せ・・・【形成】」


石が形を変えていく。

最終的にアメジストのような色を持つ宝石となった。

光に透き通して見てみると、最初に石に刻んだ文字が見える。

成功だ。

これを後五回繰り返す。


少し休憩を挟みながら、六つの核を完成させた。

最後に核に行動理念、思考パターンを組み込む。


結構めんどくさいな。

まとめて作ったほうが良かったかもしれない。

まあでも、時間はそこそこあるから気長にやろう。


六つの魔方陣を描き、その六つの魔方陣に核を置く。

大きな魔法陣を描き、その魔法陣を六つの魔法陣と結ぶ。

そして大きな魔法陣に術式を書き、発動する。

魔法陣と核が淡い光を出す。

しばらく淡く光った後、光が止まった。

これで完成である。

早速核を六体の狼の人形に埋め込む。


六体の狼が動き出す。

私の命令をちゃんと聞くか確かめる。


「おすわり。」


私の命令を聞いて全てのゴーレムが座る。

問題ないようだ。

無事ゴーレム作りは終わった。

ゴーレムを連れて異界から抜け出す。


「ウオーーーーン!」


外に出ると同時にゴーレム達は散らばる。

基本的に<私>を中心に500メートルの範囲を行動して、<私>に近づくものを警戒する。

<私>にかなり接近してきた場合は遠吠えをだして私達に警告をする。

そして、<私>に何かする様ならゴーレム達が集合し、対象に攻撃を始めるようにプログラムしてある。

今はとりあえず六体だけ作ったが、最終的には四十体に増やしたい。

今日もまた培養液の入れ替えをしてから、とりあえず魔力を得るために魔物を狩りに行く。


分身に移り、装備を整えてから、シャリーと萩を呼び南に歩いていく。


やっぱり不穏だな。

今日は何かありそうだ。


しばらく歩いていると、戦闘音が聞こえた。

冒険者かな?と思って確認すると、学者風の女性と騎士のような女性、数人の軍人がおり、学者を守るように軍人がフォレストウルフの群れと戦っていた。

グランバルト帝国の人間のようだ。


あれ?学者と女騎士?

いままで見た事ないな。


―シャリーはあの学者と女騎士を見た事ある?


―いえ、無いですね。他の精霊の方からも聞いた覚えはありません。なにかあるのかもしれません。


即座に隠れて様子を見る。

前衛の二人が剣と楯を持っており、うまく狼の攻撃をいなしつつ防いでいる。

中衛には弓を持った二人と魔術師の一人が前衛によって体勢を崩された狼に魔術と矢を浴びせて減らしている。

後衛には騎士のような女性と学者のような女性がおり、騎士が学者を守りながら戦闘を見守っている。

軍人は良く見かけるが、騎士や学者は見かけないかったので、なんだろうか?と首をひねる。

なんにしても気づかれないようにするべきである。

シャリーと萩に帝国人たちの監視を任せつつ、私は少し離れて異界を展開する。

分身の状態だと普通の人間から見えるので、分身から離れて魔力で体を構築する。

分身は異界の中にしまっておき、いくつか装備を籠の中にいれてから異界から出る。

そして急いでシャリーと萩の下に戻る。


戻りながら考える。


それにしてもおかしいな・・・。グランバルト帝国の目的はイーアスの街だったはず。

忌み嫌っているはずの森を調べるなんて、何か裏がありそうだな。

シャリーが心配だから早く戻ろう。


シャリーたちが見えたので、近づきつつ念話を使う。


―帝国はどう?


―ついさっき戦闘が終わり、大した被害は無いようです。戦闘が終わったら剥ぎ取りをして、周囲の木々を調べているようです。


―木々を調べる?どうしてそんなことを・・・。


考えているとお爺ちゃんの言葉を思い出した。


まさか精霊を狙っている?

私のことがばれたか?

ちゃんと警戒しておいたはずなのに。

・・・いや、決め付けるのは、まだ早い。

監視をして帝国の目的を探ろう。


―帝国を監視するよ。

シャリーは念のためにお爺ちゃんにこのことを伝えてきて。


―ですが・・・。


―大丈夫だから。


―・・・わかりました。


不服そうにしながらもシャリーは頷き、洞窟に向かった。

それを見届けてから、帝国人たちに目を向ける。

小声で話しているのでぜんぜん聞こえない。


―萩、聞こえる?


―きこえる。


―聞こえる言葉をそのまま私に伝えて。


―わかった。


萩が耳をぴくぴくさせて帝国人たちの話を盗み聞きして、私に伝える。

その話を要約するとこうだ。

帝国は現在後継者争いをしているが、既に長男は暗殺されており次男と三男との対決になっているらしい。

しかし、長男の勢力をうまく吸収した三男のほうが現在優勢に立っており、いくら次男が軍部で力を持っているとはいえ、それ以外の部門ではあまり力を持っていない。

そのためエスタブリッシュ王国に攻め込む計画が破綻したらしい。

このままでは三男が勝つのは時間の問題なので精霊を捕まえて、精霊から魔力を奪い、古代の兵器を使い、力で勢力を挽回するつもりらしい。

彼らが森に来ているのは精霊の数と種類、力を調べるのが目的らしい。

この調査が終わったら本格的に作戦が始まるらしい。


それ、精霊に聞かれたらまずいよね?

現に私が聞いちゃってるし。

・・・森でこうやって話してるのは第三王子の勢力を警戒してなのかもしれないけど、迂闊すぎじゃないかね。

・・・うん?


帝国人たちを観察していると黄色のネックレスが目に入った。


なるほど・・・。あれは探知専用の魔道具か。

何かが話を近くで聞こうと近づくと、気づくというわけか。

さすがにそこまで馬鹿じゃないか。

まあ、今回は私が萩を連れていたから話は丸聞こえなんだけどね。

お爺ちゃんに伝えて、対策したほうがいいかな。


―萩、いくよ。


―うん。


私達は洞窟に向かう。





シャリーはちょうど私達が洞窟に近づくと洞窟から出てきた。

シャリーに事情を伝えてからお爺ちゃんのところに行く。


―お爺ちゃん。


―リーユよあまり危険なことをするのは感心せんぞ。


―ごめんなさい。でも大切な話がある。帝国軍人の話を盗み聞きしてきた。


―帝国の動きが分かったのか?


―うん。帝国は―――


お爺ちゃんに帝国の目的を説明する。

お爺ちゃんは鼻を鳴らして言った。


―精霊の力を使って古代兵器を動かすか・・・。傲慢な人間は変わらないな。


―古代兵器って何なの?


―人魔戦争以前の人間が開発した軍事兵器のことだ。かなり強力な反面、制御が難しく、扱いきれなくて封印されたものだ。そんな欠陥兵器を使おうとするとは、無謀にも程がある。


―そんなに強いの?


―うむ。昔は現代と比べて魔術も科学も進んでおったからな。人魔戦争の初期の人間は強力な武器を持って、基本的な能力が違いすぎるにも関わらず魔族と互角に戦っていた。そんな時代の人間が作ったものだ、街を1つ消すくらい造作もなかろう。


―そうなんだ。でもなんで欠陥?


―大抵の古代兵器は強すぎるため、衝撃波で周囲の人間を跡形もなく吹く飛ばしてしまう。ゆえに欠陥なのだ。


―なるほど。


―なんにしても精霊を狙うのは見過ごしては置けん。対策しておこう。


―そうだね。


私達が洞窟から出て行った後にお爺ちゃんが森の精霊達に話を伝え、逆に近々やってくる帝国を待ち構えることにした。


帝国、幼女に悪事がばれて飛んで火に入る夏の虫状態。

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