1話
初投稿です。
よろしくお願いします。
改9月5日
改10月3日
う、うぅん・・・うん?あれ、あれ?
なんか暗いな。
・・・。
は?いや、おかしいだろう?
なんだ、なんでこんなに暗いんだ!?
一寸先も見通せないぞ!どういう状況なんだ!
どうして私はこんな・・・。こんな?こんなとは?
ま、まあ今はとりあえず現状を把握しよう。そうしよう。そうしなければいけない。
今の私は・・・暗い場所にいる。これは一寸先も見渡せないから、視覚情報からでは今いる場所はまったく分からない。くらいということは光が差してないんだな。
それなら音は・・・微かにする。
微かに風が流れているような音と、さざめく様な音が聞こえる。
この音はおそらく風に揺られた木々の音だろう。
私の周辺、すぐ横からも聞こえるという事は、外にいる?なぜに?
なんらかの理由で目が見えなくなった?
それなら一応辻褄が合うけども・・・なんでか手足が動かない。何も出来ない。むしろ感覚が無い。
え?達磨状態?それなら・・・うん、詰んだ。いや、何冷静に詰んだとか考えているのだろうか?
とりあえず深呼吸だ。クールになるんだ・・・。
よく分からない状況に置かれ、混乱する頭を整理するために深呼吸をしようとする。だが。
あれ?・・・呼吸がおかしい。
呼吸は出来る。
だが、いつもと違う。
なんというか、上手く言い表せない、奇妙な感覚だ。
どいうことだ・・・?
一体どうなっているんだ。
私に何が・・・。
・・・いや、分かった。
手足の感覚は無いし、口や目を開くことが出来ない。
つまり・・・夢だな。
しかし、どうやって目覚めるか・・・。
現実逃避していると木々が揺れる音に混じって、複数の足音が聞こえてきた。
話し声と共に、じゃりじゃりと土を踏みしめ、がさがさと草を掻き分ける音もまた聞こえる。
「ふう、大分奥まで来たな・・・。」
「そうだな。そろそろ休憩するか?丁度開けた場所にでたしな。」
「そうね・・・すでに6時間ずっとは歩きとおして、戦ってたから流石に疲れたわ・・・。」
「そうだな・・・そろそろ日も暮れるようだし、ここで休憩するか。野営の準備をするぞ。」
「ええ。」
「よし来た。」
声からして男二人と女一人の三人組のようだ。
近くにいるのだろうが、距離感がつかめない。
それでもそう遠くは無いだろう。
三人に話を聞ければいいが、声も出ないのでどうも出来ないのが歯がゆい。
しかし、『戦ってた』というのが少し気になる。
三人の目的は分からないが、会話を聞いていれば何か分かることもあるだろうと思い、彼らの会話に集中することにする。
「しっかし、なかなか見つからないねぇ。もう、二日は森を彷徨ってるぜ・・・。」
「仕方ないでしょ、珍しい魔獣の上にあまり情報も手に入らなかったしね。まあ、一番の問題はこの森が広すぎることにあるでしょうけど。一応生息範囲は限られているらしいから地道に探すしかないわ。」
「そうは言ってもな・・・こうも見つからないと、一度街に戻ることになるかもしれないぜ?手持ちの食料は四日分だからな。依頼の期限は長いとはいえ、この場所の依頼は少なく、片手間に他の依頼をこなす事はできないからそうそう時間もかけていられないしな・・・。」
「そうだけど・・・。」
「おいおい二人とも、しゃべるのはいいが手伝ってくれ。このままだと日が暮れて魔物や魔獣が活発になってしまう。」
「すまねぇ・・・俺は火を起こすための枯れ葉や枯れ木を集めてくる。」
「ごめんなさい、急いで獣避けの結界を張るわ。」
会話が終わると、足音が遠ざかっていく音、地面に何かを書いているような音、何かを組み立てているような音だけになった。
魔獣?
魔物?
結界?
依頼とも言っていたな・・・。
一体どういうことなんだ?
彼らは森を彷徨っていると言っていた。
つまり此処は森の中、それも大分奥の方らしいな・・・。
だが、私は森に入った記憶はないぞ。
そもそもいつの間にかこの場所にいたしな。
でも森というなら周りから木々が揺れる音がするのは納得だ。
それにしても、そう考えると私は何処にいるんだ?
音からして地面の中にいるという幹事では無いぞ?
分からんな。考えても分からない事は後にしよう。
街が近くにあるようだが・・・。
くっ、話が聞ければ・・・。
・・・むむぅ。
認めよう。
これは夢ではなくて、現実だ。
さすがに、この状況を夢だと考えて現実逃避して後で困るのは嫌だしな・・・。
はあ、夢だったら良かったのに・・・。
そう思いつつ、ため息を吐きそうになるが、出ない。
口が開かないので当然である。
そういえば、口を開くことができないからため息なんて出ないよな。
口の感覚というか、顔の感覚も無いんだが。
さて、どうするか・・・。
声がでないので近くにいる三人組に尋ねるのを諦め、他に現状を知る方法が無いか思案する。
せめて、手足だけでも動かせれば・・・。
・・・。
手足や顔の感覚が無い。
でも音は拾える。
分からなさすぎてつらい。人ではなくなったと言われたら納得できそうだ。
それにしても・・・どうして音が聞こえる、つまり聴覚だけ正常なんだ?
五感のうち味覚、触覚、嗅覚、視覚は機能してないようで、機能してるのは聴覚だけ。
聴覚だけ機能する状況っていったいなんなんだろうか。
どうせなら味覚が機能してほしい。
なんとなくお腹すいた。
いや空いてないけど、口さびしい。
白いごはんと味噌汁、おかずは・・・煮つけがいいな。
・・・なんで私は献立を考えてるんだろうか。
もっと考えるべきことがあるだろうに・・・。
どんどん思考がずれていくのを自覚し、少なくとも今私がどうなっているかわかればいいのにと思っていると・・・。
うん?あれ、すこしづつ明るく―――
突然のことに戸惑っていると・・・薄っすらと周囲の風景が見えてきた。
木、木、木・・・たくさんの木々が見える。
高さはまばらだが、大きなものでは30メートルはあるのではないかと思う。
今の私は空中から見下ろしている形だ。
ぼんやりとしていて見えづらいので目を凝らしてみると、だんだんと鮮明になってきた。
見下ろしている状態だが、鮮明になりつつある視界の中で、テントを組み立てている男と何か地面に文字らしきものを書いている女を捕らえた。
文字を見れば少しは何か分かるのではと思い、目を凝らすと、文字が拡大されて見えた。
見たことの無い字だ。
何処の国の文字かは判別できない。
少し気になるが、読めないので現状把握を優先する。
周囲を見渡すとさっきはぼんやりとしか見えなかったが、今ははっきりと見える。
しかし、周囲に生えている植物に違和感を持つ。
どうして、こんなにばらばらなんだ・・・。
普通は規則性がある物だと思うがな。
桜、ブナ、ケヤキ、ヤシの木、松、杉、イチョウ、樫・・・普通ではありえない組み合わせだ。
混沌とした植生の中、なぜか胡桃の木が一つだけぽつんとあった。
少し胡桃の木が気になり近づいて観察しようとすると、女が手を止め周囲を見渡し始めた。
「どうした?」とテントを組み立て終えた男が聞く。
「魔力反応がしたわ。近くで魔術を行使している存在がいるから注意して。」と鉄串を片手に周囲を警戒する。
「どこか探れないか?」と男が聞くと。
女は「やってみる」と答え、懐から同じような鉄串を取り出して地面に刺した後、目を閉じた。
何をするのだろうか?と女の方を見ていると、女からゆっくりと青い光が漏れでてきて女を中心にゆっくりとだが、確実に広がっていく。
一体何なんなんだ!と思い、周囲を見渡していると、胡桃の木も薄っすらと光っているのに気がついた。
女とは違い濃い緑色の光を発している。
胡桃の木に吸い寄せられるように近づく。
そっと胡桃の木に触れる。
体に電流が流れたような錯覚を受けた。
これは・・・私、か?
なぜかは分からない。
ただ、理解したとき不思議と納得することができた。
なんで光って・・・ああ、そうか。
胡桃の木が光っているのは私が女の言う魔術を使っているからなのだろうと気づいた。
おそらく女の感じた魔力反応とは私のことなのだろう。
いやいや、待て。
気づかれるのはまずい気がする。なんとなくだが。
と、とりあえず見つからないようにしなければ・・・。
魔術を解除すればいいはず・・・。
あれ?
とりあえず魔術を解除しようと思ったが、固まる。
解除の仕方が分からない。
それもそうだ。現状もよく分かってないのに魔術なんで物の解除の仕方なんて分かるはずが無い。
ど、どうする!?魔術さえ解除すれば気づかれないはずなんだ!
そもそもどうやって私は魔術を発動したんだ!?
分からないことばかり増えるな!
あわてている間にも青い光がだんだんと私に近づいてくる。
まずい。まずい、まずい、まずい!
背中に冷や汗が流れるような錯覚がする。
焦りながらも解除できないか悪戦苦闘していると、「戻ったぞー」と枯れ木を抱えた坊主頭の男が戻って来た。
それで、集中が乱されたのか青い光が止まった。
ナイス!知らない坊主頭の人!
今のうちだ!
坊主頭の男がやってきたことで青い光が止まった。
まだ猶予はある。
坊主頭の男が来たことで光が止まったので、少し冷静になることが出来た。
心を落ち着かせるように深呼吸をする。
そして思いついたことを実行してみる。
この魔術を使用したとき、私は現状を把握したい、今どうなっているか分かればいいと思った。
つまり、どういう状況になっているか見たいと思ったのだ。
なら逆に見ないようにすればいい。
目を閉じればいい。
再びあの暗闇に戻ればいい。
目を閉じるイメージを浮かべれば魔術は止まるはずだ。
そう思い、イメージを固めていく。
ゆっくりと今見ている光景が薄れ、消えていく。
よし!出来たぞ!
思ったとおりだと喜んでいると、「どうかしたのか?」と坊主頭の男らしき男が聞いていた。
「魔法反応があったらしい。それで、どうだった?」
「だめね、魔力反応が消えたわ。どうやら魔術を解除したようね。まったく・・・。」
諦めたようなのでほっと息をつく。
「そうか・・・。念のため警戒を強めよう。」
「分かったわ。二重に結界を張り、罠も仕掛けるわ。」
「すまん。とりあえず、火をつけようぜ。大分暗くなってきやがった。」
「ああ、早く野営の支度を終わらせよう。今、火を点ける・・・【火種】。」
【火種】?
今、変な感覚がしたな。
今のが魔術か?
でも何で分かったんだろうか?
一度魔術を使ったから?
でも、一度使っただけで簡単に分かるものなのか?
・・・なんか短時間で状況に慣れてきてるな私。
人間環境に即応するものなんだな・・・私は人間じゃないっぽいけど。
それについさっきまで現実逃避していたし。
いや、今も現実逃避しているようなものか・・・。
いったい、私はどうなっているんだ?
魔物?魔獣?魔術?
そんなファンタジーな世界の生まれじゃないぞ私は。
・・・今はさっきの感覚を忘れないようにしておこう。
そういえば、結界は・・・。
考え事をしていると、会話が聞こえた。
雑談しているようだ。
すこしでも情報が欲しいと思い、思考を打ち切り雑談を盗み聞きする。
特に気なるような事は話していない。
それからしばらく雑談が続き、食事を作っているような気配がする。
どれほど時間が経ったであろうか?
ぼんやりとしつつ彼らの会話を盗み聞きしていると・・・。
「結界を張り終えたわ。」
女が結界を張り終えたようだ。
どんな物なのか興味がある。
早く眠らないかなと思っていると・・・。
「よし、それじゃあ早く食事を済ませて明日に備えることにしようぜ。見張りはどうする?」
「3時間交代にしよう。俺が一番目で次にガッツ、最後にアリアでいいか?」
「いいぜ。」
「分かったわ。」
話し合いが終わったようだな。
坊主頭の男はガッツ、女はアリアというのか。
あと1人の名前が分からないが・・・まあ、そのうち分かるだろう。
とりあえず、今もっている情報をまとめておこう。
考え事をしている間に三人は食事を終え、見張りをしているリーダーらしき男以外は眠ってしまったようだ。
さて、これからどうするべきか・・・。
分からないことが多すぎる。
・・・彼らは起きたら出発するだろうか?
彼らが去るまでにできるだけ情報を得ておきたいな・・・。
しかし・・・朝までどうしようか。
まったく眠くないぞ。
・・・魔術の練習でもしようかな。