16話
ホムンクルス作成開始。
微妙にGL要素っぽいのがあります。
改9月14日
黒髪の女性(椿というらしい)にお礼を言った後アーク達と店を出た。
彼らは祝いと称して今回かなり飲んだようでアークは顔を真っ青にして、アリアは店を出るときには意識が無かった。
ただしガッツはざるだそうで、平気そうにアリアを背負いアークに肩を貸しながら別れの言葉を言ってから去って行った。
「じゃあな!また機会があったら会おうぜ!」
「うん、また。」
店を出たときには真っ暗だったが、私達には関係ないので宿に向かい一泊した。
「ふはぁ・・・。」
眠い。
なんというか、結構魔力使ったからか・・・。
おのれグランドドラゴン・・・でも小さいドラゴンはかわいかったです。
明日で森に戻るからもう寝るか。
◆ ◆
「や、やめてくれ!」
ごめんね。
でも――は生き残りたい。
君を――して――は生き残る。
「俺を殺しても近い将来――として死ぬだけだぞ!」
生き残った者が――になる。
未来は無い。
でも、それでも、――生き残る。
一日でも長く、生きる。
それが――との約束。
恨んでくれて構わないよ。
「や、やめ・・・。」
――に――について教えてくれてありがとう。
さようなら。
・・・。
これで、後6人。
いつになったら終わるんだろう。
・・・ありがとう。
これで、――は生き残る。
生き残れる。
約束を果たせる。
早く、早く・・・。
次を・・・。
・・・。
ああ、また来たのか。
仕方ない。
こっちおいで。
まだ、大丈夫。
◆ ◆
朝になったらホムンクルスを作るのに必要な材料を集めに市場に向かった。
必要なものは金や銀、鉄、鉛などの各種金属とリンやカルシウム、硫黄などの元素を多く含む物である。
必要なものをすべて買って、宿に戻ったら、お爺ちゃんがギルド長と領主宛に手紙を書き宿の従業員に頼んで届けてもらった後、出街手続きを行って森に帰った。
道中、
―リーユよ街は、人間の社会はどうだった?
―そうだね・・・最初は不安や戸惑いがあったけど、いろいろ知らなかった事を知れたり、経験できたりしたからよかったよ。
いい人もいたしね。
―そうか。だが、出会った者がすべて善人であるわけではないということはゆめゆめ忘れるな。我ら精霊と人とでは生きる時間、価値観が違いすぎる。特におぬしは旅に出る必要がある。木の精霊としてもカリュアーとしてもばれたら狙われる可能性が高いのだからな。
―うん、分かってるよ。
―それならよい。
話をしながら、魔物に襲われたこと以外は何事もなく帰ることが出来た。
洞窟の前でお爺ちゃんと別れたあと、シャリーが待つ<私>の元に向かう。
シャリーと<私>が見えてくると私の気配に気づいたのかシャリーが勢いよく振り向く。
そして私の姿を認めるとみるみる目に涙を溜めながら、私に向かって勢いよく飛んで込んで来た。
「は~は~ざ~ま~!」
私に抱きつき胸の中でわんわん泣く。
え?・・・え?え?どういうこと?
シャリーの突然の行動にかつて無いほど狼狽する。
「ど、どうしたのしゃりー?」
とりあえず問いかけてみるが、泣くだけで答えはない。
何度か問いかけても返答がないので、シャリーの好きなようにさせてあげた。
そして、頭を撫で「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と声をかけて落ち着くのを待った。
大体1時間ほどでシャリーは落ち着いた。
「申し訳ありません、母様・・・。」
赤面しながら上目遣いに私に謝る。
しかし依然として私に抱きついたままである。
しばらく泣いてある程度落ち着いたようなので、シャリーに事情を伺う。
―私がいない間に何があったのシャリー?ニンフが何かした?
念話で問いかけるが、シャリーは不満そうである。
仕方がないので声に出して問いかける。
「・・・わたしがいないあいだになにがあったのしゃりー。」
私の声を聞いてシャリーはうれしそうにはにかみながら答える。
「母様がいないからさびしくて・・・。」
「え?」
その後、詳しい話を聞いたのでまとめると、
シャリーは生まれた際にお爺ちゃんによって様々な知識を埋め込まれていたので、我侭を言わない分別があり、私に迷惑をかけないようにがんばっていた。
しかし、私がお爺ちゃんとともに街に行ってしまったら、だんだんさびしくなってしまったようである。
それでもがんばって、<私>に寄ってくる魔物を退けたり<私>が人間に見つからないように隠していたが、三日目で捨てられたのではないかとだんだん不安になってきて、六日目には大勢の人間が近くに来てしばらく森で何事かしていた。なので、<私>が怪しい人間達に見つからないように長時間魔術を使ったために、私が帰ってきたときには精神と体力ともにかなり疲弊していた。
そのため、私を見て不安と緊張が解け、さっきの事態に陥ったのである。
つまり、大人びているシャリーに任せきりにした私が大体悪い。
なお、ニンフはたびたび見に来てくれたそうだが、人間が来てからは今まで見てないそうだ。
よくよく考えたら生まれて間もない子供を森で一人きりにして、八日間何も連絡しないとか大分ひどいよなあ・・・。
そう思い、シャリーを思い切り抱きしめる。
シャリーは少し驚いたが、うれしそうに私を抱き返す。
私はシャリーの今回の様子を見て、可能な限りシャリーを一人にしないようにしようと、シャリーを不安がらせるようなことはしないようにしようと決意した。
・・・シャリーは私の子供だからね。
私はあの人と同じようにはなりたくないし。
あれ?あの人って誰だっけ?
嫌な人だって事は分かるけど・・・。
よく憶えてないしまあいいか。
それにしても、ニンフはどこに行ったんだろうか?
うん?
「あれ、この魔力は・・・。」
「呼ばれた気がしたから来たぞ!」
「あ、ひしゃ!?」
いつの間にか現れたニンフに抱きつかれた。
とりあえずシャリーを潰さないように気をつける。
―シャリー大丈夫?
―は、はい。母様は大丈夫ですか?
―私は問題ないよ。・・・ニンフって念話じゃなくても話せたんだね。
―いつもは念話だがな。さて、リーユ。何かあったか?
―え?グランドドラゴン倒したけど?
―いや、そういうわけでは無いんだが・・・。まあいい。もっとシャリーに構ってあげたほうがいいぞ?シャリー大分泣いてたからな。
―ニンフ様!
―・・・ごめんね。
―・・・はい。もっと構ってくれたら、許します。
―うん。
とりあえず今日はシャリーと会話したり、遊んだり、勉強したりすることにしてホムンクル作りは翌日にすることに決めた。
そして翌日、シャリーは相変わらず私にべったりである。
シャリーは大人ぶるのをやめて私に甘えるだけ甘えるつもりのようである。
シャリーを撫でたり手をつないだりしながら、ホムンクルス作りをするためにお爺ちゃんを呼びに行く。
もちろんシャリーと一緒に。
洞窟にたどり着くといつもどおり念話で呼ぶ。
すぐにお爺ちゃん現れる。
―ホムンクルスを作るにはある程度環境を整えばならんから早速おぬしの本体のところに行くぞ。
―うん。シャリー、手をつないで行こうか。
―はい!母様!
私たち3体は<私>のところに向かう。
お爺ちゃんは<私>の周囲を調べた後、私にいくつか魔石のように見えるきれいな石を渡す。
―それは純石といって、魔石の一種だ。魔石よりかなり性能がいい。それに魔力を注ぎ込むのだ。
―分かった。
お爺ちゃんが地面に術式と魔方陣を書いている横で純石に魔力を注ぐ。
魔石と比べて容量が大きいのか、1つ満タンになるのに3分も掛かった。
お爺ちゃんが私の魔力を吸収し終えた純石を今描いているものに組み込んでいく。
大体30分ほどで準備は終わった。
お爺ちゃんが描いたものは私がシャリーを生み出したときに描いたものと比べると、かなり複雑で30倍の規模はあるように思える。
そしてお爺ちゃんは陣の真ん中に宝石のようなものを置くと、知らない魔術言語で術を唱え始めた。
「【――――、――――――――――・・・―――――】」
唱え終えると同時に眩い光が辺りを包み込んだ。
私はあまりの眩しさとすさまじい魔力の圧力に驚き、シャリーを守るように抱きかかえながら、目を閉じた。
しばらくしたら光は薄れたようで、圧力も減ったので目を開けると知らない空間が目に入った。
―お爺ちゃん、これは・・・。
―これはダンジョンや迷宮と同じ類のものだ。リーユ、おぬしにこれを与えよう。これがこの空間を維持する核だ。
そう言ってお爺ちゃんは私にさっき陣の中央に置いた宝石を渡す。
いろいろと疑問があるが、かなり疲れているようなので急いで受け取り礼を言う。
―ありがとう。
―ああ。・・・わしは洞窟に戻るから、ホムンクルスはわしが以前教えた手順でやるのだ。ではな。
そう言ってお爺ちゃんは去った。
手元にある宝石を観察する。
この空間は宝石から出る魔力が維持しているようなのでそれを止めてみる。
すると空間が薄れていき元の場所に戻ってきた。
なにこれ・・・。世界の中に自分だけの世界を構築する魔術?これって、魔法なんじゃ・・・。
いや、お爺ちゃんなら魔法の一つぐらい使ってもおかしくないか。
とりあえず後日聞こうと思いつつ、ホムンクルスを作るための準備の一環として、地面に術式と魔方陣を描いていく。
そして<私>から手ごろな枝をいくつか手に入れる。
枝からホムンクルスの骨を作るのだ。
描き終えたら陣の中央に枝を置く。
さらに魔力を籠めたクルミを中央に置き、唱える。
「【変換】」
陣から光が溢れたあと、陣の中央に骨が出来た。
とりあえず、またさっきの空間を作り出し、その中に作った骨を入れる。
骨を作るのに描いた陣を消して、新たに魔方陣と術式を描いていく。
今度は一つの陣を中心に六つの陣が囲むように描く。
さらに出来上がったものを囲むように術式を描く。
最後に真ん中の陣を囲むように描いた六つの陣に魔力を籠めた魔石を置き、中央にクルミとドラゴンの眼球をビンに入れたものを二つ置く。
シャリーに術の支援を任せて、唱える。
「我が望みし形を成し、表せ・・・【形成】」
ドラゴンの眼球はクルミと交わり、形を変えて、心臓のようなものに変わった。
心臓のようなものが入ったビンを手に取り、保存用の液体を入れて蓋を閉めた後、骨と同じように空間にしまう。
これで今日の作業を終えることにする。
後の作業はお爺ちゃんの力を借りなければ進められないからである。
とりあえず私の魔力を吸収させたクルミをシャリーにも渡して一緒に食べる。
その後は昨日と同じようにシャリーと一緒に過ごした。
よくよく考えてみたら、主人公が育児放棄(?)していたことに気づいたので今回シャリーの話を前半に書きました。




