12話
どうにかドラゴンと出会うところまで行ったけど5000字あります。
途中に思いついたエピソードを入れたりしたせいです。すいません。
※大きく加筆修正しまして約6800字になってしまいました。
分割したほうがよかったですかね(´・ω・`)
加筆した理由に関しては活動報告に書きましたのでそちらを参照してください。
改9月12日
二度目の改稿の結果、文量が一万字近くになってしまった。だが私は反省しない、自重しない。
(`・ω・´)
領主の館は街の北西の丘陵地帯にあるので着くのに少し時間が掛かった。
しかし今の時間はもうすぐ予定の3時になるであろうというところなので、ちょうどいいタイミングで来ることができた。
館のほうを見ると二人の門番がいた。
「止まれ。ここは領主様の館だ。何の用があってここに来た?」
「わしらは領主と面会の約束をしておる。その証拠に手紙を持っている。」
「拝見させてもらっても良いだろうか?」
「構わん。」
応対していた門番がお爺ちゃんから手紙を受け取り領主の手紙であることを示すエンブレムを確認してから中身をざっと見る。
「確認が出来た、本物のようだ。粗雑な対応をして、申し訳なかった。」
「構わんよ。」
「感謝する。今門を開けよう。」
そう言ってからもう一人に門を開けるように指示する。
「つい先ほど領主様に客人がきたので少し面会が遅れるかもしれないが良いだろうか?」
「この後特に用事は無いから問題ない。」
「門を入りまっすぐ行けば入り口だ。ドアノッカーを叩けば誰かが対応してくれるだろう。」
「分かった。」
門番の二人に別れを告げた後領主の館に入っていく。
領主の館は近くで見ると古びているが、かなりしっかりとしたつくりをしているようだ。
玄関にあるドアノッカーを叩く。
少し待つ扉が開き、黒髪のメイドが現れた。
「ようこそいらっしゃいました。フィン様とリーユ様ですね?こちらにどうぞ。」
さすが領主の館。
本物のメイドだ。
でも、さすがに日本のサブカルチャーみたいなメイド服ではなくて、昔イギリスの家事使用人が身につけていたお仕着せなのか。
黒髪のメイドは客室のような場所に私達を案内する。
「申し訳ありません。ただいま急な来客があり領主様が対応しておられるのですぐには来られないのです。ここでお待ちいただけませんでしょうか?」
「客人か・・・なぜ急にきたのだ?」
「申し訳ありません。答えることが出来ません。」
「ふむ・・・了解した。」
「ありがとうございます。ただいまお茶とお菓子を持ってまいりますのでくつろいでお待ちください。
それでは失礼します。」
黒髪のメイドは綺麗に一礼してから出て行った。
―お爺ちゃん。領主ってどんな人?
―油断できない曲者だ。
―え・・・。
―リーユ、あまり油断するなよ。精霊だからそうそう変なことはしないとは思うが、一応な・・・。
―分かった。
その後、黒髪のメイドがお茶とお菓子を持ってきてくれたが、領主と面会できるのは一時間ほど経ってからだった。
「いやはや、大分お待たせしまったようですな。申し訳ない。」
そう言いながら30代後半ほどの男性が入ってきた。
髪は白髪で、精悍な顔つきをしており、身長は180cmほどだと思われる。
私の身長だと見上げるのがつらい。
「急な客人だったそうだな。何者だったのだ?」
お爺ちゃんが謝罪をスルーして領主に聞いた。
領主は苦笑しつつ近くの椅子に腰掛けた。
「王都からの使者ですよ。西側で事件が起きたそうで全ての貴族に召集を掛けてきたのですよ。」
「全貴族に召集だと?かなり大きな事件のようだな。」
お爺ちゃんが訝しげに領主を見る。
「そうですね。しかしまだ不確かなことが多いので事件については話すことは出来ませんがね。」
「そうか。お主も呼ばれたのであろう?」
「私はお断りしましたよ。帝国の情勢が不穏なので動くことは出来ません。それに森で問題が起きたらしいですからね。」
「うむ。カインにも話したが、その事とこの子について話があって来たのだ。」
「彼女について?」
領主がこちらを見る。
領主の瞳からは好奇心が見え隠れしている。
「この子は木の精霊だ。」
「・・・なるほど、それならグランバルト帝国が彼女に気づいたら危険ですね。」
「そうだ。だからいざとなったらおぬしの家に後ろ盾になってもらおうと思ってな。」
「それなら分かりました。微力ながら当家が手助けしましょう。」
「頼むぞ。」
グランバルト帝国に気づかれたら危険?どういうことだ?聞いてみようか?
―グランバルト帝国に気づかれたら危険ってどういうことなの?
―そういえば説明していなかったな。説明するとながくなる。それに関しては宿に戻ったら話すとしよう。
―うん分かった。
念話での会話を終えるとお爺ちゃんは領主に森で起きた問題について説明した。
「大精霊様に危害を加えるとは・・・。グランバルト帝国は正気なのか?」
「なりふり構っていられないか、愚かなだけだろう。」
「どちらにしてもこのままではいけない。こちらでも帝国を探るとしましょう。」
「頼む。ああそれと、森に戻る前に南の山脈のグランドドラゴンを討伐する予定だが、なにか不都合はあるか?」
領主が怪訝な顔をしてお爺ちゃんを見る。
「グランドドラゴンですか?特に問題ないでしょうが・・・あなたが?」
「いや、この子が倒す。」
「彼女が?精霊とはいえドラゴンを倒すのは厳しいのでは?」
「わしが教えておるからな、倒せる。」
「まあ、確かにあなたに教わっていればどうにかなるでしょうな。」
そう言って領主は苦笑する。
なんか領主が納得しているけど、ドラゴンってそんな簡単に倒せる存在じゃないと思うんだけど・・・なにこのお爺ちゃんへの信頼感は。昔に何をやったのやら・・・。
「木の精霊殿。貴女の御武運をお祈りしましょう。」
「わたしはリーユ。リーユとよんでくれたほうがいい。」
「そうですか。では、リーユ殿。」
「なに?」
「ケーキは好きですか?」
「・・・けーき?」
「ええ。私の領地では果物の栽培が盛んでして、その果物をふんだんに使ったケーキがあるのですよ。」
「・・・。」
果物をふんだんに使ったケーキ・・・。
領主の館で作られたケーキなら、シェフは一流だし、素材も・・・。
「もうすぐ焼きあがると思うのですが・・・いかがですか?」
「・・・いいの?」
「ええ。」
―お爺ちゃん・・・。
―・・・おそらく、木の精霊ということを伝えているから問題はないと思う。
「たべる。」
「今用意させましょう。」
領主が手を叩いてしばらくするとワゴンを持った執事が入ってきて、部屋のテーブルにケーキセットを置いた。
そして慣れた様子でカップに紅茶を注ぎ、ケーキを切り分けていく。
執事は私たちにケーキを配膳した後、一礼してから部屋を辞していった。
「さて、どうぞ。」
領主は一口食べて見せてから私達に勧める。
おお・・・久しぶりのケーキだ。
・・・おいしい。
半分くらい知らない果物だけど、酸味と甘みが丁度いい。
「満足していただいた様でこちらもうれしいですよ。それに、貴女のかわいらしい笑顔も見ることが出来ました。」
「!?」
何時の間に距離を詰めていた!?
なんか近い!
というか笑顔?
私の笑顔は私も見たこと無いけど!?
「驚かせてしまったようですね。申し訳ありません。でも、照れた様子もかわいらしい。貴女の―――」
気をつけろとはこういうことか・・・。
つまり、領主は女好きなのか。
だけど、守備範囲広すぎじゃ・・・。
「はあ・・・そこまでだ。あまりその子に言い寄らないでもらおうか。」
「ははは、怖いお方だ」
お爺ちゃんが一睨みすると領主は私を褒めるのを止めて自分の席に戻っていった。
私はケーキを頬張る。
ケーキを食べ終えたに頃お爺ちゃんが領主にお暇するうまを伝えた。
「さて、そろそろお邪魔するとしよう。」
「分かりました。メイドに案内させましょう。」
「じゃあね。」
「貴女もお元気で。」
領主がベルを鳴らしてメイドを呼んだ。
呼ばれたメイド茶色い髪をしたメイドで、さっきのメイドとは違うメイドだった。メイドの案内に従って館を後にする。
外は既に日が暮れており、見通しが悪くなっていた。
しかし私達精霊は魔力を視認できる。なので夜でもある程度魔力の光で周囲がぼんやり明るいため問題なく宿までたどり着く。
宿で食事と入浴を終えたら早速帝国について聞く。
―領主の館でも言ってたけど何で木の精霊だとグランバルト帝国に気づかれると危険なの?
―一部の者やある国に、木の精霊に限らず精霊すべて狙わるが、特に木の精霊だと狙われるのだ。木の精霊は植物の成長を促進させることが出来る。その力を使えば作物を急激に成長させることができる。また、木の精霊は精霊の中でも特に力が強い。精霊は基本的に魔木に宿る存在だからな。木に宿るため、木の精霊は他の精霊に比べても力があるのだ。ゆえに精霊の中でも特に木の精霊を狙う。
―木の精霊ってすごかったんだ・・・。それに植物の成長を促すちから・・・。でも、作物を急激に生長させても土地がやせ細ると思うんだけど・・・。
―普通はそうだな。しかし木の精霊は土地を弱らせずに成長させることが出来る。
―そうなの?
―そうだ。木の精霊が植物を成長させるには魔力を使う。精霊は魔力が豊富だからな。しかも下級の木の精霊でも1つの村の作物をすべて急成長させることが出来てしまう。それが、中位や上位ならば・・・分かるな?
下位の精霊で村一つならば、上位クラスともなれば、下手をすれば国一つを豊作にすることが出来るだろう。
―う、うん。でも、この街の領主には私が木の精霊であることを明かしていたけど大丈夫なの?
―この国は精霊信仰が盛んだから精霊を利用するようなことはしないのだ。特にあの領主の一族は特別だからな。問題ない。
―なるほど・・・。グランバルト帝国は違うの?
―あの国は人間至上主義で精霊だろうが神獣だろうが見下しておる。それにあの国には精霊を嫌悪している者も多くいるからな。
―どうして?
―リーユよなぜ人族や魔獣が我ら精霊を視認することが出来ないが、魔物が我らを視認できるのか考えたことがあるか?
そう問われて少し考える。
確かに森ではたびたび魔獣と接触したが私の気配を察することが出来るだけで魔物のように私を視認することは出来ていないようだった。
当初はそのことに関して疑問に思ったがそういうもの何だと思っていたため改めて問われると確かに変である。
―う~ん・・・。
―そう難しく考えなくても良い。あえてヒントを出すならば魔物以外に精霊を見ることが出来る存在は何だ?
魔物以外に私達精霊を見ることが出来る存在?神様とか?
そういえばシャリーも私や精霊を見ることが出来るしなあ。
・・・うん?そういえばシャリーは使役妖精だけど魔術で作られた人工的な精霊だ。そして私達精霊も同じ存在である精霊を見ることが出来る。
もしかして・・・
―魔物も精霊・・・?
―厳密には違うが、そういうことだ。魔物の魔力をどう感じる?
―歪な感じがするけど・・・。
―そうだ。この世界に溢れるマナは清浄のマナと不浄のマナの二つあり、均等に分かれておる。精霊は清浄のマナだけを持ち、魔物は不浄のマナを多く持つ。
―魔術を使うには魔力を使うよね?マナだけだったら魔術は使えないはずだけど。
―だから精霊は魔木と呼ばれる木に宿るのだ。木の生命力で精霊は魔力を生み出す。しかし不浄の魔力を多く持つ魔物は生命を持つものに宿ることが出来ない。そして世界を漂う。そうして魔物は長い間世界を漂いながら魔石を作り出す。そして魔石を核として仮初の肉体を作り出し、生あるものを捕食することで魔石に生命力を、魔力を蓄えるのだ。
―どうして魔物はわざわざ魔石を形成して仮初の肉体を作ってまで生命力を得ようとするの?
―それに関してはあまり分からんが、法則なのだろう。
―法則?
―そうだ。生あるものはいつか死ぬこれは分かりやすい法則だろう。これと同じように生まれた魔物は生あるものを襲う。魔物の習性は魔法のせいに思えるがな。
―魔法?魔法は魔術とは違うの?
―魔法は魔術をより強力に、複雑にしたものだ。まあ、魔法は魔術だけではなくて、魂術、命術、気術の三つの術を組み合わせる必要があるがな。魔法を使えば法則に抗うことさえできるし、新たに法則を生み出すことも出来る。
―そんなことが出来るなんて・・・。
―わしは魔物とはバランスを取るための存在として生み出されたのではなかと思っておる。・・・さて、話を戻すことにしよう。精霊と魔物は似た存在だと言ったな?
―うん。
―精霊を嫌悪する者はそのことを知っているのだろう。
―精霊を嫌うこととどういう関係が?
―そういう者はおそらく大事な存在を魔物に殺されたりしたのだろう。特にグランバルト帝国は魔物による被害が多いからな。精霊と魔物を同一視して嫌っているのだろう。それにグランバルト帝国は精霊の森は闇の森と呼ばれているようだしな。
―そうなんだ。じゃあ帝国方面には行かないほうがいいね。
―そうしてくれ。
長い話しを終えたら、今日手に入れたミスリル製の串についている魔石に魔力を流していく。
1時間ほどで作業が終わり、後はミスリル製の串と今まで使っていた鉄串と違和感をなくすために練習をする。
オリハルコンよりかは魔力の浸透が遅いし、魔力の貯蔵量も少ない・・・。
別に問題は無いけど、強力な術にはオリハルコンを使うか。
練習していると夜が明け、朝になった。
今日で街に滞在して五日目になるが今日はとくに用事が無い。
なので適当に街を散歩した後、対ドラゴン用にいくつか道具を集め、宿で魔術の練習をして一日を終えた。
六日目。今日は以前頼んだ防具を受け取りに店に向かう。
店では前回対応してくれたスタッフがおり、こちらに気づくと話しかけてきた。
「ようこそいらっしゃいました。さっそく注文の品をお渡しましょうか?」
「頼む。」
「分かりました。今からお持ちしますので、こちらに腰を掛けてお待ちください。」
スタッフに指定された場所で待つ。
3分ほどしてスタッフは戻ってきた。
「お待たせしました。こちらがご注文の品になります。」
そう言って、箱から真っ白のローブを取り出し私に渡してくれた。
普通の人が見たらただのローブに見えるだろうが、私は精霊なのでこのローブに凄まじい数の術式が組み込まれているのが見えた。
障壁、障壁の強化、熱遮断、冷気遮断・・・他にもいろいろある。どれだけ術式が組み込まれているんだ?まあ確かにこれぐらい術式を書かなければこちらの要求を満たせないだろうなあ。よく見たら大きさを調整できるような工夫もされてる・・・。
ローブの確認が終えたら着てみる。
大きさはちょうどいいようだ。
「大きさは大丈夫ですか?」
軽く動いて状態を確かめる。
「だいじょうぶ。」
「分かりました。こちらの品の説明を致しましょうか?」
「いや、いい。十分に要求を満たしているようだ。」
「分かりました。料金は前回いただきましたのでそのまま着ていっていただいても構いません。」
「分かった。このまま着ていくか?」
「うん。」
「そうか。では行くとしようか。」
「うん。」
防具を受け取り用事を終えたので、店から出て行く。
「ありがとうございました。今後も当店を御贔屓に。」
そう言ってスタッフは一礼する。
今日は防具を受け取るだけで他に特に用事がないので宿に戻ることにした。
途中、いままで気づかなかったが宿の近くに本屋があることに気づいた。
―あれは・・・。
―本屋だな。興味があるのか?
―少し・・・。
―では寄っていくとしよう。
―ありがとう。
本屋に入る。
中にはたくさんの本で満ちていた。
大半は紙の本だったが、一部羊皮紙や竹で出来たものもあった。
店内を見渡していると声が聞こえた。
「いらっしゃい。精霊が私の店に訪れるなんて珍しいことがあるもんだね。」
驚いて声が聞こえた方向を見ると、緑の髪で長い耳を持つ女性が本から顔を上げてこちらを見ていた。
私の正体ばれてる!?
それより、この人はまさか・・・。
「えるふ・・・?」
「そうだよ幼い精霊さん。」
「エルフか・・・エルフが人間のところにいるとは珍しいことがあるものだ。」
「まあ、私はエルフの中でも変人だからね。世界中の本が読みたいから里を抜けて各地をまわっているんだよ。」
旅をしているのに本屋の店主をしているのはおかしいと思い質問してみる。
「なんでみせをひらいているの?」
「これは私の店ではないよ。私はここで働いているだけだよ。後6カ月もしたらこの街から去る予定だしね。」
「店の主はどうしたのだ?」
「今は病で臥せっているよ。だから私が店番をしているんだ。」
「看病しなくてもいいの?」
「エルフに伝わる秘伝の薬を飲ませて、今は眠っているよ。」
「秘伝の薬?」
「そうだよ。なかなか効くんだ。これだよ。」
そういってエルフの女性はポケットから小瓶を取り出して見せてくれた。
「・・・ぬりぐすり?のもぐすりじゃないの?」
「そうだね。でもこれはお湯に混ぜて飲ませることも出来るんだ。」
「へえ・・・。そういえば、どうしていーあすのまちにきたの?」
「うん?ああ、私はこの街にある図書館の本を読みに来たんだ。」
「・・・としょかん?」
「あれ、知らないの?街の北の方にあるんだけど・・・。」
「北は言っておらんな。」
エルフの女性は少し肩を下ろして落ち込む。
「そうなんだ・・・。まあ特別大きい図書館というわけでもないし、有名でもないしね。」
「どうしてこのまちのとしょかんをおとずれたの?」
「私は図書館というよりも、その図書館の館長に会いに来たんだ。彼は世界中を巡り、数々の本を読んだある意味有名人だからね。」
「そのひとはぼうけんしゃだったの?」
「いや、ちがうよ。でも優れた魔術師だ。術師協会と言うのを知ってるかい?」
「?」
「その顔は知らないって表情だね。」
「術師協会とは、魔術・命術・魂術・気術の四つの術に加えて、各地域にある様々な術、過去に編み出された失われた術を研究することを目的に作られた組織だ。組織としての規模は小さいが、魔術を上手く扱えない者や研究肌の者が多いと聞くが・・・。」
「そうなんだよ!図書館長である、ルドガーはその術師協会の元会長で、魂術を除く三つの術のエキスパートなんだ!私はあの術を研究していたルドガーにぜひ会いたくて・・・」
エルフの女性はしまったというような表情をして、口を噤む。
「・・・あのじゅつ?」
「・・・少々話すぎたようだね。何かほしい本があれば私に声を掛けてくれればいい。」
そう言ってエルフは本に顔を戻す。
露骨すぎる。
露骨に話を断ったよこのエルフ。
とりあえず、魔術に関する本を探す。ついでに魔法について記された本が無いか探してみる。
たくさん本があるだけあってさまざまな魔術の本があったがさすがに魔法に関して記された本はなさそうだった。
とりあえず気になった本を2冊選ぶ。
「このにさつで。」
「なかなかいい本を選ぶね・・・大銀貨8枚だよ。」
「これで良いか?」
お爺ちゃんが8枚の大銀貨を渡す。
エルフはそれを確認していく。
「大丈夫だね。はいどうぞ」
そういってわたしに二冊の本を手渡す。
「あなたは買わないの?」
「別にほしい本があるわけではない。」
「そうなんだ。・・・また出会いそう気がするから自己紹介でもしようかな。わたしはエルフのエミリア。私は別の大陸の出身で元いた大陸の本はあらかた読みつくしたからこの大陸にきたんだ。だからしばらくはこの大陸にいるつもりだよ。」
「わたしはリーユ。よろしく。」
「わしはフィンだ。」
「リーユにフィンだねよろしく。もう行くんだよね?」
「うむ。」
「それじゃあ、ばいばい。」
手を振りながら別れを告げるエミリアに同じく手を振りながら店を後にする。
本屋を出た後はそのまま宿に戻る。
本屋を出たときには夜だったので、夕食と入浴を終えて明日の準備をする。
◆ ◆ ◆
朝が来たのでオーダーメイドのローブをはおり、早速待ち合わせの場所に向かう。
それにしても、オーダーメイドと言う事は・・・私専用ということか。
・・・。
南門の前には既に3人組みがいた。
アークがこちらに気づき近づいてくる。
「あなた方二人が南の山脈のグランドドラゴンのいるところまで護衛の依頼をした依頼人ですか?」
「そうだ。」
「今回護衛させていただきますアークです。後ろにいる大槍を持っている男がガッツ。魔術師の女がアリアです。私達三人で護衛させていただきます。」
冒険者について詳しくは知らないが、丁寧だな。ちゃんとした教育を受けているようだ。商人だったのかな?
アークが丁寧な対応をしたので少し驚いていると、話が進んでいた。
「山脈まではこれから出る馬車で向かいますが、大丈夫でしょうか?」
「問題ない。」
「わかりました。・・・ちょうど馬車が来たようですね。行きましょう。」
ちょうどよく来た馬車に全員で乗り込む。
山脈に着くまでにとりあえずいろいろと冒険のことについて聞いてみることにした。
「あーくさんたちはどうしてぼうけんしゃに?」
アークは少し驚いた表情をしたが、話してくれた。
「俺は元々商家の子供だったが、たびたび訪れる冒険者から冒険話を聞いて冒険者という職業にあこがれてね、冒険者になったんだ。」
ちなみに敬語はやめてもらった。
敬語だと違和感がある。
「かぞくにははんたいされなかったの?」
「はんたいされたが根気強く説得して了承をもらったよ。まあ、師匠の後押しもあったからね。それにお目付け役もいるし。」
「?ありあさんとがっつさんは?」
「私はエスタブリッシュ王国王都ディアの国立魔術学校で研究しているのよ。でも、研究するには知識やお金、素材・・・いろいろ入用なのよ。でも冒険者としてなら世界中を巡っていろいろな物に見たり触れたり出来るし、素材も手に入るから副業としてやっているのよ。研究費用も稼げるしね。」
「俺はアークの兄弟子だな。アークは傭兵だった俺の親父から剣を習ったんだ。つまり、アークの師匠は俺の親父ということだな。俺はアークの親父と俺の親父からアークが一人前になれるまで、アークのお目付け役も兼ねてる。だから冒険者の仕事をやってるんだ。」
「なるほど・・・。あーくさんがいちにんまえになったらどうするの?」
「まあ、そのときはそのときだな。そんときになったら考える。」
ガッツは笑いながら答える。
その後もいろいろと話をしていると、南の山脈にたどり着いた。
南の山脈は標高1000メートルほどの山が連なって出来ている。グランドドラゴンがいるのは、オルマン山で、出てくる魔獣や魔物は鳥系や大型の蛇などだった。私が戦うまでも無く、3人が巧みな連携で魔物や魔獣を倒していく。
さすが本職。
動きに迷いが無いし、連携も優れてる。
でも、あまり本気じゃない?
余裕を持って動いてるし、魔力も温存してる。
なにか隠し手でもあるのかな?
2時間ほどで山頂のグランドドラゴンの巣がある場所にたどり着いた。
グランドドラゴンは洞窟の中に巣を作るので、洞窟の中からあぶりだすため、竜嫌香というドラゴンが嫌う煙を洞窟の入り口で炊く。
しばらくして、怒りを交えた咆哮が洞窟の中から聞こえてきた。
私達は洞窟の入り口から少し離れて様子を伺う。
そして、洞窟の中から地面を揺らしながら全長9メートルほどのドラゴンが出てきた。
でかい!
次回ドラゴンと戦う三人組とリーユ。
3人組とリーユはいったいどうなるのか。
次回、激戦vsドラゴン
お楽しみに。




