11話
改9月12日
渡された書類を書いていく。
そこまで多くなかったのですぐに書き終える。
「できました。」そういいながら書類をカインに手渡す。
「うん・・・大丈夫そうだね。じゃあ次に魔力登録をさせてもらうよ。魔力登録をしないと登録証が作れないからね。」
カインは机に向かい引き出しから複雑な術式が描かれ中心に水晶のついている鉄の板を持ってきて私に渡す。
うわぁ・・・気持ち悪い。
なにこの術式と魔法陣の数は。
誰だ、この変態的な魔道具を作ったのは・・・。
「この板の中央に水がついているだろう?ここに手を置いてほしい。そうすれば君の魔力を吸収して情報を記録する。」
言われたとおりに手を中央に置く。少し魔力を吸収されたのを感じてから手をどける。
カインが鉄の板を回収して確認する。
「君は・・・木属性が圧倒的に高いね。後は光、水、地、無、風、闇、雷、火、氷の順に高いようだ。つまり彼女は・・・。」
「そうだ。木の精霊だ。だからあまりリーユについて詳しく教えることが出来ない。」
「そうですか・・・。確かに木の精霊ということがグランバルト帝国ばれるのはまずいですね。」
「うむ。そういえば、精霊の森の異変についてどこまでしっておるのだ?」
「精霊の森の異変ですか?いえ特には報告を受けていません。なにかあったのですか?」
「知らないのか・・・。領主にも伝えるつもりであったからな、話そう。」
フィンが精霊の森の現状について話す。
「大精霊様が瘴気に冒されるとは・・・、それで森は大丈夫なのですか?」
「今のところは大丈夫だ。わしは今回のことにグランバルト帝国が絡んでいると思うのだがどう思う?」
「グランバルト帝国の犯行で間違いないと思います。」
「なぜだ?」
「半年ほど前にグランバルト帝国の皇帝が亡くなりました。亡くなる前に後継者を指名したそうですが、後継者に選ばれたのが長男でも次男でもなく三男だったようです。そのため現在帝国では後継者争いが勃発しており、軍属である次男が優位に立つためにここイーアスの街を狙っているという情報が入っています。精霊の森はここイーアスを目指すなら通るでしょう。しかし、グランバルト帝国は精霊は敵だと考えており、無事に通れるとは思っていない。なので今回のことは森を混乱させて軍事行動をしやすくするための策略なのではないかと思います。おそらく・・・いえ、なんでもありまあせん。」
・・・近くですごいことが起きていたようだ。
しかしなんで皇帝は長男と次男がいるのに三男を後継者に選んだんだ?
さすがに国が割れるのは予想できそうなものだが・・・。
それと帝国は私たち精霊を敵だと思ってる?
後でそこらへんの事情を聞いておこう。
「そうか・・・いつの間にか情勢が変わっているようだな。」
お爺ちゃんは額に手を添えて、何か考え始めた。
「ええ。それで大精霊様を治す方法はあるのですか?」
「あるが、他の木の精霊の力を借りる必要がある。」
「彼女ではだめなのですか?」
「リーユでは力と知識が足りないから無理だ。」
「そうですか。・・・ああ、なるほど彼女に冒険者登録をさせたのはそういことですか。」
少し考えるそぶりを見せた後、こちらを見て納得したかのようにうなずく。
え?なんで納得してるんだ?
私はまったく理解してないけど?
「急いだほうがいいでしょうか?」
「いや、いい。リーユが旅に出るにはまだ時間がかかる。」
「分かりました。明日には出来るでしょう。」
「苦労をかけるな。ではそろそろわしらは出ることにする。達者でな。」
「はい、またいつか。リーユちゃんもまた。」
「うん。それじゃあね」
「あ、それと―――」
カインと別れたあと、ギルドを出て行く。
出る前にカインが、私の髪はエルフと似ており目立つから、とフード付きのローブをくれたので羽織っていく。
ナイス(`・ω・´)b。
ギルドを出たあとは鍛冶組合に行く。
鍛冶組合とは鍛冶師の組合で、大きな街には大抵ある組織である。
大きな街であれば、鍛冶師も多くいるのでこういう組織が出来る。
鉄串は店で売っていない恐れがあるので、鍛冶師が多く出入りする鍛冶組合に行くのだ。
そこで私の持っている鉄串を基に私独自の鉄串を作ってもらう予定だ。
鍛冶組合は西部の工業地帯にある。
西部工業地帯には30分ほど歩いたら辿り着いた。
すごいたくさん人がいる・・・。
この世界でこんなに人がいるのは始めて見たかもしれない。
そういえば、この街の人口はどのくらいだろう?
う~ん・・・5万人くらいかな・・・。
西部地区は工業地帯だけあって職人や売り物を買いに来る人でかなり賑わっていた。
商品も木工細工や金銀細工、武器、防具、包丁などの刃物、など様々なものが売られていた。
―お爺ちゃん。何処に鍛冶組合の建物があるの?
―ふむ・・・こっちだな。
お爺ちゃんについて行くと、すぐに鍛冶組合の建物を見つけた。
早速中に入る。
中では怒声が飛び交いながら多くの屈強な男たちが動き回っていた。
あ、暑苦しい。
物理的にも視覚的にも暑苦しい。
私の場違いな感じがすごい。
お爺ちゃんが近くにいる親方らしき男に話しかける。
「すまない、少し良いか?」
「おお、なんだ?」
「頼みごとがあってな。この子の持っている鉄串と同じ様なものを作ってほしい。」
「・・・これです。」
鉄串を親方に見せる。
「どれどれ・・・これはオリハルコンではないのか?・・・材料がないからオリハルコンで作るのは無理があるぞ。ミスリルでよければ作れるんだが・・・。」
「ミスリルで構わない。20本作ってくれ。」
「よし分かった。今日中にできるだろう。後払いでいいが大銀貨8枚だ。」
「そうか、明日の朝に来る。では頼んだぞ。」
「分かった。」
お爺ちゃんが決めていくけど、さすがに20本は多くないかな?
大銀貨6枚もかかるのか・・・一本小銀貨4枚相当だ。
というか、ミスリルとオリハルコンの違いが分からないからなんともいえないんだよね。
「それにしても、その子はお孫さんかい?」
唐突に親方が私の方を見てお爺ちゃんに聞く。
「・・・そうだな。」
「ほう・・・その年にしては落ち着いてるな。俺に息子がいるんだが、その子と同じぐらいなんだが、暴れん坊でな・・・。」
「子供らしいではないか。」
「毎日怪我して帰ってくるんだ。まあ、たいした怪我じゃないんだがな・・・そのうち大怪我をしたらと思うと気が気じゃねぇんだ。嬢ちゃんはどう思う?」
そこで私に振るか・・・。
「えーと・・・あなたはまいにちかえるのがおそいですか?」
「え?ああ、そうだな。時々帰れない日もある。」
「そうですか。じゃあさみしいんだとおもいますよ?だからそとでそのおもいをはっさんしてるんじゃないかなぁ、と。」
「そうか・・・ありがとうな嬢ちゃん。」
「いえ・・・。」
「よし・・・いいのが作れそうだ。」
「わし等はもう行くぞ。」
「ああ。」
何だろうさっきの会話?
いいのが作れそう?
訳が分からない。
若干疑問に思いつつ、お爺ちゃんとともに鍛冶組合から出て行く。
―お爺ちゃん、さっきの会話って何か意味があったの?
―・・・ああ、お主のことを知りたかったのだろう。
―お爺ちゃん?
―なんでもない。行くぞ。
―う、うん。
次に武器や防具を売っている店に行く。
鍛冶組合の近くに丁度いい店があったので入る。
店に入ると同時に店のスタッフが対応してくれた。
「いらっしゃいませ。何がご入用ですか?」
「この子に防具を見繕ってほしい。」
「彼女にですか?・・・そうなりますと彼女の体格に合う防具は無いのでオーダーメイドになるのですがよろしいですか?」
「出来れば軽装で高い耐熱性・耐寒性を備えつつ高い防御力を持った防具がいい。」
「・・・それほどの性能を持たせるとなるとかなりの費用と時間が掛かりますが。」
「どれくらい掛かる?」
「そうですね・・・費用は小金貨5枚で時間は三日ほど掛かるかと。」
「それで頼む。無理を言うのだから料金は先に払おう。」
「分かりました。ではそのように。」
「頼む。」
小金貨5枚!?つまり・・・50万円か!
お爺ちゃん、どれだけお金を持ってるんだ・・・。
魔術を教わったり、武器や防具を作ってもらったりといろいろお世話になってしまってるな・・・。ドラゴン討伐失敗したり、リアさんを救えなかったら申し訳ない。
頑張らなくては!
ひそかに気合を入れる。
防具を発注したことで、今日中にやっておくことを終えたので宿に戻る。
宿に戻る頃には日が暮れかけていたので、宿に戻ったらすぐに夕食をとり風呂に入る。
基本的に必要は無いが、気分的にお風呂に入りたかった。
風呂からでたら朝まで魔術の練習と魔術の確認に専念することにする。
私やお爺ちゃんは精霊なので眠くらないし、睡眠の必要があまり無い。
やっぱり拘束系と防御系の魔術で隙をうかがいながら戦うほうがいいか。
弱点さえ晒させればあの魔術で・・・。
いろいろとパターンを想定していたら朝になっていた。
魔石やクルミを籠の中に片付け、一階に下りて朝食を取る。
ちなみに普通に食事は取っているが、食べたものはすべて魔力に還元される。
しかし、クルミと比べると還元率はかなり劣る。
今日の予定は、鍛冶組合に行き頼んでおいた鉄串を買う。
その後、ギルドに行き登録証を発行してもらう。
最後に領主の館に行き領主と面会する予定である。
なので早速宿から出て行き、鍛冶組合に行く。
もちろんローブを羽織っている。
中は朝ながら既に多くの人間がいた。
その中から昨日依頼した親方を探す。
「あ、あそこ」
昨日の親方は数人の男と話しをしていた。
するとこっちに気づいた。
「おう、爺さんと嬢ちゃんよく来たな。すでに出来てるぜ。」
そう言いながら男達と話しを切り上げて、奥の方に行く。
手に筒を持ってすぐ戻ってきた。
「こいつだ。」
筒を開けて中を見せてくれる。
中には魔石の付いた銀色の串が20本入っていた。
お爺ちゃんが一本ずつ確認していく。
「・・・なかなかいい腕だな。」
「そうだろうよ。俺の師匠はドワーフだったからな。」
ドワーフ―鉱山の有る場所に多く住んでおり、鍛冶の名人である。
ドワーフは偏屈で頑固者が多い。
なので弟子を取ることは稀だ。
しかし、ドワーフの弟子だった者の多くは大成している。
なのでこの親方はかなりの腕をもっていると推測される。
「ドワーフに認められるほどの腕か・・・いい鍛冶師に当たったものだ。」
「まあな。」
親方はそういいながら大声で笑う。
「っと、いけねえ。まだいろいろやることがあった。その筒はおまけだ貰ってくれ。料金は入り口のところに会計士がいるからそいつに払ってくれ。じゃあな。」
そう言いながら親方は仕事に戻っていった。
ドワーフか・・・ファンタジーの定番だな。
そういえばエルフや獣人とかいるようだけど会ったことないな。
いつか会えるかな?
会計士に大銀貨6枚払い鍛冶組合の建物から出て行く。
そして次の目的地のギルドに向かう。
「ようこそ。話は伺っています。現在ギルド長は領主様に呼ばれており不在なので私が対応します。
では、私についてきてください。」
ギルドに入ると昨日の栗毛の受付嬢、イリスが私たちに気づいて手招きした。
そして私たちに事情を説明し、ギルドの一室に案内してくれた。
「こちらにお掛けください。」
私達が椅子に掛けたのを確認してから、イリスは一枚のカードを取り出して私に渡す。
「これが貴女の登録証になります。現在十級でレベルは設定されておりません。一度手にとってご確認ください。」
「ありがとう。」
カードには私の名前と冒険者階級、冒険者ランクのほかいくつかの情報が書き込まれたいた。
「登録証を発行するにあたって冒険者の仕事について説明をしているのですがどうしますか?」
「この後も予定があるから、説明は次の機会にしてくれるとありがたい。」
お爺ちゃんが答える。
「かしこまりました。それと護衛の冒険者の件ですが、適任のものが見つかりました。ちょうど酒場のほうにいるのでお会いになりますか?」
「いや、いい。次の機会でよかろう。」
「わかりました。それと今回の依頼の報酬なのですが、ドラゴンのいる山脈までの護衛ということで小金貨8枚になります。いまお支払いはできますか?」
「分かった。受け取ってくれ。」
お爺ちゃんはそう言いながら小金貨を八枚取り出して渡す。
「預かります。・・・確認できました。それでは三日後、護衛の冒険者を派遣します。どこで待ち合わせることにしますか?」
「南門で頼む。」
「わかりました。これで依頼の受注は終わりましたが、何かご質問はありますか?」
「ごえいのぼうえけんしゃはどういうひとたちなの?」
気になっていたので聞いてみる。
「人数は男性二人、女性一人の三人です。全員冒険者階級は4級で、片手剣を使うアークという男性と魔術師の女性アリアがレベルD。大槍を使うガッツという男性がレベルCです。」
「・・・ありがとうございます。」
思わず敬語になってしまった・・・。
それにしても異世界にきて初日に出会った三人組か。
偶然ってあるんだなあ・・・。
・・・あの鉄串使ってるとばれそうだな。
一応新しい串を使っていくことにしよう。
「他にありますか?」
「だいじょうぶ。」
「わしも無い。そろそろわし等は次の場所に行きたい。まだ何かあるか?」
「分かりました。特に説明する事はありません。外に案内します。」
「ありがとう。」
「いえ・・・。」
イリスに案内されて、ギルドの裏口から出て行った。
ギルドから出た後は近くにあったレストランで食事を取り、領主の館に向かった。
次話でドラゴンと会えるといいなあ。




