お前が……
第三世界のとある神社跡。
「ここが、私の家……こんなにも……」
「見るも無惨、ってな。荒らされた後、しばらくモンスターたちの縄張りなってたみたいだが……」
フェルトは無惨に崩れた、かつての我が家を前にへたり込む。
かつてのこの場所は、神子が神より授かった力を十の試練を乗り越えた、ただ一人の勇者へ受け渡す、神聖な場所であった。
しかし今では、遺跡は管理を外れ、神社は荒れてかつての神聖さを全く残していなかった。
マキナは荒れた神社を見回し、獣の痕跡を見つけて現在のこの場所の分析を行う。
発見した跡は、回収されていない動物性のアイテムが、そこらかしこに散乱しているというもの。しかも尋常じゃない量が。
アイテムはポップしてから、ランダムだが最大で60分ポップしたままとなる。
つまり、つい先程までこの場には誰かがいたと言うこと。
「量から見て、ドロップ品を一切回収してない。……不自然すぎる」
「不自然?どうして」
「最新エリアのアイテムだぞ?一切回収していないのは、明らかにおかしい」
「じゃあ、敵がいる?」
フェルトは武器庫から長剣と短剣を取り出し、左右に装備し構えるようにする。
「目視の限りであれば、誰もいないけど……」
一方マキナは、何処からともなく本を取り出し、辺りを見回す。
「遅い…1人目」
「えっ」
突如現れた黒い炎がマキナを包む。フェルトは一瞬の出来事に驚き、その場で固まってしまった。が、すぐに切り替え辺りを警戒する。
「…お前が、神の力を有しているのか?」
「さぁ?持っていたとしても、あなたには渡さない。認めない」
目視する限りではやはり敵の姿は見えない。どこに潜んでいるいるのかわからず、マキナはいまだ黒い炎に囚われている。打開策が見出だせないフェルトは、焦りを感じ始めた。
「お前の意思は関係ない。所詮誘き寄せるための、エサだから」
バンッ!!と言う音がしたと、フェルトが認識した時には遅かった。
「いつの間に、背後に……」
それは自身が、背後から強力のな一撃をくらった音だったのだ。その場に倒れ込むフェルト。
「いつの間に…か。言うなれば初めから」
そう言い残し、その人物はフェルトを抱えあげ、影へ潜るようにその場から姿を消したのだった。
敵対者が消えると黒い炎も消え、ボロボロのマキナだけがその場に残された。
「嘘だろ……スペック上回ってきやがる。完敗だな…いくらゲームが苦手と言っても である、俺を越えるか……」