遺跡攻略《神の右腕》 ~前編~
第三世界の現状の探りを終えた二人は、廃墟にて合流していた。
分かった事は、相手の狙い。
相手側のやろうとしていた事は、今まで自分たちが頑張って来た仕事を、バランスを崩してしまいかねない。そんな計画だったのだ。
「で、どうするのルル?初めの予定では、このあとマスターの所に行くはずだったけど」
双子の姉に今後どうするか訊ねる。
が、彼女はどうやら相手の計画に腹を立てているのだろう。イラついた声色で妹の話に答える。
「もちろん予定変更よ。協力してくれるプレイヤーを見つけて、奴らの計画を妨害するわよ」
「しかないよね~。残りの攻略されていない遺跡は五つらしいし。あ、ナナ姉さまには先に報告しておかなきゃ」
キキが長女の名前と残りの未攻略遺跡数を出したところで、ようやく冷静になるルル。
「残り半分……そうね。報告が終わりしだい、動くわよ」
こうして2人は、相手側に気付かれぬように暗躍を始める。
その頃、ちょうど6つ目の遺跡が攻略されようとしていた事も知らずに………
その日僕、ヴァン、フィオナの三人は三日後に、ギルド『蒼空の遊撃隊』のメンバーで攻略に向かう予定の遺跡『神の右腕』の偵察に来ていた。
出現するモンスターは、ヴァンと相性が良い『機械系』ばかりで、偵察は順調に進む。
やがて最深部に到達するが、そこには龍の形をした石像があるだけで『守護者』と呼ばれるモンスターは存在しない。
出現には何かしら条件があるのだろう。
今日の偵察はこのくらいにして、拠点に帰還しようと話を切り出そうとした矢先、
突如部屋全体が揺れ動いた。
何事かと部屋を見渡すと、そこには龍の石像に触れているフィオナがいた。
「お前何をしているんだ!ダンジョン内の物に、不用意に触れるなとアレほど」
「ごめん、ごめん。可愛かったからつい、触っちゃった。でもこれで守護者の顔、拝めるよ?」
フィオナの行動をヴァンはすぐさま咎めるが、フィオナには反省の様子はない。
まあそれもそうだろう。そもそもフィオナはVRMMOは疎か、こう言ったゲーム自体が初めて。
つまり初心者なのだから。
と言っても、初心者とは思えない才能を見せて、ギルドのナンバー3の地位にいるわけだけど。
ちなみにギルマスはレストで、ナンバー2はヴァンだ。
「そう言う問題じゃない!私はお前の初歩的なミスについて追及しているんだ!もしこれが、モンスターハウストラップなら大変な事に」
「なによ!別にいいじゃない。元々偵察できて」
「はいはい、二人とも言い争いはそこまで。フィオナの初心者行動は、今に始まった事じゃないでしょ。明らかに何かが出現しそうだし、ヴァンはトラップを張り巡らせておいて。取り敢えずそれで様子を見るよ」
言い争いを仲裁し、ヴァンに罠を張るよう指示を出す。ヴァンとフィオナは素直に頷くと、即座に指示を行動に移す。
三人で像から離れた位置に、前衛ヴァン・中衛自身・後衛フィオナの陣形を組み警戒態勢を取る。
やがて部屋の振動は収まり、代わりに龍の石像から機械音が聞こえ始める。